物語は、人形を抱いた少女が一人、岩場の海岸で手の傷をいじっている、どこか物悲しいシーンから始まります。彼女のそばには、一台の白いトラックが。このオープニングが、後々じわじわと効いてくるんです。

場面は変わり、クラブで若い女性が男性を刺殺するという衝撃的なシーンへ。しかし、これは事件を捜査する法医学者ソ・セヒョンの「想像」でした。彼女はまるで犯人に憑依したかのように犯行を追体験し、その思考を読み解く特殊な能力を持っているようです。実際にクラブにいた容疑者たちと対面したセヒョンは、凶器のナイフを見せた際の彼らの些細な反応から、いとも簡単に真犯人を特定してしまいます。この時点で、彼女がただ者ではないことがビシビシ伝わってきますね。

一方、別の場所では、人情派の刑事チョン・ジョンヒョンがストーカー事件の張り込み中。しかし、相棒のやる気のなさに呆れ気味。案の定、張り込み中に騒ぎを起こしたせいでストーカーには逃げられ、上司からは大目玉を食らう始末。その後、ジョンヒョンが万引きしようとした少年を家まで送っていくシーンは、彼の人の好さを感じさせ、冷徹なセヒョンとは対照的なキャラクターとして描かれています。

セヒョンは職場の解剖室では同僚に心を開かず、常に一線を引いている様子。仕事帰りに野良猫に餌をやる優しさを見せるも、それを咎める近隣住民に向ける視線は、まさに氷のよう。彼女の心には深い闇がありそうです。その頃、何者かが死体にウジ虫を置くという、なんともおぞましい映像が差し込まれます。

そして、新たな事件が発生。野原でビニールに包まれた若い女性の遺体が発見されます。ジョンヒョンは共通の知人を介し、優れた腕を持つ法医学者として評判のセヒョンに協力を依頼。こうして二人は出会うことになります。

セヒョンによる解剖が始まると、事件の異常性が明らかになります。被害者イ・ヨンジュの遺体はひどく腐敗しており、首の骨が折られ、注射の痕が。そして何より、胃以外のすべての内臓がきれいに抜き取られていたのです。さらにセヒョンは、遺体の中から一本の「赤い糸」を発見します。

その赤い糸を目にした瞬間、セヒョンの脳裏に過去の記憶がフラッシュバックします。それは、冒頭のシーン。岩場で人形と遊んでいた幼い彼女が、誰かの口笛に誘われ、あの白いトラックに乗り込んでいく記憶でした。この猟奇殺人と、セヒョンの封印された過去には、一体どんな繋がりがあるのでしょうか。初回から謎が深まるばかりです。

『メスを持つハンター』第1話の感想

第1話は、物語の世界観と主要人物の紹介を、極めて不気味かつ魅力的に描き出していました。特に主人公ソ・セヒョンのキャラクター造形が秀逸です。犯人の思考をトレースするという特殊能力を持つ天才法医学者でありながら、その瞳の奥には底知れない孤独と冷徹さが宿っています。彼女が時折見せる人間味のなさが、かえって彼女の過去に何があったのかと強く興味をかき立てられます。また、内臓が抜かれた遺体から見つかる「赤い糸」というモチーフも、視覚的に強烈な印象を残しました。この糸が、猟奇的な事件と彼女のトラウマをどう結びつけていくのか。静かに、しかし確実に心を蝕んでくるような恐怖と謎に満ちた、見事な幕開けだったと感じます。

つづく