物語は1540年、中宗35年の朝鮮王朝。春とは思えないほど冷え込む夜、舞台となるのは罪人たちが収監される「典獄署(チョノクソ)」です。

典獄署の役人であるチ・チョンドゥクは、囚人たちの管理に追われる平凡な毎日を送っていました。そんな彼の日常に、二つの大きな出来事が舞い込みます。

一つは、都一の妓房(キーパン)の妓生(キーセン)でありながら、囚人として収監されていたチョン・ナンジョンの出所。彼女は所長の理不尽な暴力に臆することなく啖呵を切るほどの気性の持ち主。出所の際、世話になったチョンドゥクを自身が働く最高級の妓房「ソソル」に招待し、彼を有頂天にさせます。

そしてもう一つが、この物語の核心となる運命の出会いでした。ソソルでの接待に心を躍らせながら帰路につくチョンドゥクの前に、血を流し、大きなお腹を抱えた一人の女性が倒れ込みます。「助けてください、かくまってください」と懇願する彼女を、人の良いチョンドゥクは見過ごすことができません。

彼は追手から逃れる妊婦を典獄署にかくまいますが、彼女は刀で深く斬られており、まさに満身創痍。医者を呼ぶ間もなく産気づいてしまいます。女囚たちの助けを借り、嵐のような出産劇の末、無事に女の子が生まれますが、母親は我が子を抱くこともできずに息絶えてしまうのでした。

一方、この妊婦を追っていたのは、王妃である文定(ムンジョン)王后の弟、ユン・ウォニョン。彼は目的のためなら手段を選ばない冷酷非道な権力者です。彼は姉である文定(ムンジョン)王后と共に、世子の容態が悪化していることを喜び、自分たちの天下が近づいているとほくそ笑みます。そして、邪魔者である妊婦と、そのお腹の子の始末を部下に命じていたのでした。

母親を失い、典獄署に残された赤ん坊。上司から「災いの種になる」と捨ててくるよう厳命されたチョンドゥクは、赤ん坊を人気のない場所に置き去りにしようとします。しかし、どうしても非情になりきれず、逡巡しているところを役人に見つかってしまい、とっさに「自分が育てる」と嘘をついてしまいます。

こうして、典獄署で生まれた女の子は「オクニョ(獄女)」と名付けられ、チョンドゥクを父親代わりとして、風変わりな監獄の中で育てられることになったのです。

そして15年の月日が流れます。オクニョは典獄署の雑用をこなしながら、囚人たちからスリの技術や様々な知識を教わり、利発でたくましい少女へと成長していました。彼女の数奇な運命は、まだ始まったばかりです。

『オクニョ 運命の女(ひと)』第1話の感想

第1話は、主人公オクニョの誕生にまつわる壮絶な序章でした。物語の主軸となる「運命の過酷さ」と、それに対抗するかのような「人の情」の対比が見事に描かれています。冷酷な権力者ユン・ウォニョンが象徴する非情な世界と、お調子者ながらも赤ん坊を見捨てられない下級役人チ・チョンドゥクの人間味あふれる姿。この両極端な存在が、物語に深い奥行きを与えています。オクニョが生まれ育つことになる典獄署という特殊な環境も興味深く、そこで出会うであろう様々な囚人たちが、彼女の人生にどのような影響を与えていくのか、今後の展開から目が離せません。壮大な物語の幕開けにふさわしい、重厚で見応えのある初回でした。

つづく