運命の花婿は二度逃がさない

あらすじ

名家の沈家で行われた花婿選びの儀式「手毬投げ」。沈家の嫡長女・沈雲卿(しん・うんけい)が投げた手毬は、名家の若君・慕容安(ぼよう・あん)の手に渡るはずだった。しかし、運命は残酷な方向に転がる。沈雲卿の庶妹・沈雲喬(しん・うんきょう)は、姉の婚約者となるはずだった慕容安を奪い、さらに沈雲卿が一品夫人に封じられる日に彼女を殺害してしまう。

だが、運命のいたずらか、姉妹は共に三年前の「手毬投げ」の日に転生する。今度こそ全てを変えようと画策する沈雲喬は、先んじて慕容安の未来の妻の座を手に入れる。そして、姉・沈雲卿の手毬が乞食の男の手に渡るよう仕向けるのだった。しかし、誰も知らなかった。その乞食の男の正体は、お忍びで市井を訪れていた皇帝・祁宴(き・えん)だったのだ。

沈雲卿は、権力や富とは無縁の平凡で穏やかな暮らしを望み、周囲の嘲笑を気にすることなく乞食の男との結婚を選ぶ。献身的に夫を支える沈雲卿の姿に、皇帝の心は次第に彼女へと傾いていく。宮廷に渦巻く陰謀や嫉妬、そして妹からの執拗な妨害を乗り越え、沈雲卿は真実の愛と自らの運命を切り開いていく。

ネタバレ詳細

第一の人生と転生

最初の人生では、沈雲卿は慕容安と婚約するも、名声と地位に嫉妬した妹の沈雲喬によって殺害される。沈雲喬は慕容安を奪い、彼が将来高官になることを見越していた。しかし、沈雲卿と沈雲喬は共に三年前の「手毬投げ」の儀式の日に転生する。

再びの手毬投げと運命の分岐

転生した沈雲喬は、今度こそ慕容安を手に入れようと画策し、彼の注意を引くことに成功する。そして、姉の沈雲卿の手毬が偶然を装って乞食の男の手に渡るように仕向ける。この乞食こそ、身分を隠して市井を視察していた皇帝・祁宴(後の祁煜)であった。沈雲卿は、前世での苦い経験から権力争いに嫌気がさしており、穏やかな生活を求めて乞食との結婚を受け入れる。

沈家の冷遇と慕容家の実態

沈雲卿の父・沈昭とその夫人は、乞食と結婚した雲卿を沈家の恥さらしと見なし冷遇する。一方、念願叶って慕容安と結婚した沈雲喬だったが、慕容安は遊び人で家庭を顧みず、慕容家もまた問題を抱えた家であり、彼女の結婚生活は決して幸福なものではなかった。

乞食の夫の正体と宮廷へ

沈雲卿は、夫となった祁宴の優しさや誠実さに触れ、彼を心から支える。ある日、祁宴の落とした玉佩がきっかけとなり、彼の高貴な身分が示唆される。その後、様々な出来事を経て、祁宴が皇帝であることが明らかになる。沈雲卿は事情を知らぬまま宮廷に上がり、内侍局で働くことになる。祁宴は当初、宮廷の複雑な人間関係から雲卿を守るため、そして母である太后の意向もあり、自身の正体を隠していた。

太后の試練と宮廷での陰謀

太后は、身分の低い沈雲卿が息子の嫁となることを快く思わず、彼女に様々な試練を与える。しかし、沈雲卿はその知恵と誠実さで乗り越えていく。その過程で、太后も徐々に沈雲卿の人柄を認めるようになる。一方、宮廷では趙丞相の娘・趙婉儿(ちょう・えんじ)などが沈雲卿に嫉妬し、陥れようと画策する。

沈雲喬と慕容安の悪あがきと破滅

沈雲喬は、姉が皇帝の寵愛を受けていることを知り、再び嫉妬に燃える。慕容安と共に、沈雲卿を失脚させようと様々な策略を巡らす。特に「打春宴」という大きな宴の場で、太后の暗殺を企て、その罪を沈雲卿に着せようとする。しかし、祁宴(皇帝)と彼の腹心である元禄(げんろく)らの活躍により、彼らの陰謀は露見する。

全ての真相とそれぞれの結末

打春宴での騒動の際、慕容安は太后を庇って負傷したかのように見せかけるが、それも自作自演であったことが明らかになる。太后暗殺計画の主犯として、沈雲喬と慕容安は捕らえられる。沈雲卿を虐げ、権力に目がくらんでいた父・沈昭とその夫人も、これまでの悪行の報いを受けることになる。慕容安の兄で、不正に手を染めていた大理寺少卿・慕容鶴も失脚する。趙婉儿もこれまでの行いを罰せられ、遠い地へ和親として嫁がされることになる。

最終話

全ての陰謀が明らかになり、悪人たちが裁かれた後、祁宴(皇帝・祁煜)は沈雲卿への深い愛情と信頼を公にする。太后も沈雲卿を正式に認め、皇帝は沈雲卿を皇后に立てることを宣言する。六宮は廃され、後宮には皇后ただ一人が存在することとなり、沈雲卿は名実ともに皇帝の唯一無二の伴侶となるのだった。かつて乞食の妻と嘲笑された沈雲卿は、真実の愛と自らの手で掴み取った幸福の頂点に立つ。

登場人物紹介

  • 沈雲卿(しん・うんけい)

    • 本作の主人公。沈家の聡明で心優しい嫡長女。
    • 最初の人生では、名家の若君・慕容安と婚約するも、妹・沈雲喬の策略により命を落とす。
    • 三年前の「手毬投げ」の日に転生し、今度は権力や富とは無縁の穏やかな暮らしを求め、偶然手毬を受け取った乞食の男(実は皇帝・祁宴)と結婚する。
    • 数々の困難や陰謀を乗り越え、その知性と真心で皇帝の愛と信頼を勝ち取り、最終的には皇后となる。

  • 沈雲喬(しん・うんきょう)

    • 沈雲卿の庶妹。美貌の持ち主だが、嫉妬深く野心家。
    • 姉の幸福を妬み、転生前から姉を陥れようと画策する。転生後は慕容安と結婚し、さらに姉を不幸に陥れようと執拗に策略を巡らす。
    • しかし、その悪事はことごとく露見し、最終的には破滅を迎える。

  • 祁宴(き・えん)/祁煜(き・いく)

    • 本作の男性主人公。若き皇帝。
    • 当初は身分を隠し「祁宴」と名乗り、お忍びで市井を視察している際に乞食のふりをしていたところ、沈雲卿の手毬を受け取る。
    • 沈雲卿の純粋さ、優しさ、そして困難に立ち向かう強さに惹かれ、深く愛するようになる。
    • 沈雲卿を陰ながら支え、最終的には彼女を皇后として迎える。本名は祁煜。

  • 慕容安(ぼよう・あん)

    • 名家の若君。容姿は良いが、軽薄で自己中心的。
    • 転生前は沈雲卿の婚約者だったが、転生後は沈雲喬と結婚する。
    • 沈雲喬と共に沈雲卿を陥れるための悪事に加担するが、最終的には破滅する。

  • 太后(たいこう)

    • 皇帝・祁宴(祁煜)の母。
    • 当初は身分の低い沈雲卿が息子の嫁となることに反対し、様々な試練を与える。
    • しかし、沈雲卿の人柄や能力に触れるうちに徐々に彼女を認めていく。

  • 沈昭(しん・しょう)

    • 沈雲卿と沈雲喬の父。沈家の当主。
    • 娘たちの幸せよりも家門の利益や体面を重んじる権力志向の人物。乞食と結婚した沈雲卿を冷遇する。

  • 沈夫人(しんふじん)

    • 沈昭の妻。沈雲卿と沈雲喬の母(または継母)。
    • 夫と同様に世間体や権勢を気にする人物。

  • 元禄(げんろく)

    • 皇帝・祁宴(祁煜)の忠実な腹心で、宦官。
    • 皇帝がお忍びで市井に出ている際も、宮廷に戻ってからも常に皇帝を補佐し、沈雲卿のことも気遣う。

  • 趙婉儿(ちょう・えんじ)

    • 趙丞相の娘。皇帝の后の座を狙っており、沈雲卿をライバル視し、様々な嫌がらせや策略を仕掛ける。
    • 最終的にはその行いが仇となり、罰せられる。

  • 慕容鶴(ぼよう・かく)

    • 慕容安の兄。大理寺少卿の職にあったが、弟と共に不正に手を染めており、最終的には失脚する。