あらすじ
帝家の冤罪を巡る審問は、重要参考人の衝撃的な死によって、真相が闇に葬られようとしていました。皇帝と太后はこれを好機と捉え、偽物の帝家令嬢・帝承恩(ていしょうおん)を正式な皇太子妃として冊立することを宣言します。朝廷の誰もがその決定を受け入れようとした、まさにその瞬間。これまで数々の奇策で宮廷を騒がせてきた任安楽(じんあんらく)が皆の前に進み出て、10年間隠し続けてきた自らの正体と、事件の核心に迫る重大な真実を明かそうとします。
ネタバレ
10年にわたる帝家の冤罪を晴らすため、任安楽(じんあんらく)が仕掛けた大勝負。第25話は、息もつかせぬ展開で、全ての真実が白日の下に晒される、まさに神回と言えるでしょう。
物語は、帝家陥落の実行犯である古雲年(こうんねん)が、やつれ果てた姿で皇帝の前に引き出されるところから始まります。彼は太后からの脅しと、その目に宿る殺気を感じ取り、一族を守るためにすべての罪を一人で被ることを決意。密書の存在は認めるものの、その送り主については固く口を閉ざします。任安楽(じんあんらく)が「帝家を陥れたくせに!」と怒りをぶつけますが、古雲年(こうんねん)は「今日の自分はかつての靖安侯(帝家の当主)と同じだ。これも天の報いか」と呟き、なんと殿上で柱に頭を打ち付け自害してしまうのです。
重要参考人が死んだことで、皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)は「密書の件はこれ以上調査不能」とし、帝家の事件を闇に葬ろうとします。さらに太后は、偽物の帝家令嬢である帝承恩(ていしょうおん)を甘い言葉で操り、彼女に帝家の罪を改めて認めさせます。そして、帝承恩(ていしょうおん)こそが皇太子妃であると高らかに宣言するのです。
しかし、その声が響き終わるや否や、「待った!」をかけたのが我らが任安楽! 彼女は皆の前に進み出ると、自らの正体が、10年前に死んだはずの帝家の遺児、帝梓元(ていしげん)であることを堂々と明かしたのです。
もちろん、口先だけでは誰も信じません。太后や皇帝は、証拠として任安楽の左肩にあるはずの傷跡を確認させます。安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)と女官が調べると、確かにそこには傷跡がありました。それでも認めない太后に対し、安楽は切り札を次々と出していきます。
まず、皇太子の韓燁(かんよう)に「私が帝梓元(ていしげん)であると証言してください」と問いかけます。韓燁(かんよう)は彼女の信頼を裏切らず、その事実を認めました。そして、とどめの一撃となったのが、安楽が以前、太后への祝いの品として献上した贈り物でした。それは、なんと数メートルにも及ぶ巻物で、そこには10年前に無念の死を遂げた帝家軍の兵士八万人の名前と年齢が、びっしりと書き連ねられていたのです。安楽がその名を一人一人読み上げるたび、その場にいた誰もが心を動かされ、言葉を失いました。
さらに安楽は、帝家が反逆など企んでおらず、皇帝直筆の勅命を受けて西北へ出兵したと主張。その証拠となる勅命を、韓燁に贈った扇子の中に隠していたことを明かします。右丞相・魏諫(ぎかん)がその筆跡を鑑定した結果、皇帝のものと完全に一致することが証明されました。
追い詰められたのは皇帝です。「自分は書いていない!」と頑なに否定しますが、ここで思わぬ人物が真実を告白します。安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)です。彼女は幼い頃、太后がその偽の勅命を作るのを偶然見ていたのでした。
全ての証拠が揃い、もはや逃げられないと悟った太后は、ついに全ての罪を認めます。しかし、その態度はあまりに傲慢で、反省の色は一切ありません。それどころか、床に広げられた八万の兵士の名が書かれた巻物を踏みつけながら歩く始末。
この態度に任安楽、そして洛銘西をはじめとする臣下たちの怒りが爆発。彼らは一斉に皇帝の前にひざまずき、国法に則って太后を裁くよう懇願します。民心を得た帝梓元と、臣下たちの声に、皇帝はついに帝家の謀反が冤罪であったことを認めざるを得ませんでした。
「この世に任安楽はいない。これよりはただ帝梓元のみ」――。
そう宣言し、任安楽はついに帝梓元としての本来の身分と帝家の名誉を取り戻し、一族と八万の将兵の魂を慰めたのでした。
しかし、長年の悲願が達成された一方で、安楽と韓燁の間には修復しがたい亀裂が生まれてしまいます。そして、すべてを失った帝承恩は心を病み、正気を失ってしまうのでした。洛銘西は、そんな安楽を「陽はまた昇る」と優しく慰めるのでした。
『安楽伝』第25話の感想
10年にわたる緻密な計画が、ついに実を結んだ第25話。真実が次々と明かされていく様は圧巻で、まさに物語の大きな転換点となりました。任安楽が帝梓元として自らの名を名乗る場面では、彼女が背負ってきたものの重さと、ついに冤罪を晴らしたことへのカタルシスが同時に押し寄せ、胸が熱くなりました。特に、八万の兵士の名が連なる巻物は、視覚的にもその無念を強く訴えかける見事な演出だったと感じます。しかし、悲願を達成した一方で、韓燁との間に生まれた溝や、帝承恩の悲劇的な末路は、この物語が単純な勧善懲悪ではないことを示しており、より一層深みを与えています。事件は解決しましたが、登場人物たちの心に残った傷跡が、今後の物語にどう影響していくのか、目が離せません。
つづく