清朝の行く末を憂う内務府大臣・存清(ツン・チン)と、急進的な改革を目指す淇親王(きしんのう)の対立はついに頂点に達します。皇室の権威を守るため、存清は淇親王の暗殺という非情な決断を下し、腹心の部下たちに後事を託して計画を実行に移します。しかし、淇親王はすべてを見通していました。一方、街では捕吏の王家洛(ワン・ジアルオ)が人身売買されそうになっていた少女を救出。正義感から少女の親を探し始めますが、そこには時代の過酷な現実が待ち受けていました。それぞれの信念が、時代の大きなうねりの中で試されることになります。

「天行健~革命前夜、風立ちぬ~」あらすじネタバレ28話

いやはや、今回は息をのむ展開の連続でしたね。清朝という巨大な船が沈みゆく中で、それぞれの正義と信念が激しくぶつかり合いました。特に、国を憂う二人の重臣、存清(ツン・チン)と淇親王(きしんのう)の対立は、ついに決定的な悲劇を迎えることになります。

忠誠か、変革か…存清、悲壮なる決断

物語は、存清が淇親王のやり方にこれ以上は耐えられないと悟るところから始まります。彼は、皇室の権威を守ることこそが大清を救う道だと信じていました。しかし、淇親王は皇権を弱めてでも、抜本的な改革を進めようとします。もはや言葉で説得することは不可能だと悟った存清は、国のため、社稷のために淇親王を暗殺するという、あまりにも重い決断を下すのです。

自らの死を覚悟した存清は、福建へ向かう門三刀(もんさんとう)に金の腰牌を託します。万が一の時は、これを使って摂政王・載灃(さいほう)に直接会い、ある秘密の情報を伝えるようにと。穆青(ムー・チン)に別れを告げ、腹心の部下である格泰(グータイ)とは最後の酒を酌み交わし、自分の蓄えを渡して「もし自分が失敗したら、これを使って逃げろ」と後事を託すシーンは、涙なくしては見られません。

一枚上手だった淇親王

その夜、格泰率いる内務府の侍衛たちが淇親王の屋敷を襲撃します。しかし、これはすべて淇親王の計算の内でした。彼はとっくに襲撃を予期しており、いとも簡単に格泰たちを捕らえてしまいます。

しかし、淇親王は彼らをすぐには処刑しませんでした。代わりに、こう問いかけます。「私と存清、どちらも大清を強くしたいという思いは同じだ。だが、やり方が違う。私に従うか、それとも存清と共に死を選ぶか」。まさに究極の選択です。

信念の崩壊

淇親王は捕らえた侍衛たちを連れて、存清のもとへ向かいます。自分の部下たちが寝返ったことを知り、万策尽きた存清。彼はただ、部下たちの命だけは助けてほしいと懇願します。淇親王はその願いを聞き入れ、存清の一族を皆殺しにはしないこと、そして存清自身にも全屍(五体満足な遺体)を残すことを約束しました。

最後の力を振り絞り、存清は「もし兵変が成功した暁には、大清の威光を取り戻してほしい」と淇親王にひざまずいて頼みます。しかし、ここで淇親王の口から語られた言葉が、存清の心を完全に打ち砕きました。

「改革が遅すぎる、と仰ったのは摂政王・載灃ご自身だ」

自分が命を懸けて守ろうとしてきた皇室の中枢、その摂政王自身が、淇親王と同じ急進的な考えを持っていたという事実。信じていたものすべてに裏切られた存清は、その場で絶望の淵に突き落とされ、彼の信念はガラガラと音を立てて崩れ落ちていきました。

もう一つの正義:王家洛(ワン・ジアルオ)の奔走

一方、街では王家洛(ワン・ジアルオ)が人身売買の現場に遭遇し、一人の少女を救います。役所に突き出すも、役人たちはやる気を見せません。この時代、親が子を売ることは珍しくなかったからです。しかし「虎は我が子を食わぬ」と信じる王家洛(ワン・ジアルオ)は、役人を言いくるめて少女の親探しをさせます。

やがて判明したのは、少女の母親は娼婦であり、病気で娘を養えず、劇団に売ったという悲しい事実でした。劇団にいれば、少なくとも生きてはいけるだろう、と。このどうしようもない現実に、王家洛も言葉を失います。

王家洛と林安靜(リン・アンジン)は、沈玲瓏(しんれいろう)と名付けられたその子を劇団に預けます。去り際に、林安靜(リン・アンジン)は少女にこう告げました。「誰も助けてはくれない。自分で強くなるしかないの。涙は人を弱くするだけ。泣きたくなったら、今日の私の言葉を思い出しなさい」。これもまた、この厳しい時代を生き抜くための、一つの真実なのでしょう。

『天行健~革命前夜、風立ちぬ~』第28話の感想

今回は、登場人物たちの「正義」が痛々しいほどに交錯する回でした。特に印象的だったのは、存清の悲劇です。彼は最後まで皇室への忠誠という一本の筋を通そうとしましたが、その忠誠の対象であるはずの体制そのものが、彼の知らないところで大きく変わろうとしていました。時代の大きなうねりの前では、個人の純粋な信念がいかにもろく、悲しい結末を迎えうるのかを突き付けられたように感じます。彼の信念が、最も信頼していたはずの人物の言葉によって崩壊する瞬間は、見ていて胸が締め付けられました。一方で、王家洛の物語は、末端の民が直面する過酷な現実を浮き彫りにします。彼のまっすぐな正義感と、林安靜の現実的な厳しさを含んだ優しさが、このドラマの持つ重層的な魅力をより一層深めていると感じました。

つづく