ヒョンの部屋から元カノのヨンウンが出てくるのを目撃してしまったウンジェ。昨夜、ヒョンの部屋にヨンウンが入っていくのを見てから、一睡もできずにいたのです。嫉妬と不安で胸がいっぱいのまま迎えた朝、二人が一緒にいる姿は、ウンジェの心をかき乱すには十分でした。
病院船に出勤しても、ウンジェの態度はぎこちないまま。ヒョンが何かを説明しようと必死に追いかけてきますが、ウンジェは聞く耳を持たず、彼を避け続けます。そんな二人の気まずい空気は、病院船のスタッフにも伝わっていました。
島への往診中も、上の空のウンジェ。その様子に気づいた看護師長は、恋の悩みだと見抜き、「クァク先生は昨日、キム先生の部屋で寝てたわよ」とこっそり教えてくれます。その一言で、張り詰めていたウンジェの心はふっと軽くなり、思わず笑みがこぼれるのでした。ようやく誤解が解けたのです。
病院船に戻ると、今度は韓方医ジェゴルの母親、つまり巨済病院の院長夫人が訪ねてきます。テレビでウンジェのことを見ていたという院長夫人。しかし挨拶を交わす最中、彼女は突然胃のあたりを押さえて苦しみだします。ただの胃痛だと言う夫人ですが、ウンジェは握手した瞬間に見た、首筋に異常に浮き上がった動脈が気になっていました。
これはただ事ではない。ウンジェの脳裏に、心筋梗塞で亡くした母親の姿がよぎります。彼女はすぐに聴診器を当て、院長夫人が心筋梗塞の可能性があると診断。しかし、内科医のヒョンも、息子であるジェゴルも、聴診器一つでの診断を信じることができません。
「母の心音を、私は毎日聴いているんです」。ウンジェはスマホに録音していた症例の心音をヒョンに聞かせ、自分の診断に間違いはないと訴えます。その直後、院長夫人の呼吸が荒くなり、事態は急変。ウンジェの的確な判断で緊急搬送され、手術は無事成功しました。
手術室の前で、知らせを聞いて駆けつけた父親(院長)に「役立たず」と罵られるジェゴル。そこへ手術を終えたウンジェが現れ、「彼は監護人だからです。家族の前では冷静になれないものです」と、静かにジェゴルをかばいます。その凛とした姿に、ジェゴルの心は強く揺さぶられました。
その後、一人廊下で声を殺して泣くウンジェ。母親を救えなかった過去のトラウマと、今日救えた命が重なり、感情が溢れ出してしまったのです。その涙を、ジェゴルは遠くから見つめていました。彼女の弱さに触れた瞬間、ジェゴルの胸に特別な感情が芽生えたのです。
翌日、ジェゴルはヒョンに問いかけます。「ソン先生をどれだけ好きなんだ?中途半端なら、俺が奪うぞ」。静かな恋の三角関係が、ついに動き出す瞬間でした。
『病院船〜ずっと君のそばに〜』第16話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの心が大きく動いた、非常に見ごたえのある回でした。前半のウンジェとヒョンの可愛らしい嫉妬とすれ違いから一転、後半は緊迫した医療現場を通して、それぞれの過去の傷や人間性が深く描かれています。
特に印象的だったのは、ウンジェの医師としての成長と、その裏にある人間的な弱さの対比です。母親を亡くしたトラウマから、毎日心音の症例を聞き続けることで医師としての腕を磨き、見事にジェゴルの母親を救ってみせた姿は圧巻でした。しかし、その直後に見せた涙は、彼女が抱える痛みの深さを物語っており、胸が締め付けられました。
また、これまで少しお調子者のように見えたジェゴルの変化も見逃せません。母親の危機に直面し、ウンジェの強さと弱さの両面に触れたことで、彼の彼女への想いが単なる興味から、守りたいという深い愛情へと変わっていく様子が丁寧に描かれていました。ヒョンへのライバル宣言は、今後の恋模様がさらに熱を帯びることを予感させます。医療ドラマとしての緊張感と、人間ドラマとしての深みが絶妙に絡み合った素晴らしいエピソードでした。
つづく