完璧なはずの計画に生じた綻び

物語は、ある男性チェ・ガンユンがカメラに向かって「自分の意思で人生を終える」と語るシーンから始まります。穏やかな表情の彼に、シャンパンの入ったグラスを差し出す一人の女性。彼女こそ、この物語の主人公である医師、ウ・ソジョンです。

ソジョンの相棒チェ・デヒョンが彼の死を確認した、まさにその時。死んだはずのガンユンの妻が帰宅してくるという最悪のタイミング!慌てて撤収しようとした二人でしたが、事態はさらに悪化します。なんと、ガンユンが突然激しく咳き込み始めたのです。彼は、まだ生きていた!

「息の根を…止めてくれ」

苦しむガンユンに懇願され、ソジョンは意を決して枕を彼の顔に押し当てます。こうして、安楽死の手助けは、ただの窒息殺人に変わってしまいました。

車に戻ったデヒョンは「確かに脈はなかったはずだ」と動揺を隠せません。二人は使用した薬物「バブロン」に何か問題があったのではないかと疑います。

ソジョンの二重生活と忍び寄る影

ソジョンは病院の救急救命医として働きながら、姪のジェヨンと甥のジェユンの面倒を見ています。一方、デヒョンは薬の供給元であるキム・シヒョンに会いに行き、薬が薄められていたことを突き止めます。シヒョンは「お前が横流ししていないか試しただけだ」と悪びれもせず、今後は純粋な薬を渡すと約束するのでした。

そんな中、ソジョンの後輩医師で、この裏稼業の協力者でもあるイェナから、脳腫瘍を患うチョ・ヒョヌという新たな依頼候補者の情報がもたらされます。

彼らの次の依頼人は、末期がんと診断された老婆イ・ウニョン。デヒョンは、彼女が家族との幸せな思い出が詰まったビーチで最期を迎えることを提案します。人目につく危険な場所でしたが、デヒョンはうまい具合に死角を見つけ出し、計画は実行されました。愛する人たちとの再会を口にしながら、彼女は静かに息を引き取ります。

しかし、彼らの活動はすでに警察に嗅ぎつけられていました。アン・テソン刑事は、ある議員の息子ペク・ヒョンスンの不審死を捜査しており、世間を騒がせたサッカー選手チェ・ガンユンの死にも関連性を感じ取っていたのです。

交錯する運命と新たな波乱の予感

ソジョンとデヒョンは、新たな依頼人チョ・ヒョヌと面会します。彼の医療記録を確認してから最終決定すると伝えるソジョン。その頃、ガンユンの妻は、夫の遺品からスイスの安楽死幇助団体の資料を発見していました。

一方、ソジョンの私生活にも不穏な空気が漂い始めます。姪のジェヨンが親しくなった同級生のウミ。彼女がソジョンの家に遊びに来た際、偶然にも戸棚からバブロンの小瓶を発見し、こっそり一つ持ち去ってしまったのです。

後日、バイクでの配達中に激しい頭痛に襲われたヒョヌは事故を起こし、偶然にもソジョンが勤務する病院に運び込まれます。耐えがたい痛みに苦しむ彼は、すべての鎮痛剤が効かないと訴え、衝動的に病院を飛び出して車道に身を投げようとします。ソジョンは彼を必死に救い出し、ついに彼の安楽死を引き受けることを決意するのでした。

その頃、バレエの発表会で、ジェヨンの友人ウミがステージ上で突然意識を失い倒れます。そして、アン刑事の捜査線上には、ソジョン、デヒョン、イェナの名前が容疑者としてリストアップされていました。

物語の最後は2年前の回想シーンへ。教会で懺悔するソジョンは、ある患者を治療によって2年間も苦しませた末に死なせてしまった過去を告白します。「もうマリア(メリー)とは名乗りません」。そう神父に告げ、彼女は信仰を捨てたのでした。彼女がこの道を選んだ理由が、垣間見えた瞬間でした。

『メリーキルズピープル』第1話の感想

非常に重厚で、倫理的な問いを突きつけてくる初回でした。「安楽死」というテーマは、単純な善悪で割り切れるものではなく、個人の尊厳や生きる権利について深く考えさせられます。主人公のソジョンが、医師として命を救う一方で、人の死を幇助するという矛盾を抱えている姿が印象的です。彼女の行動は、果たして究極の優しさなのか、それとも許されざる罪なのか。視聴者一人ひとりにその判断を委ねるような作りになっています。

また、ヒューマンドラマであると同時に、刑事アン・テソンがじわじわとソジョンたちに迫るサスペンスの要素が、物語に絶妙な緊張感を与えています。さらに、ソジョンの姪ジェヨンとその友人ウミを巡るサイドストーリーが、今後本筋にどのように絡んでくるのか、不穏な予感を漂わせています。単に重いだけでなく、エンターテイメントとしてのスリルもしっかりと両立させており、非常に見ごたえのあるスタートだと感じました。

つづく