周の侵攻という国家存亡の危機にありながら、皇帝・高緯(こうい)は妖妃・馮小怜に溺れ、国政を顧みない。忠臣たちの悲痛な叫びも届かず、ついに取り返しのつかない悲劇が起きてしまう。一方、洛陽で妻の雪舞(せつぶ)と穏やかに暮らしていた蘭陵王(らんりょうおう)のもとに、弟の安徳王(あんとくおう)が国の窮状と恩師の危機を知らせにやってくる。愛する家族との平和な生活か、それとも民と恩師を救うための戦いか。苦渋の末、英雄は再び立ち上がることを決意する。

「蘭陵王」あらすじネタバレ45話

ついに、恐れていた事態が現実のものとなってしまいましたね…。穏やかな日々を過ごしていた蘭陵王(らんりょうおう)と雪舞(せつぶ)に、再び過酷な運命の嵐が吹き荒れる第45話。今回は、国の崩壊と、愛する者たちの悲しい決別が描かれ、胸が締め付けられるエピソードでした。

愚帝の狂気と妖妃の微笑み

周の武帝・宇文ヨウ(うぶんよう)が、ついに大軍を率いて斉の領土・平陽に攻め込んできました。弟の安徳王(あんとくおう)が血相を変えて宮殿に駆けつけますが、当の皇帝・高緯(こうい)はなんと「乞食ごっこ」に夢中。国の存亡がかかった報告にも耳を貸さず、ふざけて地面を転げ回る始末…。その姿には、怒りを通り越して虚しささえ感じてしまいます。

この危機的状況に、ほくそ笑む者が一人。そう、あの鄭児(ていじ)こと、妖妃・馮小怜です。彼女は「戦が見たい」と無邪気なふりをして高緯にねだります。愛する小怜のためなら何でもする高緯は、二つ返事で御駕親征を決定。すべては、戦乱の噂を耳にした蘭陵王を誘き出すための、彼女の恐ろしい策略だったのです。

平陽の戦場では、信じられない光景が繰り広げられます。高緯は、小怜の化粧が終わるのを待つという理由だけで出陣の好機を逃してしまうのです。これには歴戦の勇将、段韶(だんしょう)と斛律光(こくりつこう)も堪忍袋の緒が切れ、「妖妃が国を滅ぼす!」と絶叫。しかし、この忠言が悲劇を呼びます。逆上した高緯は、なんと弓の弦で斛律光をその場で絞め殺し、恩師でもある段韶を捕らえて死罪を宣告するのでした。もう、この国は終わりです…。

英雄の帰還

ボロボロになった安徳王が、最後の望みを託して馬を走らせたのは、蘭陵王が隠れ住む洛陽の草廬でした。安徳王から、宇文ヨウの進軍、そして恩師・段韶が翌日処刑されるという衝撃の事実を聞かされた蘭陵王。平和な生活を築いてきたテーブルを拳で叩き割り、その瞳には再び戦いの炎が宿ります。

すべてを察した妻・雪舞は、何も言わず、夫の旅支度を始めます。彼女は、夫の鎧の破れた箇所に、そっと雪蓮の花の刺繍を施します。それは、ただの修繕ではありません。無事に帰ってきてほしいという、痛いほどの祈りが込められていました。

蘭陵王は、眠る息子・平安(へいあん)の手に、かつて自分の命を幾度となく守った虎の紋様の玉佩を握らせます。そして、出立の朝。雪舞は愛する息子の産毛を切り、お守りとして蘭陵王の胸当てにそっと忍ばせました。「あなたと子供が、私の帰りを待っている」。そう言い残し、再び鬼の面をつけた蘭陵王は、国と恩師を救うため、死地へと向かうのでした。雪舞が、ただ彼の背中を見送ることしかできないのが、あまりにも切ないですね。

『蘭陵王』第45話の感想

今回は、国が内側から崩壊していく様が克明に描かれ、見ていて非常に心が痛む回でした。高緯の愚かさと、彼を意のままに操る鄭児の執念深さには、もはや恐怖しか感じません。忠義を尽くしてきた名将たちが、その愚かさの犠牲になるシーンは、理不尽さに満ちていて言葉を失います。一方で、つかの間の幸せを打ち砕かれ、再び過酷な運命に立ち向かうことを決意した蘭陵王と、静かに、しかし強い意志で夫を送り出す雪舞の姿には胸を打たれました。特に、言葉ではなく、鎧の刺繍や髪のお守りに万感の想いを込める雪舞の愛情の深さには涙を誘われます。物語が最終章に向けて、悲劇の色合いを一層濃くしたように感じました。

つづく