福建の地で、穆青(ムー・チン)は43年前に失踪した宮廷護衛・栾奕(ルアン・イー)の調査を続けていた。内務府特有の品を手がかりに質屋を調べると、ついに栾奕の所持品を発見。その出所を追って遊郭にたどり着いた穆青は、そこで働くある老人に疑いの目を向ける。一方、福建に赴任した鐘海潮(ジョン・ハイチャオ)のもとには妻の烏蘭珊(ウランシャン)が現れ、彼の真意を探ろうとする。それぞれの思惑が交錯する中、穆青の執念の捜査が、長く閉ざされていた過去の扉を少しずつこじ開けていく。

「天行健~革命前夜、風立ちぬ~」あらすじネタバレ29話

いやあ、今回の『天行健』もすごかったですね!物語が福建の地で大きく動き出し、これまで謎に包まれていた43年前の事件の核心にグッと迫りました。穆青(ムー・チン)の執念の捜査、そして明らかになる衝撃の過去。それぞれのキャラクターが抱える想いも交錯して、見ごたえ十分の回でした。

さっそく、第29話の内容を振り返っていきましょう!

林安靜(リン・アンジン)、明かされる過去

物語は、林安靜(リン・アンジン)の過去から静かに幕を開けます。彼女は、王家洛(ワン・ジアルオ)と出会った少女の姿に、かつての自分を重ねていました。「もしあの時、出会ったのが王家洛(ワン・ジアルオ)のような人だったら…」と。

かつて、まだ幼い乞食だった林安靜。彼女は10人もの少年たちから焼き鳥を奪い取るほどの気概と強さを持っていました。傷だらけになっても涙一つ見せないその姿に目をつけたのが、清伊(きよい)信風。彼は林安靜の心に宿る「非情さ」を見抜き、彼女を拾い上げました。生きるために、幼い林安靜は彼の手を取るしかなかったのです。彼女の今の強さと影のある雰囲気は、こうした壮絶な過去に根差していたんですね。

福建での新たな火種

一方、福建の泉州では、新たな動きが。鐘海潮(ジョン・ハイチャオ)の軍営に、妻の烏蘭珊(ウランシャン)がやってきます。彼女は、夫が福建に異動してきた裏に、父である淇親王(きしんのう)の何らかの謀略があるのではないかと疑い、探りを入れてきます。しかし、鐘海潮(ジョン・ハイチャオ)は「重要な軍事機密だ」と、きっぱりと口を閉ざしてしまいました。

夫から情報を得られず、悶々とする烏蘭珊(ウランシャン)。その裏で、鐘海潮は愛人である海棠(ハイタン)と芝居見物に出かけ、自らの胸の内を語ります。彼は、列強に蹂insaれる今の清朝に深い憂いを抱いており、国を変える力として北洋軍閥に期待をかけていました。「もし北洋がダメなら、その時は革命の道を選ぶかもしれない」と。彼の言葉に心を動かされた海棠(ハイタン)もまた、禁書を読むことで新しい思想に目覚め、どこまでも彼についていくことを誓うのでした。時代の大きなうねりの中で、人々の心もまた揺れ動いているのが伝わってきます。

穆青(ムー・チン)の執念の捜査が実を結ぶ

さて、我らが穆青は、43年前に姿を消した宮廷護衛・栾奕(ルアン・イー)の行方を追って、福建で調査を続けていました。栾奕(ルアン・イー)が残した腰牌は、護衛が決して手放さないもの。それを手放すということは、「死」か、あるいは「護衛という身分を捨てて消える」ことを意味すると穆青は推理します。

彼は、内務府が使う特殊な印の入った銀票に着目。これを使えば必ず足がつくからです。もし栾奕が銀票を使わずに生活していたとすれば、宮中から持ち出した高価な品を売って現金に換えたはず。その読み通り、穆青は助手の林浩瀚(リン・ハオハン)(リン・ハオハン)(リン・ハオハン)(リン・ハオハン)(リン・ハオハン)を質屋に向かわせ、ついに手がかりを発見します。それは、宝石と鎖が不釣り合いなペンダント。宝石は、まさしく内務府の護衛が身につける装飾品でした。

このペンダントが10年前に遊郭の女将によって質入れされたことを突き止めた穆青は、単身その遊郭へ乗り込みます。そこで働く下男の老人・老林(ラオリン)の動きに、武術の心得があることを見抜いた穆青。彼が内務府の身分を明かすと、老林(ラオリン)はついに重い口を開きました。

衝撃の告白、43年前の真実

「わしは栾奕ではない。だが、43年前、確かに彼の副官だった」

老林の口から語られたのは、43年前に起きた事件の壮絶な真相でした。

当時、栾奕は福建に潜むとされる香花僧・呉双宝(ウー・シュアンバオ)を、残忍な拷問も厭わない非情な手法で追っていました。しかし、呉双宝(ウー・シュアンバオ)が隠れる浮土寺へ向かう道中、一行はマラリアに倒れてしまいます。死の淵をさまよう彼らを救ったのは、皮肉にも追っていた呉双宝と寺の住職でした。

この出来事に感化され、多くの部下たちは任務を放棄します。しかし、栾奕だけは呉双宝への執着を捨てきれず、なんと任務を降りようとした部下たちにまで刃を向けたのです。老林は、その惨劇の中で呉双宝に命を救われ、生き延びた一人だったのでした。

まさか追う者と追われる者の間に、そんな命のやり取りがあったとは…。穆青の調査によって、ついに43年前の事件の、血塗られた一端が明らかになったのでした。

『天行健~革命前夜、風立ちぬ~』第29話の感想

今回は穆青の調査パートが圧巻でした。地道な聞き込みと鋭い観察眼で、まるでパズルのピースをはめるように真実に近づいていく過程は、上質なミステリーを見ているようで引き込まれました。そして、ついにたどり着いた老林の口から語られる43年前の出来事は、想像以上に過酷で悲しいものでした。命の恩人に対してさえ任務への執着を捨てきれない栾奕という人物の狂気は、人間の業の深さを感じさせます。一方で、鐘海潮のパートでは、清朝末期の複雑な情勢が描かれ、登場人物それぞれが抱く正義や理想のぶつかり合いが、物語に一層の深みを与えていました。歴史の大きな転換点で、人々が何を信じ、どう生きようとしたのか。今後の展開から目が離せません。

つづく