さて、前回から不穏な動きを見せていたチャンスは、計画していたテフン襲撃がなかなか進まず、イライラを募らせています。その頃、当のテフンは亡き妹の納骨堂を訪れていました。生前、二人がどれほど仲の良い兄妹だったかが描かれ、彼の行動の裏にある深い悲しみが垣間見えましたね。
一方、我らがミヨンは、過去のトラウマを乗り越え、ピアノ教室の先生として新たな一歩を踏み出していました。そんな彼女のもとに、なんと芸能事務所からシンガーソングライターとしてデビューしないかという驚きのオファーが舞い込みます。でも、この話の裏にはどうやらテフンが一枚噛んでいるようで、素直に喜べない不穏な空気が漂います。
心優しいソクチョルは、息子に会いたがる姉ソッキョンのために、遊園地への日帰り旅行を計画。そこには、明らかにソッキョンに気がある友人のビョンスも一緒です。楽しい時間を過ごすものの、別れの時はやってきます。息子と離れがたく、悲しみに暮れるソッキョンは、「また一緒に住もうね」と、今はまだ叶えられない約束をしてしまうのでした。
その頃、ソクチョルの妹ソッキは、恋人キホンの浮気を疑って尾行中。アートホールで彼が別の女性と一緒にいるのを目撃しますが、チケットがないため追い出されてしまいます。しかし、公演後、キホンはその女性に「付き合っている人がいる」とハッキリ告げて別れていました。すれ違う二人ですが、ソッキもまた、自分に好意を寄せてくれた患者さんを丁重にお断りしていて、お互いを想う気持ちは本物のようです。
物語は再び、ソクチョルとテフンの対立へ。テフンはチャンスの縄張りにあるバーを狙って挑発を仕掛けますが、ソクチョルが間に入ってその場を収めます。さらに、チャンスに雇われてテフンを殺すはずだったヤクザ仲間を助けるなど、彼の苦悩は深まるばかり。
ソクチョルにはもう一つ、大きな悩みがありました。それは、銀行に差し押さえられそうな両親の家。父親はすでに諦め、小さなアパートの契約まで済ませてしまっています。テフンの殺害を断ったことで、大金を手にする機会を失ったソクチョルは、金策に窮していました。そんな帰り道、以前助けた住民運動のリーダーに偶然出会い、「ヤクザ稼業から足を洗って、一番大事な家族に集中しろ」と助言されます。彼の心に、この言葉は重く響いたことでしょう。
そして、運命のラストシーン。ミヨンに会うために彼女のもとへ向かったソクチョル。しかし、そこにはすでにテフンの姿が。テフンは、自分との関わりを拒絶するミヨンに対し、「言うことを聞かなければ、お前の大切なソクチョルをめちゃくちゃにしてやる」と脅しをかけていたのです。愛する女性を守るため、静かに怒りを燃やすソクチョル。ここで6話は幕を閉じました。
『優しい男の物語』第6話の感想
今回のエピソードは、各キャラクターが抱える問題がより深く、そして複雑に絡み合ってきた印象です。特にソクチョルの置かれた状況は、見ていて胸が締め付けられました。守りたい日常や家族がある一方で、彼はヤクザという非情な世界から抜け出せずにいます。住民運動リーダーからの「家族を大切にしろ」という言葉は、視聴者の声そのものだったのではないでしょうか。また、ミヨンがようやく前を向いて歩き始めた矢先に、テフンの歪んだ執着が影を落とす展開には、やるせない気持ちになりました。彼の行動原理が妹への愛情に根差していることが示唆されただけに、そのやりきれなさは一層増します。静かながらも、登場人物たちの内面で激しい葛藤が渦巻く、非常に見ごたえのある回でした。
つづく