ついにカン・ヨハンと共に歩むことを決意したキム・ガオン。彼の心は、もはや揺らぐことはありませんでした。ヨハンもまた、自身の両親を死に追いやり、そしてガオンの両親を騙した詐欺師ド・ヨンチュンをすり替えた者たちへ、必ず代償を払わせると誓います。そんな固い決意を交わした矢先、ヨハンの姪エリヤから悲痛な救助要請の電話が!ヨハンとガオンは、すぐさま現場へと急行します。
現場では、ガオンの幼なじみである刑事ユン・スヒョンが、「竹槍」と名乗る謎の集団と一触即発の状態で対峙していました。リーダー格の男は、なんとスヒョンが銃を抜いた瞬間をライブ配信し、「警察による暴力だ」と世論を煽る始末。スヒョンは男と激しくもみ合います。
その混乱の隙を突き、一人の暴漢が車に残されたエリヤに襲いかかりました!スヒョンはエリヤを助けようとしますが、他のメンバーに囲まれ身動きが取れません。まさに絶体絶命…その瞬間、ヨハンとガオンが到着します。ガオンがエリヤを救出し、怒りに燃えるヨハンはリーダーの首を容赦なく締め上げました。男が白目をむきかけたその時、スヒョンがヨハンに銃口を向け、「やめなさい!」と叫びます。ヨハンは渋々手を離すと、エリヤを抱きかかえ、何も言わずにその場を去るのでした。
屋敷に戻ったヨハンは、エリヤがスヒョンにトッポッキを食べに連れて行ってほしいと頼んだ結果、事件に巻き込まれたと知り、スヒョンが意図的にエリヤを危険に晒したのだと決めつけ、怒りを露わにします。ガオンはスヒョンを必死に弁護しますが、ヨハンの疑念は晴れません。
一方、社会的責任財団の理事長に就任したチョン・ソナは、その喜びを隠しきれませんでした。彼女はとんでもないことを思いつきます。それは、ヨハンを財団の広告モデルに起用すること。後日、ソナは裁判長室に現れ、ヨハン、ガオン、オ・ジンジュ判事に対し、国民参加裁判の広報として模擬裁判のテレビ番組を制作しないかと持ちかけます。ヨハンとガオンは猛反対しますが、目立ちたがりのジンジュと裁判長は乗り気で、計画は強引に進められてしまうのでした。
そんな中、ガオンは竹槍集団の事件映像を繰り返し見返し、エリヤの協力を得て分析を進めます。そして、ガオンは屋敷の家政婦が作る料理がひどく不味いことに気づきます。ヨハンがいつも家政婦の料理に一切手を付けなかった理由を知り、文句一つ言わなかった彼に思いを馳せるのでした。ガオンは自ら腕をふるって食事を用意し、ヨハン、エリヤ、家政婦の4人で食卓を囲みます。そこには、まるで本当の家族のような温かい時間が流れていました。
温かい時間も束の間、ヨハンとガオンは、法務部長官チャ・ギョンヒを失脚させるための作戦会議を開きます。ターゲットは、10年以上チャ・ギョンヒに忠誠を誓ってきた秘書。ガオンはこの役目を自ら買って出ます。
ガオンは25億ウォンもの金塊を使い、秘書を買収しようと試みますが、秘書は頑として首を縦に振りません。そこへヨハンが登場。彼はなんと、秘書の目の前で金塊を一つ、また一つと減らしていくという悪魔的な心理作戦を展開します。「君の忠誠心は素晴らしいが、そのせいで君が手にするはずだった金が減っていくぞ」と。金が減っていく様に耐えられなくなった秘書は、ついに陥落。チャ・ギョンヒの悪事の証拠と、あの詐欺師ド・ヨンチュンの潜伏先を白状するのでした。
教えられた農場へ向かったガオンは、ついに両親の仇であるド・ヨンチュンと対面します。しかし、彼は妻と娘に囲まれ、幸せそうに暮らしていました。怒りに燃えるガオンは今にも飛びかかろうとしますが、ヨハンに「奴はチャ・ギョンヒを潰すための重要な駒だ。大局を見ろ」と制されます。
しかし、ガオンの怒りは収まりません。夜、彼はド・ヨンチュンの家に乗り込みます。ド・ヨンチュンはひざまずき、「殺してくれ」と命乞いをします。ガオンが彼の首に手をかけたその時、彼の妻子が現れ、泣きながら夫を助けてほしいと懇願します。その姿に、ガオンの心は激しく揺らぎました。
そこへ再びヨハンが現れ、ガオンを引き離します。そして、ド・ヨンチュンが庭に隠していた大金と家にガソリンを撒き、火を放ちました。家の中に妻子が残されているにもかかわらず、ド・ヨンチュンは燃え盛る金の方へ這っていき、必死にそれをかき集めようとします。しかし、それはただの紙切れでした。
家族よりも金を選んだド・ヨンチュンの醜い本性が、白日の下にさらけ出された瞬間でした。すでに救出されていた妻子は、そんな彼の姿に絶望し、静かに去っていきます。すべてを失ったド・ヨンチュンの前に、ヨハンは一本のナイフを差し出し、ガオンに「復讐しろ」と促します。しかし、ガオンは熟考の末、ナイフを遠くに投げ捨てました。そして、私的な復讐ではなく、ド・ヨンチュンを利用して巨悪を討つという、ヨハンのやり方を選ぶことを決意したのです。
その後、ガオンはド・ヨンチュンが騙し取った金を掘り起こし、かつての被害者たちの家の前に、そっと置いていくのでした。
『悪魔判事』第9話の感想
カン・ヨハンという人物の底知れなさが、これでもかと描かれた回でした。彼の計画は常に冷酷で非情ですが、その一つ一つが人間の最も醜い部分、つまり「貪欲さ」を的確に突いています。秘書を金で揺さぶり、ド・ヨンチュンの本性を家族の目の前で暴く手腕は、まさに悪魔的でありながら、一種の爽快感すら覚えます。
そして、その悪魔に導かれるように、キム・ガオンが変化していく様が非常に興味深かったです。単なる復讐心に身を任せるのではなく、より大きな悪を断罪するための「駒」となることを自ら選んだ彼の決断は、重く、そして切ないものでした。温かい家庭の食卓のシーンがあったからこそ、彼らが進む道のりの過酷さがより一層際立ちます。正義とは何か、悪とは何か、その境界線が曖昧になっていく中で、彼らがどこへ行き着くのか、目が離せません。
つづく