あらすじ

帝家の冤罪を晴らすという長年の悲願を果たした任安楽(じんあんらく)は、帝梓元(ていしげん)としての身分を取り戻す。しかし、彼女と韓燁(かんよう)の間には、血塗られた過去という消えない溝が横たわっていた。一方、すべての罪を背負った太后は、静心堂に幽閉されるも、後悔の色は見せない。そんな彼女のもとに、先帝の知己であった帝盛天(ていせいてん)から一通の手紙が届く。二人の対面により、これまで誰も知らなかった先帝の晩年にまつわる衝撃の真実と、長きにわたる因縁が明かされる。そして、太后は自らの人生に一つの決着をつけることを決意する。

ネタバレ

太后の誕生祝いの宴で帝家の冤罪事件の黒幕が明かされてから数日、都はその話題で持ちきりでした。物語が大きく動き出した第26話、今回はあまりにも悲しく、そして切ない真実が次々と明らかになる、まさに息をのむような回でしたね。

太后の罪が公になった後、彼女は静心堂に幽閉されます。しかし、彼女に反省の色は一切ありません。「天下は韓家(かんけ)のもの。帝家の8万もの兵が皇位を脅かすなど、決して許されることではなかった」と、自分の行いを正当化し続ける姿は、もはや哀れみすら感じさせます。皇帝である息子の韓仲遠(かんちゅうえん)は、母の行動が自分を守るためであったと理解しつつも、それは同時に「お前では帝家を抑えられない」という不信の表れだと感じ、深く傷つきます。そして、母に背を向けて静心堂を去るのでした。安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)もまた、門前に跪き、母に代わって罪を請うのでした。

一方、ついに帝梓元(ていしげん)としての身分を取り戻した任安楽(じんあんらく)。10年間誰も住まず荒れ果てた帝家の屋敷を前に、彼女は10年前の滅亡の光景を思い出し、韓燁(かんよう)との間には決して戻れない深い溝ができてしまったことを痛感します。洛銘西(らくめいせい)は、そんな彼女のために靖安侯府を再建しようと動き出します。

そんな中、幽閉された太后のもとに、今は亡き先帝の知己であった帝盛天(ていせいてん)から一通の手紙が届きます。太后は正装し、伏翎山(ふくれいざん)へと向かい、長年の宿敵と対面するのでした。

ここで、衝撃の過去が明かされます。かつて、太后は韓子安(かんしあん)に嫁ぎましたが、夫の心は常に帝盛天にありました。二人は性情が合い、共に天下を治めるほどの知己だったのです。自分の地位を脅かす存在だと感じた太后は、帝盛天に都を去るよう懇願しました。権力に興味のなかった帝盛天は、それを受け入れ、天下を太后に譲り、姿を消したのです。

しかし、太后の憎しみは消えませんでした。夫を奪った女として、帝盛天を恨み続けていたのです。そんな太后に、帝盛天は残酷な真実を告げます。実は、先帝・韓子安は長年の戦で体を蝕まれ、余命いくばくもなかったのです。その事実を知っていたのは、侍医と帝盛天だけでした。帝盛天は世間の目をごまかすため、先帝と共に別荘に移り住み、自らの真気を分け与えて3年間も彼の命をつなぎとめていたのです。すべては、太后とその息子に安泰な天下を残すためでした。

真実を知った太后は激しく動揺します。長年抱いてきた憎しみが、ただの独りよがりな誤解だったと知り、怒りと屈辱に震えます。しかし、彼女は最後まで自分の過ちを認めようとはしませんでした。「たとえこの罪を背負おうとも、後悔はしない」と言い捨て、その場を去るのでした。

その夜、韓燁(かんよう)は安楽との間にできた血の溝を思い、眠れぬ夜を過ごします。安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)もまた、良心の呵責と母への想いの間で苦しんでいました。そんな彼女を、冷北(冷北 (れい ほく))が優しく慰めます。一方、偽りの身分で生きてきた帝承恩(ていしょうおん)は、雨の降る靖安侯府で泣き崩れ、そんな彼女に慕青(ぼせい)が寄り添い、永遠の守護を誓うのでした。

そして、運命の朝が訪れます。太后は先帝の肖像画に最後の別れを告げ、静心堂で自ら命を絶ちます。皇城に鐘の音が60回鳴り響き、韓燁(かんよう)と安寧は涙ながらに地に膝をつきました。遺書には、息子・韓仲遠への想いだけが綴られ、「帝家には申し訳ないが、民には恥じぬ」と記されていました。

こうして、10年にわたる帝家の冤罪事件は、悲劇的な形でついに幕を閉じたのです。しかし、都に潜む獣たちの計画はまだ終わっていませんでした。冷北は、安寧を利用して青南城を手に入れるという、次なる非情な計画を企てていたのです。

『安楽伝』第26話の感想

今回のエピソードは、太后という一人の女性の歪んだ愛と孤独が引き起こした悲劇の結末が、深く胸に突き刺さりました。彼女の行動は決して許されるものではありませんが、夫の愛を得られず、その心の拠り所であった息子を守るためだけに生きてきた彼女の人生を思うと、単純な悪役として断罪できない複雑な感情が湧き上がります。帝盛天が明かした真実は、そんな太后の人生そのものが、大きな誤解の上に成り立っていたことを示しており、その皮肉な運命に言葉を失いました。彼女が最後まで自分の非を認めなかったのは、それを認めてしまえば、彼女の全人生が崩壊してしまうからだったのかもしれません。登場人物それぞれが重い十字架を背負い、物語は新たな局面へと突入しました。

つづく