ついに、ついにこの時がやってきました…!記憶を取り戻したジャンヒョンが、愛するギルチェをその腕に抱きしめるシーンから始まった第20話。これまでの苦しみが嘘のような穏やかな時間も束の間、皇太子の話題が出た途端、ギルチェの表情が曇ります。そう、二人の前にはまだ、あまりにも過酷な現実が横たわっていました。
皇太子の死の真相と新たな陰謀
ジャンヒョンはリャンウムから、皇太子が清で行っていた全ての行動が、仁祖(インジョ)王とその臣下たちに筒抜けだったことを知らされます。皇太子の側近の中に、裏切り者がいたのです。
その裏切り者とは、内官ピョでした。彼は王の臣下にそそのかされ、皇太子の動向を報告すれば、王が皇太子の苦労を理解してくださるだろうと信じ込まされていたのです。しかし、その純粋な忠誠心は利用され、結果的に皇太子と妃を死に追いやるための情報となってしまいました。全ての真相を知り、自らの過ちに気づいた内官ピョは、廃屋でジャンヒョンに皇太子が残した手紙の存在を告げると、妃を死に至らしめたのと同じ毒をあおり、自ら命を絶ちます。あまりにも悲しい結末でした。
一方、ギルチェがその皇太子の手紙を見つけた頃、戸を叩く音が。そこにいたのは、なんとガクファとドルゴン!ガクファはジャンヒョンを清へ連れに来たと言い放ちますが、ギルチェはジャンヒョンを助けてほしいと必死に頼みます。ギルチェの愛の深さに心を動かされたのか、ガクファはドルゴンに命じ、清からの使者を朝鮮に送らせ、通訳官としてイ・ジャンヒョンを同席させるようにと仁祖(インジョ)に圧力をかけるという、見事な一手でジャンヒョンを救います。
時を同じくして、宮廷では臣下たちがジャンヒョンを反乱軍の首謀者ク・ヤンチュンだとして暗殺者を送った後でした。王がジャンヒョン殺害の報告を待ちわびる中、清からの使者到着の知らせとジャンヒョンを同席させよという命令が届き、王と臣下たちは凍りつきます。まさに絶体絶命の危機を、ガクファが救ったのです。
清の威光を背に、王との対決
王の前に引き出されたジャンヒョンは、自らを皇太子が最も大切にした通訳官だと名乗り、仁祖(インジョ)を激怒させます。しかし、そこに清の使者としてドルゴンが登場。ドルゴンは皇太子への反逆容疑について説明を求め、ジャンヒョンはその機会を逃さず清の皇帝は、皇太子が有罪であるという証拠の提出を求めていると仁祖(インジョ)を追い詰めます。証拠などあるはずもなく、仁祖(インジョ)は怒りに震えるしかありませんでした。
それぞれの愛国心、それぞれの正義
しかし、ジャンヒョンのやり方に憤慨する人物がいました。ナム・ヨンジュンです。彼は清(蛮族)の力を借りて生き延びたジャンヒョンを朝鮮を汚す者と断じ、排除しようとします。そんなヨンジュンに、妻のウネは、かつて自分が蛮族に襲われそうになったところをギルチェに救われたという悲しい過去を打ち明けます。しかし、その事実を知ったヨンジュンは、純潔を失ったかのようにウネを蔑み、冷たい態度を取り始めるのでした。彼の歪んだ愛国心が、最も愛すべき人を傷つけていく皮肉な展開に胸が痛みます。
皇太子の遺志を継いで
ジャンヒョンは、皇太子が残した手紙を読み、彼の最後の願いを叶えることを決意します。それは、全ての朝鮮人捕虜を故郷に連れ帰ること。ジャンヒョンは皇太子の遺産と自らの全財産を投げ打ち、ドルゴンとガクファに捕虜たちの安全な通行を依頼します。
ガクファはあなたの身の安全のため、一緒に清へ行こうと説得しますが、ジャンヒョンはきっぱりと断ります。ギルチェが私の故郷だ。彼女のもとへ帰る道中で死ぬ方が、彼女を捨てるよりましだと。この言葉に、ジャンヒョンの揺るぎない愛の全てが詰まっていました。
ついに訪れる再会とプロポーズ
しかし、ジャンヒョンはすぐにはギルチェのもとへは戻りませんでした。解放されたものの、家族から受け入れを拒否される捕虜たちを救うため、彼らの安住の地を探して全国を奔走します。その間、ギルチェはクジャムが連れてきた女性や子供たちを自宅に受け入れ、帰らないジャンヒョンを待ち続けます。
そして、ついにその時は訪れます。家の前の道でジャンヒョンを待ちわびるギルチェ。遠くに彼の姿を見つけると、一目散に駆け寄り、その腕の中に飛び込みます。
旦那様…
そう呼ぶギルチェに、ジャンヒョンはああ、お前の旦那になろうと答えます。
物語の最後、クジャムとジョンジョンの結婚式が開かれます。その幸せな雰囲気の中、今度はギルチェがジャンヒョンに言います。私と婚礼を挙げてください。ジャンヒョンは優しく微笑み、二人で故郷のヌングン里へ帰り、静かに暮らそうと誓うのでした。
『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』第20話の感想
壮絶な苦難の果てに、ようやくジャンヒョンとギルチェの心が固く結ばれたことに、深い安堵と感動を覚えました。本作が単なる恋愛ドラマではないことは承知していましたが、今回のエピソードは特に、個人の愛と、国家や時代の大きなうねりとの間で人々がどう生きるかを力強く描き出していたように思います。皇太子の遺志を継ぎ、私財をなげうって同胞を救おうとするジャンヒョンの姿は、まさに英雄そのものでした。そして、彼の帰りを信じて待ち続け、自らもまた人々を支えるギルチェの強さには、ただただ心を打たれます。一方で、ヨンジュンのように凝り固まった正義感が、いかに身近な人間を傷つける凶器となりうるかという描写も鋭く、物語に一層の深みを与えていました。二人がようやく掴んだ幸せが、どうかもう壊されることのないようにと、心から願わずにはいられません。
つづく