封印された記憶と、そばにいるということ

ふとした車の故障。その光景が、ジスの心の奥底に封印していた25年前の悪夢を呼び覚まします。デパート崩壊事故の記憶に襲われ、パニックに陥るジス。そんな彼女を、ジェヒョンはただ静かに見つめ、優しく抱きしめます。学生時代、兵役中で彼女が最もつらい時にそばにいられなかった後悔を、今、埋めるかのように…。ジェヒョンの温もりの中で、ジスは少しずつ落ち着きを取り戻しますが、その傷の深さは計り知れません。

あの日、ジスは誕生日でした。病院に駆けつけた彼女が目にしたのは、母と妹の死に泣き崩れる父の姿と、妹がプレゼントしてくれるはずだったバースデーケーキ。一瞬にして家族は崩壊し、汚職の疑いで職を追われた父は心を病み、父娘の関係までも冷え切ってしまったのです。これまで誰にも明かせなかったであろう壮絶な過去を、ジスはジェヒョンの前で、ようやく言葉にすることができました。

親の恋が、息子たちを傷つける

しかし、二人の再会が穏やかな時間だけをもたらすわけではありません。ジェヒョンとジスの過去の関係は、ついに息子たちの耳にも入ってしまいます。親が初恋の相手同士だったという噂に、ジェヒョンの息子ジュンソはジスの息子ヨンミンに殴りかかり、学校で大喧嘩に発展。

駆けつけたジスとジェヒョンの前で、息子たちは固く口を閉ざします。しかし、同級生の証言で原因が自分たちのことだと知ったジスは、息子たちの前で、ジェヒョンが「初恋の人だった」と打ち明けるのでした。自分の恋が息子を傷つけてしまった…母親として、これほどつらいことはないですよね。

ジェヒョンが胸に秘めた「復讐」の誓い

そして、物語はさらに核心へ…。ジェヒョンもまた、ジスに衝撃の事実を告白します。彼がなぜ今の会社に入り、憎き義父であるチャン会長のもとで働いているのか。それは、兵役中に自ら命を絶った父の無念を晴らすためでした。ジェヒョンの父は、チャン会長が経営する会社の労働組合員であり、会社の不当な圧力によって死に追いやられていたのです。

一方、チャン会長もまた、自分がかつて裏切った組合員が、まさか娘婿ジェヒョンの父親だったという事実を知り、恐怖に震えます。ジェヒョンの復讐の刃が、すぐそこまで迫っていることを感じ取ったのでしょう。

妻のソギョンは、ジェヒョンの母を味方につけて離婚を阻止しようとしますが、ジェヒョンの決意は揺るぎません。それどころか、学校の問題を早く解決したいヨンミンは、なんと退学を選択。さらに、母であるジスに「ジェヒョンと付き合わないでほしい」と告げるのでした。愛し合う二人を、残酷な運命と周囲の思惑が引き裂こうとしています。

『花様年華~君といた季節~』第10話の感想

今回は、登場人物たちが抱える過去の傷が、現在の人間関係に深い影響を及ぼしていく様子が、非常に丁寧に描かれていました。ジスが経験した家族の崩壊はあまりにも痛ましく、その記憶をジェヒョンの前で少しずつ解き放っていくシーンは、見ていて胸が締め付けられるようでした。また、ジェヒョンが冷徹な事業家になった背景に、父の死を巡る復讐という重い動機があったことが明かされ、物語に一層の深みが増しました。親の過去が子供たちの世界にまで波紋を広げてしまう展開は、現実的でやるせない気持ちになります。しかし、そんな過酷な状況下でも、互いを思いやり、静かに寄り添おうとするジェヒョンとジスの姿には、悲壮感の中にも確かな愛の美しさが感じられました。静かながらも、登場人物たちの内面で激しい嵐が吹き荒れているような、重厚な一話でした。

つづく