森の奥深く、廃屋に監禁されたチャ・ソンチェク。彼女を救うため、イ・ボンとソンチェクの家族は必死の捜索を続けていました。ソンチェクは命乞いをしますが、誘拐犯は「命の恩人」の命令で彼女を殺すことになっていると冷たく言い放ちます。その黒幕の名は明かされません。しかし、ソンチェクは隙を見て男の足に一撃を与え、必死に脱出!町の太鼓を力いっぱい打ち鳴らし、助けを求めます。
その音を聞きつけたイ・ボンが駆けつけ、まさに首を絞められ絶体絶命のソンチェクを救出します。意識を失う直前、ソンチェクは「あの人を殺さないで」と懇願。イ・ボンはその言葉に従い、黒幕を突き止めるために男を生け捕りにしました。
ソンチェクは屋敷に運ばれ、家族は安堵に包まれます。その夜、イ・ボンはソンチェクを失う悪夢にうなされますが、目覚めた彼をソンチェクが優しく慰めます。「あなたのせいじゃない。あなたの不幸を一緒に背負わせて」と微笑むソンチェク。しかし、彼女の心の中では、イ・ボンが人の命を奪い続けることへの恐怖が芽生え始めていました。
一方、都では誘拐事件の噂で持ちきり。疑いの目はト・ファソンに向けられますが、彼女は潔白を主張します。そんな中、チョン・スギョムは誘拐犯が以前チョ・ウネと会っていた男だと気づき、彼女への疑念を抱きます。しかし、ウネはスギョムの前でソンチェクを心配する健気な友人を完璧に演じきり、彼の疑いを晴らしてしまいます。
ウネは一人でソンチェクを見舞い、巧みに情報を探りながら、犯人はファソンだと信じ込ませようと画策します。
イ・ボンは捕らえた男を尋問しますが、男は固く口を閉ざします。唯一の手がかりは、ソンチェクを誘い出した偽の手紙。その捜査はウネの父親の会社へと繋がりますが、その矢先、イ・ボンは王に呼び出されてしまいます。
王はイ・ボンの忠誠心を疑い、彼に暗殺リストを渡して実行を命じます。苦悩しながらも、イ・ボンは王命に従うしかありませんでした。
その夜、衝撃の事態が起こります。ウネが牢屋から誘拐犯を逃がすふりをして、背後から彼を刺殺したのです。彼女こそが、この事件の真の黒幕でした。過去にソンチェクを池に突き落としたのも彼女の仕業だったことが、フラッシュバックで明らかになります。犯行現場を去るウネは、イ・ギュと遭遇。「協力しよう」と持ちかける彼を信じさせるため、イ・ギュは死体の処理を手伝います。
翌日、ソンチェクは寺でイ・ギュと出会います。彼はソンチェクの膝枕で眠り、二人の間には不思議な空気が流れます。その頃、イ・ボンは王命を果たし、元宰相をその手にかけていました。
ソンチェクとイ・ギュが寺から戻る途中、人だかりの中に誘拐犯の死体を発見し、ソンチェクはショックで立ち尽くします。そこに現れたイ・ボン。ソンチェクは彼の腕の中に駆け込みますが、イ・ギュは民衆に向かって、暗にイ・ボンが犯人であるかのように示唆します。
屋敷に戻ったソンチェクは、イ・ボンの袖に付着した血痕に気づき、彼を問い詰めます。「私を信じないのか」と問うイ・ボンに対し、ソンチェクは「あなたが人を殺すのは嫌なの」と答え、二人の信頼関係に、決定的な亀裂が入ってしまうのでした。
『主役の初体験、私が奪っちゃいました』第9話の感想
これまでラブコメ要素とシリアスな宮廷劇のバランスが絶妙でしたが、この第9話で物語は一気にダークな深淵へと舵を切りました。最大の衝撃は、やはり親友だと思っていたチョ・ウネの裏切りです。彼女の純粋そうな笑顔の裏に隠された、嫉妬と野心に満ちた素顔には、ただただ戦慄させられました。彼女がソンチェクを池に突き落とした過去まで明らかになり、これまでの伏線が一気に繋がった感覚です。
そして、ソンチェクとイ・ボンの関係性が、外的な脅威だけでなく、内面的な不信感によって崩れ始めていく様が非常に巧みに描かれていました。ソンチェクの「人を殺さないで」という願いは、彼女の優しさの表れであると同時に、王命という逃れられない宿命を背負うイ・ボンにとっては、最も受け入れがたい言葉だったでしょう。愛しているからこそ生まれるすれ違いが、胸に迫ります。イ・ギュの不気味な暗躍も加わり、物語は予測不能な領域に突入しました。甘いロマンスから一転、登場人物たちの心理が複雑に絡み合う、見応えのある一話でした。
つづく