あらすじ

西暦228年、三国時代の中国。蜀の諸葛亮(しょかつりょう)が進める北伐は、「街亭の戦い」で手痛い敗北を喫する。その原因は、前線に送られた情報が、何者かによって偽情報にすり替えられていたことだった。蜀の情報機関「司聞曹」は、内部に裏切り者がいると断定。魏に潜入させている優秀な密偵「白帝(はくてい)」に疑いの目を向ける。一方、司聞曹の役人である荀ク(じゅんく)は、親友でもある「白帝」の裏切りを確かめ、始末せよという非情な命令を受ける。彼は真相を解明するため、敵地である魏へと向かう。

ネタバレ

第1話:すべては街亭の敗北から始まった

物語は西暦228年、諸葛亮(しょかつりょう)が悲願の北伐を進める中、あの有名な「街亭(がいてい)の戦い」から幕を開けます。蜀軍は、魏の猛将・張コウ(ちょうこう)の進軍ルートを予測し、馬謖(ばしょく)を街亭の守りに就かせました。しかし、これは魏が流した偽情報。まんまと罠にはまった蜀軍は街亭を失い、北伐は痛恨の失敗に終わります。

この敗北に、諸葛亮は断腸の思いで愛弟子・馬謖を斬首。しかし、問題はそれだけでは終わりませんでした。なぜ、最重要機密である軍事情報が敵に筒抜けだったのか?丞相府長史の楊儀(ようぎ)は、蜀の情報機関「司聞曹(しぶんそう)」に魏のスパイが潜入している可能性を指摘します。

疑いの目は、今回の情報を送ってきた潜入密偵、コードネーム「白帝(はくてい)」に向けられました。司聞曹のトップである馮膺(ふうよう)は、白帝の裏切りを確かめるため、天水(てんすい)へ調査員を派遣します。

魏に潜む二人のスパイ「白帝」と「燭龍」

一方、勝利に沸く魏の天水。郡守の郭剛(かくごう)は、側近の陳恭(ちんきょう)と祝杯をあげていました。郭剛(かくごう)は上機嫌で語ります。今回の勝利は、蜀の情報を偽情報にすり替えた魏のスパイ、コードネーム「燭龍(しょくりゅう)」の大手柄だと。そして、蜀から「白帝」の真偽を確かめるための調査員がやって来ることを掴んでおり、この機会に「白帝」を生け捕りにする計画を立てていました。

その頃、蜀からの調査員「遊梟(ゆうきょう)」は、接触場所である酒肆(しゅし)へ向かいます。しかし、そこはすでに魏の間軍司(かんぐんし)司馬・糜冲(びちゅう)によって包囲されていました。

郭剛(かくごう)と共にいた陳恭は、窓の外に合図の花籠を上げさせます。これは郭剛の功績を祝うためのもの、と見せかけて、実は調査員に危険を知らせるためのサインでした。しかし、時すでに遅く、調査員は店内で無残に殺害されてしまいます。

親友を殺せ―非情な密命を受けた男

場面は蜀へ戻ります。司聞曹の靖安司(せいあんし)副司尉・荀ク(じゅんく)は、上官の馮膺(ふうよう)から水責めという名の尋問を受けていました。彼が問われたのは、「白帝」との関係。

実は、「白帝」の正体は、荀ク(じゅんく)の義兄弟であり、無二の親友でもある陳恭だったのです。荀ク(じゅんく)は、陳恭が裏切るはずがないと固く信じていました。

その忠誠心を試された荀ク(じゅんく)は、馮膺(ふうよう)から恐るべき密命を受けます。

「曹魏へ行き、街亭失守の真相を突き止めよ。そして、裏切り者となった白帝、つまり陳恭を暗殺せよ」

これは表向きの任務。荀ク(じゅんく)は毒を飲まされ、3ヶ月以内に解毒薬を飲まねば死ぬという、まさに命懸けの任務に就くことになったのです。

四面楚歌の陳恭

その頃、魏の天水にいる陳恭は、絶望の淵にいました。蜀からの調査員を救えず、魏の間軍司からは「誰かが警告したのでは?」と疑いの目を向けられています。郭剛は陳恭を庇いますが、その内心では彼を試していました。

故郷の蜀からは裏切り者と疑われ、潜入先の魏からはスパイではないかと探られる。そして、蜀の情報を書き換えた真の裏切り者「燭龍」の存在を故郷に知らせる術もない。四面楚歌の状況に、陳恭は静かに涙を流すのでした。

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第1話の感想

従来の三国志ドラマが英雄たちの豪快な物語だとすれば、この作品は水面下で繰り広げられる静かで緻密な心理戦を描いています。第1話から、有名な「街亭の戦い」の裏側で、これほど壮絶な情報戦があったのかと引き込まれました。誰が味方で誰が敵なのか、登場人物たちの視線一つ、言葉一つに裏があるのではないかと勘繰ってしまいます。主人公の陳恭が陥った絶望的な状況と、親友を殺すよう命じられた荀ク(じゅんく)の過酷な運命。この二人の行く末から目が離せません。重厚な映像と緊張感あふれる脚本は、歴史ドラマファンだけでなく、本格的なサスペンスが好きな方にも強くおすすめしたいクオリティです。

つづく