天下無敵の力を得られるという武庫の伝説が囁かれる中、晋王(しんおう)に仕える暗殺組織天窗の首領・周子舒(ジョウ・ズーシュー)は、非情な任務に心をすり減らしていた。仲間を次々と失い、自らの行いに疑問を抱いた彼は、組織を抜けることを決意。厳しい掟により余命3年という運命を受け入れ、顔を変えて自由の身となり、江湖の放浪者となる。ある日、橋のたもとで日向ぼっこをしていた彼は、謎めいた貴公子・溫客行(ウェン・コーシン)とその侍女に出会う。この出会いが、彼の運命を大きく動かしていくことになる。

「山河令」あらすじネタバレ1話

江湖に伝わる、一つの伝説。それは、20年前に大魔頭・容炫(ロン・シュエン)が残したという、一夜にして天下無敵になれる武庫の存在。その扉を開く鍵となる琉璃甲を巡り、多くの者たちが水面下で火花を散らしていました。

物語は、そんな伝説とは一見無関係に見える場所から始まります。北方の地で勢力を拡大する晋(しん)王。彼の野望を支えるのは、朝廷の重臣すら闇に葬る暗殺組織天窗でした。

その天窗の首領こそ、我らが主人公、周子舒(ジョウ・ズーシュー)。彼は晋王(しんおう)に反逆を企てたとして、振武節度使・李氏の暗殺を命じられます。夜空に舞う無数の孔明灯が燃え盛る炎と化す中、周子舒(ジョウ・ズーシュー)は部下を率いて屋敷を襲撃。李氏を守ろうとする護衛を退け、ついに本人を追い詰めます。仮面の下の顔が、旧知の周子舒(ジョウ・ズーシュー)であると知った李氏は、悪事に手を貸すのかと説得を試みますが、彼の刃は無情にも李氏の命を奪い、密書を晋王(しんおう)の元へ持ち帰るのでした。

この任務には、悲しい後日談があります。殺された李氏の娘・静安郡主(せいあんぐんしゅ)は、かつて周子舒の弟分であった秦九霄(チン・ジウシャオ)の恋人。つまり、彼にとっては師妹にあたる女性でした。周子舒は彼女に対し、父の死を告げると同時に、毒薬を渡し自害するよう促します。これは、秦九霄の亡骸を故郷の四季山荘へ返してくれた彼女への、せめてもの情けだったのかもしれません。静安郡主(せいあんぐんしゅ)は、秦九霄が彼女のために彫った簪を握りしめ、涙ながらに毒を呷るのでした。その姿をただ見つめる周子舒の心には、一体どんな感情が渦巻いていたのでしょうか。

次々と仲間や近しい人々を失い、四季山荘の仲間も今や自分と畢長風(ビー・チャンフォン)の二人だけ。その畢長風も、晋王の非道さに気づき、天窗を抜けることを決意します。しかし、組織を抜けるには七竅三秋釘という過酷な罰を受けねばなりません。体に七本の釘を打たれ、五感を失い、廃人となって3年後に死に至るというもの。それでも自由を望んだ畢長風に、周子舒は自らの手で刑を執行します。長年の忠臣の変わり果てた姿、そして次々と命を落としていった仲間たちの記憶が、周子舒の心を蝕んでいきました。

実は、周子舒自身も、とっくに天窗を抜ける覚悟を決めていました。彼は3ヶ月に1本ずつ、自らの体に釘を打ち込んでいたのです。武功を五割残し、少しずつ五感を失いながら3年の余命を生きるために。晋王の引き留めを振り切り、最後の釘を打たれた周子舒は、ついに自由の身となります。

顔を変え、みすぼらしい姿で江湖を放浪し始めた周子舒。時を同じくして、青崖山(チンヤーシャン)の鬼谷(グーグー)では、谷主の持つ琉璃甲が配下の吊死鬼(ちょうしき)に盗まれ、谷中総出の捜索が始まっていました。

三ヶ月後、越州城の橋のたもとで酒を飲み、無頼の民として日向ぼっこをしていた周子舒。その姿を面白がったのが、派手な衣をまとった謎の男・溫客行(ウェン・コーシン)と、その侍女・顧湘(グー・シアン)でした。顧湘(グー・シアン)は、物乞いと勘違いした周子舒に絡み、手合わせをしようとしますが、彼の巧みな体さばきに翻弄されます。その一部始終を、溫客行(ウェン・コーシン)は興味深そうに眺めているのでした。

過酷な過去を捨てた男と、謎めいた男。二人の運命が、今まさに交わろうとしています。

『山河令』第1話の感想

第1話は、主人公・周子舒が背負う闇の深さと、そこから抜け出そうとする彼の悲痛な覚悟が描かれ、非常に重厚な幕開けでした。暗殺組織の冷酷な首領としての姿と、仲間や師妹の死に心を痛める人間的な側面とのギャップが、彼のキャラクターに深みを与えています。特に、自らの体に釘を打ち込み、死を覚悟の上で自由を求める姿は壮絶です。物語の後半、彼がようやく手に入れた自由の地で、風に吹かれながら酒を飲むシーンは、前半の息詰まるような展開からの解放感があり、印象的でした。そこに現れた溫客行(ウェン・コーシン)という、明らかに何かを秘めた人物の登場で、物語の空気は一変します。彼の存在が、周子舒の残り少ない人生にどのような色を加えていくのか、今後の展開から目が離せません。

つづく