『タリミファミリー~恋もお金もクリーンに!』なんていう、ちょっとコミカルで明るそうなタイトルから、いったい誰がこんなにも切ない物語の幕開けを想像したでしょうか。第1話は、タイトルの軽やかさを裏切るように、ある家族が背負い続けた「希望という名の呪い」を、過去と現在を織り交ぜながら丁寧に描き出していきます。

過去:首席合格が招いた10年間の悲劇

物語は1992年、主人公イ・ダリムの父、イ・ジョングが司法試験の一次試験に首席で合格した輝かしい日から始まります。 クリーニング店を営む家族は、「これで貧乏から抜け出せる」「息子は判事か検事だ」と大喜び。 祖父母はお祝いの横断幕まで作ろうと大はしゃぎです。

しかし、その輝かしい希望は、長く暗いトンネルの入り口に過ぎませんでした。

父ジョングは、その後10年以上も試験に合格することができませんでした。 家族は「チョンリョムクリーニング」を必死に切り盛りし、母ボンヒ、祖父母、そしてまだ幼いダリムたち3人の子供までがアイロンを手に取り、父の学費を支え続けます。

家計は火の車。母ボンヒは、夫への不満と将来への不安から、義母(ダリムの祖母)と涙ながらに口論する日々。 父が10回試験に落ちるたびに、母の心には10個の石(ストレス)が溜まっていったのです。

そしてついに、希望の光が完全に消える日がやってきます。父ジョングは病に倒れ、一度も家族に給料袋を渡すことなく、この世を去ってしまいました。 葬儀の場でさえ、家族の長年の苦労と悲しみがぶつかり合います。

父の死は、家族に一つの教訓を残しました。「偽りの希望に振り回されてはいけない」と。

現在:ダリムに降りかかる新たな試練と運命の再会

時は流れ2024年。末っ子のダリムは30歳になりました。しかし彼女は、家族に言えない大きな秘密を抱えていました。子供の頃は視力2.0を誇った彼女の目は、「網膜色素変性症」という難病に侵され、視野がどんどん狭くなるトンネルビジョンという症状に苦しんでいたのです。 視力は0.02まで落ち、このままでは完全に失明する運命。

治療法は一つだけ。しかし、その注射にかかる費用は、片目で40万ドル、両目で80万ドルという、クリーニング店を営む家族には到底支払えない天文学的な金額でした。

絶望の中、ダリムは銀行である男性と出会います。その直後、彼は交通事故に遭い、ダリムは彼を罵ったと誤解されてしまいます。

この男性こそ、8年前の大学時代、ダリムが一度だけ心を動かされたソ・ガンジュでした。

2016年、入隊を翌日に控えたガンジュは、視覚障害を持つダリムに惹かれ、積極的にアプローチします。 しかし、父のことで「偽りの希望」を憎むダリムは、「どうせ連絡なんかしないくせに、期待させないで」と彼を突き放そうとします。 それでもガンジュは強引に連絡先を交換し、「必ず電話する」と約束するのでした。

しかし、その約束が果たされることはなく、8年もの月日が流れていたのです。

宝くじに託した儚い希望の結末

高額な治療費に思い悩むダリム。そんな時、クリーニング店のアルバイト、テウンが客の服から見つけたという宝くじを彼女に渡します。 当選金は税引き後で80万ドル。 まさに、彼女が必要としている金額です。

「まさか…」

一縷の望みを託し、ダリムはコインでくじを削り始めます。すると、なんと「7」が連続で出現! しかし、その現場を母ボンヒに見つかってしまいます。「くだらない希望にすがるんじゃない!」と激しく叱責され、くじは取り上げられてしまいます。

「最後の数字が7だったら、あんたはただじゃおかないからね!」

母が怒りにまかせて削った最後の数字は…「3」。

やはり、現実は非情でした。ダリムの目に浮かぶ深い絶望。そんな娘の姿を見て、母は我に返ります。

「お腹すいた…」

力なくつぶやくダリムに、母は優しく問いかけます。

「何が食べたい?何でも買ってあげる」

希望に裏切られ続けた家族。しかし、そこには確かに、お金では買えない温かい愛情が存在するのでした。

『タリミファミリー~恋もお金もクリーンに!』第1話の感想

まず最初に、このドラマのタイトルに良い意味で裏切られました。明るいホームコメディかと思いきや、第1話は涙なしには見られないほど重厚で切ない物語が展開されました。父の司法試験という一つの「希望」が、いかにして家族全員を縛り付ける「呪い」へと変わっていったのか。その過程が非常に丁寧に描かれており、見ているこちらの胸も締め付けられるようでした。

特に印象的だったのは、母ボンヒの存在です。夫に先立たれ、高齢の両親と3人の子供を抱え、クリーニング店を一人で切り盛りする彼女のたくましさと、時折見せる弱さ。宝くじにすがる娘を厳しく叱りつけながらも、その後の「何でも買ってあげる」という一言に、彼女の深い愛情が凝縮されていて、思わず涙腺が緩みました。

主人公ダリムが抱える病気と高額な治療費、そして8年ぶりに再会したガンジュとの因縁。これから彼女たちが、この過酷な現実とどう向き合っていくのか。偽りの希望ではなく、本物の幸せをその手で掴むことができるのか。派手さはないけれど、心に深く染み渡るような、そんな物語の始まりでした。

つづく