ついに再会を果たしたジャンヒョンとギルチェ。しかし、運命は二人を祝福するどころか、さらに過酷な試練を与えようとしていました。第16話は、清の権力闘争と、愛する人を守るためのあまりにも切ない決断が描かれる、胸が締め付けられるような回でした。

清の激震と、忍び寄るカクファの影

清の皇帝ホンタイジの病状が悪化し、宮廷内に緊張が走ります。そんな中、清の皇女カクファはジャンヒョンに対し、ギルチェを朝鮮に帰さなければ、朝鮮人捕虜たちを拷問すると脅しをかけます。一方のギルチェは、自分がジャンヒョンの災いであるならば、それを解けるのも自分だけだと、彼のそばに留まる決意をリャンウムに語るのでした。

ジャンヒョンはギルチェに俺のそばにいてくれと本心を伝えますが、ギルチェは夫への道理を捨てきれず、すぐには応えられません。しかし、ついに彼女はジャンヒョンのために命を捧げる覚悟を決め、彼の部屋を訪れます。ジャンヒョンが彼女の想いを受け止めようと唇を近づけたその瞬間、外から彼を呼ぶ声が…。

ホンタイジが崩御したのです。

後継者はわずか6歳の皇子。そして摂政王として実権を握ったのは、野心家のドルゴンでした。この突然の政変は、朝鮮の運命をも大きく揺るがします。ジャンヒョンは皇太子の未来を守るため、新権力者ドルゴンへの接触を試みます。

しかし、ドルゴンはジャンヒョンを敵視するカクファにも権限を与えてしまいました。朝鮮人捕虜の管理権を手に入れたカクファは、ジャンヒョンに究極の選択を迫ります。私を選べ。さもなくば、お前と、お前が匿うギルチェも捕虜も、全てを葬り去ると。

愛してるから、さよならを

愛するギルチェと仲間たちを守るため、ジャンヒョンはあまりにも辛い決断を下します。彼はギルチェの元へ向かうと、これまでの態度を豹変させ、冷たい言葉で彼女を突き放しました。お前にはもううんざりだ俺の心にはもう何も残っていない。

それは全て、ギルチェをカクファの脅威から遠ざけ、安全な朝鮮へ帰すための悲しい嘘でした。何も知らないギルチェは、彼の言葉に深く傷つきながらも、それが彼の望みならと、皇太子と共に朝鮮へ帰ることを決意します。

別れの時、ジャンヒョンは瀋陽での辛いことは全て忘れ、朝鮮でギルチェらしく華やかに暮らせと最後の願いを伝えます。ギルチェもまた、二度とあなたの心を傷つけない。朝鮮で堂々と生きてみせると誓い、故郷へと旅立っていくのでした。

朝鮮で待ち受ける新たな地獄

しかし、ギルチェが戻った朝鮮は、彼女が夢見た場所ではありませんでした。周囲からは蛮族に汚された女と蔑まれ、屈辱的な日々が始まります。さらに、夫ウォンムは別の女性と関係を持っており、義父からは家の恥だと命を狙われる始末。

追い詰められたギルチェは、ついにウォンムと対峙します。彼女は瀋陽で受けた苦しみを語りながらも、離縁の本当の理由を告げました。私の心は、イ・ジャンヒョン様という方に差し上げました。彼女の瞳には、もはや迷いはありませんでした。

『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』第16話の感想

今回のエピソードは、登場人物たちがそれぞれの立場で下す、重い決断の連続でした。特に、ジャンヒョンが愛するギルチェを守るために、あえて心を偽り冷たい言葉を投げかける場面は、彼の深い愛情と自己犠牲の精神を浮き彫りにし、観ていて非常に心が痛みました。彼の行動は、ただ愛するだけでなく、その人の未来までをも守ろうとする究極の愛の形を示しているように感じます。

また、朝鮮に戻ったギルチェが、世間の非難や夫の裏切りに屈することなく、自らの意志で未来を切り開こうとする姿は、彼女の持つ本来の強さを改めて感じさせました。多くの苦難を乗り越えた彼女が、自分の心に正直に生きることを選んだ最後の告白には、心を打たれずにはいられません。権力闘争が激化する清と、疑心暗鬼が渦巻く朝鮮、それぞれの場所で彼らがどう運命に立ち向かっていくのか、今後の展開から目が離せません。

つづく