嵐の夜、荒れ狂う海の上を、まるで木の葉のように揺れる一隻の船。それが、離島に医療を届ける「病院船」。この物語は、まさにこの船から始まります。
舞台は変わって、ソウルの朝。ストイックにランニングに励む女性がいます。彼女こそ、本作の主人公、ソン・ウンジェ。ソウルの超一流病院に勤める、腕利きの外科医です。汗を輝かせながら走る彼女の目に飛び込んできたのは、まるで映画のワンシーンのような衝撃的な交通事故!
救急車で運ばれてきた患者を前に、ウンジェの目は即座に「外科医」のそれに切り替わります。患者がなんと大企業の御曹司だとわかって周りがザワつく中、彼女は動じません。冷静沈着、かつ神業のような手つきで手術を進め、あっという間に危機を脱してしまいます。
ところが、手術が終わると、手柄はすべて上司の科長が独り占め。インタビューに答える科長を横目に、ウンジェは涼しい顔。同僚が「ひどい!」と憤慨しても、「これでいいの」とばかりに無関心。そう、彼女の野望はただ一つ、史上最年少で外科科長の座に就くこと。そのためなら、上司への「貸し」を作ることも厭わない、超リアリストなんです。
一方、もう一人の主人公、内科医のクァク・ヒョン。彼は、ウンジェとはまるで正反対の温かい心を持つ青年です。有名な「国境なき医師団」の父を持ちながら、複雑な家庭環境に悩んでいます。母親との冷え切った関係を振り切るように、彼が自ら選んだ勤務地は、なんとあの「病院船」でした。
誰もが左遷先として嫌がる病院船へ、自ら志願してきたヒョンに、船長やベテラン看護師はびっくり仰天。歯科医のチャ・ジュニョンや韓方医のキム・ジェゴルといった、やる気ゼロで配属された同僚たちは「なんでまた好き好んでこんな所に?」と不思議がります。しかし、ヒョンは「逃げられないなら、いっそクルーズ船だと思って楽しもう!」と笑顔を見せるのでした。
その頃、ソウルのウンジェは新たな悩みに直面していました。離島に住む母親が、病気の島民を見つけては「優秀な娘がいるから」と、次から次へとソウルのウンジェのもとへ送り込んでくるのです。「いい加減にして!」と電話で母親に怒りをぶつけるウンジェ。出世のためには、厄介な患者との関わりは避けたい。彼女の冷徹なまでの野心と、母親への苛立ちが、今後の運命を大きく左右することになろうとは、まだ誰も知りませんでした。
『病院船〜ずっと君のそばに〜』第1話の感想
ソウルという最先端医療の現場で、己の腕と野心だけを信じて突き進む外科医ソン・ウンジェ。そして、有名医師の父を持ちながらも、人との温かい繋がりを求め、自ら医療の届きにくい場所へ向かう内科医クァク・ヒョン。第1話は、この対照的な二人の主人公の置かれた状況と、その人となりを鮮やかに描き出していました。ウンジェの氷のような冷静さと、ヒョンの太陽のような温かさ。この二人が、閉ざされた「病院船」という空間で出会った時、一体どんな化学反応が起こるのでしょうか。彼らがそれぞれ抱える家族との確執や心の傷が、離島の患者たちとの触れ合いの中で、どのように変化していくのか。今後の人間ドラマの深まりを大いに期待させる、見事な幕開けだったと感じます。
つづく