時は西暦557年、魏晋南北朝の末期。絶え間ない戦乱に人々が疲弊し、天下統一を成し遂げる英雄の出現を待ち望んでいた時代。そんな俗世から隔絶された、霧深い山奥に「白山(はくさん)村」という桃源郷のような村がありました。
この村には、未来を見通す力を持つ巫女の長、林氏(りんし)が住んでいました。ある日、彼女のもとを黒い衣の男(後の宇文護(うぶんご) うぶんご)が訪れ、天下の行く末を占ってほしいと依頼します。林氏は占いの最中、天下の情勢だけでなく、さらに恐ろしい未来を見てしまうのです。それは、天女の血を引くたった一人の大切な孫娘・雪舞(せつぶ)が、乱世の鍵を握る斉の国の英雄「蘭陵王(らんりょうおう)」と出会い、過酷な運命に巻き込まれていくというものでした。
孫娘の身を案じた祖母は、雪舞を村から一歩も出さないと固く心に誓います。
それから十数年の月日が流れ、雪舞は明るく元気で、少しおてんばな娘に成長しました。しかし、祖母の誕生日を祝うために伝説の花火を作ろうと奮闘しては、村中で爆発音を響かせる毎日。村の男の子たちからはすっかり変わり者扱いされ、もうすぐ行われる成人の儀式で相手が見つからないのではと、内心落ち込んでいました。
その頃、国の外では、まさにその蘭陵王が周の軍勢を打ち破り、その武勇をとどろかせていました。しかし、連日の戦で愛馬の「踏雪」が深手を負ってしまいます。蘭陵王は誰にも告げず、一人で馬を癒すため、効能があるという秘密の温泉へと向かいました。
一方、花火作りに必要な硫黄を手に入れるため、祖母の言いつけを破ってこっそり村を抜け出した雪舞。彼女がたどり着いたのも、まさに蘭陵王がいるその温泉でした!湯けむりが立ち込める幻想的な温泉で、雪舞は水浴びをする美しい人影を見つけます。その長い髪と優美な姿から、てっきり「美女お姉さん」だと思い込んでしまう雪舞。これこそが、祖母が何よりも恐れていた、二人の運命的な出会いの瞬間だったのでした。
『蘭陵王』第1話の感想
ファンタジーと史劇が見事に融合した、壮大な物語の幕開けにふさわしい初回でした。人里離れた神秘的な白山(はくさん)村の描写は美しく、そこで暮らす巫女の一族という設定が、単なる歴史ドラマではない深みを与えています。主人公・雪舞の天真爛漫で少しドジなキャラクターがとても魅力的で、彼女が引き起こす騒動には思わず笑ってしまいました。一方で、戦場で勇ましく戦う蘭陵王の姿は圧巻で、その仮面の下の素顔が気になります。物語の核心となる二人の出会いのシーンは、勘違いから始まるコミカルな展開で、シリアスな時代背景とのギャップが面白いです。これから彼らの運命がどう交錯していくのか、物語の世界にぐっと引き込まれました。
つづく