愛する金小宝(きん しょうほう)の解毒薬「大麗炎」を求め、登場人物たちがそれぞれの思惑を胸に奔走する。小宝の親友・蘇胤(そ・いん)は、危険を顧みず薬草を入手しようとするが、予期せぬ代償を払うことに。一方、鄭懐恩(てい かいおん)は最後の望みをかけ、仇敵である統教の教主・宗政予湛(そうせい よたん)のもとへ向かう決意を固める。宮中では、慎王(しんおう)や太子、そして謎多き将軍・李功祥(りこうしょう)らが、水面下で激しい権力争いを繰り広げていた。愛、友情、裏切りが複雑に絡み合い、それぞれの運命は、誰も予測できなかった衝撃の結末へと突き進んでいく。果たして小宝の命は救われるのか、そして懐恩を待ち受ける過酷な運命とは。
「花華やぐも、散るは密やか ~花開有時、頽靡無声~」あらすじネタバレ11話
いやはや、とんでもない回でしたね…!愛する人のためにどこまで自分を犠牲にできるのか、そしてその想いはどこですれ違い、憎しみに変わってしまうのか。今回は、そんな登場人物たちの悲痛な叫びが聞こえてくるような、息もつかせぬ展開の連続でした。
懐恩を殺させない!小宝、命がけの訴え
物語は、親友である蘇胤(そ・いん)が鄭懐恩(てい かいおん)を殺そうとしていると知った金小宝(きん しょうほう)が、必死に止めようとする場面から始まります。
「彼を殺したら、あなたまで罪人になってしまう!」
自分の体のことなど二の次で、友の未来を案じる小宝。しかし、小宝への歪んだ愛情と復讐心に燃える蘇胤は聞き入れません。彼は小宝を眠らせると、手下の招財(しょうざい)と進宝(しんぽう)に命じて、故郷の安南へ強制的に送り返そうとします。すべては小宝を懐恩から引き離し、「輝かしい人生」を歩ませるため。なんという独善的で、悲しい愛情でしょうか…。
友のため、毒に冒される蘇胤
一方、蘇胤は小宝の解毒に必要な薬草「大麗炎」を手に入れるため、危険な崖へ向かいます。命からがら薬草を手にしたものの、その代償はあまりにも大きく、彼は「赤魔花」の猛毒に侵されてしまいます。
駆けつけた小宝が目にしたのは、左目と左腕が毒で変色し、感覚を失っていく蘇胤の姿でした。そこに現れたのが、あの食えない神医・闕思明(けつ しめい)。彼は「助けてやれる」と言いますが、そのためには条件がある様子。
ここで、まさかの事実が発覚します。なんと、小宝の忠実な手下である進宝が、神医に仕えることを申し出たのです。実は、進宝と神医は幼い頃に引き裂かれた間柄。神医が各地を放浪していたのは、行方知れずになった進宝を探すためだったのです。この二人の隠された過去には、思わず胸が締め付けられました。
最後の望みをかけ、懐恩は敵地へ
しかし、手に入れた大麗炎は偽物でした。残る唯一の可能性は、懐恩の仇敵であり、統教の教主である宗政予湛(そうせい よたん)が持っているものだけ。
小宝を救いたい一心で、懐恩は危険を承知で統教の本拠地へ乗り込みます。そこで待っていたのは、予湛に囚われていた小雨(しょうう)こと薛怜清(せつ れいせい)でした。懐恩は、金家の証である金塊を見せ、自分が彼女の味方であることを示し、大麗炎と引き換えに彼女を連れて行くことを約束します。
予湛との激しい対立の末、懐恩は小雨を人質にとる形でなんとか脱出に成功。しかし、彼らの前にはさらなる罠が待ち受けていました。
裏切り、また裏切り…!絶望の淵へ
統教から逃れた懐恩と小雨を待ち受けていたのは、慎王(しんおう)と太子の一派でした。万事休すかと思われたその時、彼らと共にいたはずの李功祥(りこうしょう)が突如として慎王たちに刃を向けます。
なんと、すべては二皇子である宗政予湛が仕組んだ罠だったのです!李功祥は、皇帝・宗政雲漣(そうせい うんれん)に一族を滅ぼされた恨みを抱き、予湛と手を組んでいたのでした。予湛は、長年の宿敵であった慎王と太子を捕らえ、ついに復讐の駒を進めます。
しかし、その予湛もまた、信頼していた李功祥に背後から刺されてしまいます。李功祥の真の目的は、宗政一族すべてへの復讐。彼は、予湛がかつて愛した女性を不幸にした張本人だと断罪し、その命を奪うのでした。
瀕死の状態で逃げ延びる懐恩。そこに現れたのは、蘇胤でした。一縷の望みを託す懐恩でしたが、蘇胤は冷たく言い放ちます。
「小宝からの伝言だ。『二度と会いたくない』と。それから、君が小雨を連れ出してくれたおかげで助かった。いずれ小雨は小宝に嫁ぎ、金家は安泰だろう。君は地下で、小宝が子孫繁栄するのを見て喜んでいるといい」
大麗炎を渡されず、愛する人からは拒絶され、目の前で未来の希望まで語られる…。懐恩の心は、完全に砕け散ってしまいました。薄れゆく意識の中、彼が思い出すのは、小宝と過ごした幸せな日々の記憶だけ…。あまりにも残酷な結末が、彼を待ち受けていました。
『花華やぐも、散るは密やか ~花開有時、頽靡無声~』第11話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの「想い」が、ことごとく最悪の形で交錯し、裏目に出てしまう展開に言葉を失いました。小宝を思う蘇胤の行動は、結果的に懐恩を絶望の淵に突き落とし、自らも毒に侵されるという悲劇を招きます。懐恩の小宝への一途な愛も、周囲の陰謀に利用され、彼自身を破滅へと導きました。
誰もが誰かを想い、守ろうとしているはずなのに、その歯車が一つ狂うだけで、これほどまでに残酷な物語が生まれてしまうのかと、人間の業の深さを見せつけられたような心地です。特に、幾重にも張り巡らされた裏切りの連鎖は圧巻でした。味方だと思っていた人物が次の瞬間には敵となり、その敵もまた別の誰かに裏切られる。誰一人として心から信じられる者がいない世界で、純粋な想いを貫こうとすることが、いかに無謀で、そして尊いことなのかを痛感させられます。物語の重厚さに、ただただ圧倒されるばかりでした。
つづく