今回は、そんな二人の甘く、そしてあまりにも切ない時間が描かれます。まるで失われた青春を取り戻すかのように、ささやかな幸せを分かち合う二人ですが、その背後には残酷な現実と、決して癒えることのない過去の傷跡が横たわっていました。

それでは早速、第9話の詳しいあらすじとネタバレを見ていきましょう。

二人だけの時間、そして「交際初日」

教会の前で静かに語り合ったジェヒョンとジスは、並んで彼女の家へと歩き始めます。一度は「おやすみ」と別れたものの、ジスは振り返り、ジェヒョンをコンビニのラーメンに誘うのでした。

「あなたみたいな立場の人が、まさかコンビニのラーメンを食べるなんてね」とジスは自嘲気味に笑いますが、ジェヒョンはそんな彼女の気遣いを打ち消すかのように、おいしそうにラーメンをすすります。

コーヒーを片手に街を眺めながら、ジェヒョンは「今日を、僕たちの交際の初日にしないか?」と切り出します。その言葉に喜びを感じながらも、世間の目を気にするジス。そんな彼女に、ジェヒョンは「君の前に僕が立つ。四方から投げつけられる石は、僕が全部受け止める」と力強く宣言するのでした。彼にとってジスは、共に戦うための「鎧」そのもの。彼女がいれば、どんな困難にも立ち向かえる自信があったのです。

優しさという名の贈り物

ジェヒョンは、ジスが安心して暮らせるようにと、彼女の家の壊れかけた玄関灯を気にして、最新の指紋認証ロックを取り付けさせます。戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな優しさを、ジスは甘く受け止めるのでした。

さらに、ジスの父がいる老人ホームにピアノを寄付するジェヒョン。表向きは「誰でも弾いていい」と言いながらも、その本当の想いは、ピアノを愛するジスただ一人に向けられたものでした。

夜には、二人が若い頃にいつも聴いていた思い出の曲を、ジェヒョン自身が録音してジスにプレゼントします。「君の元へ戻る。少しだけ、周りを整理する時間をくれないか」と告げるジェヒョンに、ジスは頷くことしかできませんでした。

妻ソギョンの逆襲と、ジスの消せないトラウマ

一方で、ジェヒョンの妻ソギョンは、夫の心が完全に離れたことを悟っていました。ジェヒョンから離婚を切り出された彼女は、「ジスが現れなくても、私たちの結婚はとっくに終わっていた」という冷たい言葉を突きつけられます。プライドをズタズタにされたソギョンは、「絶対に離婚しない。私が手に入れられないものを、あの女に渡すもんですか」と、憎しみを燃やすのでした。

その頃、ジスは同僚たちからサプライズで誕生日を祝われます。しかし、彼女にとって誕生日は、思い出したくもない悪夢の日でした。

25年前の誕生日。ジスは、兵役中のジェヒョンに会うため、家族が用意してくれたご馳走を重箱に詰めて面会に行っていました。そのせいで、継母と妹が買い物に行っていたデパートの崩壊事故に巻き込まれた際、すぐに駆けつけることができなかったのです。

トンネルの闇が呼び覚ます悪夢

息子を迎えに行くため列車に乗ったジス。すると、そこには彼女に会うために早朝から待っていたジェヒョンの姿がありました。並んで座り、穏やかな時間が流れるのも束の間、列車は突然、暗いトンネルの中で緊急停止してしまいます。

その瞬間、ジスの脳裏に25年前の記憶がフラッシュバックします。事故の知らせを受け、パニック状態で乗った帰りの列車も、同じように暗いトンネルで立ち往生したのでした。早く家族の元へ行きたいのに、どうすることもできない絶望感。

当時、ジスが落とした靴を届けようとしたジェヒョンは、部隊を抜け出した罰で営倉に入れられていました。彼女が一人で絶望の中にいることを知りながら、何もできずに嗚咽するしかなかったのです。

過去と現在が重なり、パニックに陥ったジスは、無意識に車両をさまよい歩きます。そして、行き止まりの車両後部にたどり着き、絶望に膝から崩れ落ちそうになったその時、ずっと後ろを追いかけてきていたジェヒョンが、彼女の体を力強く抱きしめるのでした。

『花様年華~君といた季節~』第9話の感想

今回のエピソードは、ジェヒョンとジスの幸せな時間と、それとは対照的な過酷な現実が色濃く描かれ、胸が締め付けられるような回でした。コンビニでのささやかなデートや、ピアノ、歌のプレゼントなど、ジェヒョンの不器用ながらも深い愛情表現には心温まるものがあります。しかし、その幸せを壊そうとする妻ソギョンの執念や、ジスが抱えるデパート崩壊事故という壮絶なトラウマが、物語に重い影を落とします。特に、列車のトンネルというシチュエーションで過去と現在をリンクさせ、ジスの心の傷を鮮明に描き出す演出は見事でした。幸せの絶頂から一気に突き落とされるような展開は、このドラマならではの切なさを際立たせています。ただ甘いだけではない、痛みを知る大人たちのラブストーリーの深みを感じさせる内容でした。

つづく