かつて天に二つの太陽と二つの月が存在し、世が混沌としていた時代。一人の英雄が弓を放ち、太陽と月を一つずつ射落としたことで、世界に平和が訪れた…という壮大な伝説から、この物語は幕を開けます。
物語の始まりは、いきなりヘビーな展開から。
王の外戚として権力を我が物にしようと企む大妃ユン氏と、その甥であるユン・デヒョン。彼らは王位を脅かす可能性のある義聖君(ウィソングン)の暗殺を計画し、実行に移します。
その邪悪な気を察知したのは、星宿庁(ソンスチョン)という王宮の巫女組織に属する、最も強い神力を持つ巫女アリでした。彼女は義聖君を救うべく駆けつけますが、時すでに遅く、暗殺の現場を目撃してしまいます。
暗殺者たちに追われる身となったアリは、崖から身を投げてなんとか逃れますが、現場に星宿庁の者である証の髪飾りを落としてしまいました。これが悲劇の引き金となります。
大妃は、アリが義聖君と恋仲であったと嘘の噂を流し、王を呪うために彼を殺したのだと濡れ衣を着せ、アリを捕らえるよう命じます。
深手を負ったアリが倒れ込んだのは、偶然通りかかった身重のホ夫人の駕籠の前でした。心優しいホ夫人は、追手からアリを匿い、無事に城内へと運びます。
アリは恩人であるホ夫人の胎内にいる娘が、国を照らす朝鮮の月となる運命を持つこと、しかし朝鮮の太陽に近づけば、その身に滅門の災いが降りかかるであろうことを見通します。アリは、この子を命に代えても守ると誓うのでした。
しかし、アリはついに捕らえられ、ユン・デヒョンの激しい拷問を受けます。死を覚悟したアリは、お前の罪は、いずれ月の光によって暴かれ、裁かれるだろうと、呪いにも似た予言を残します。
その夜、牢を訪れた友人の巫女チャン・ノギョンに、アリは最後の願いを託します。私に代わって、あの子…“朝鮮の月”を守ってほしいと。
翌日、アリは車裂きの刑という最も残忍な方法で処刑されます。その命が尽きる瞬間、彼女は空に浮かぶ二つの太陽と一つの月という、これから始まる数奇な運命を幻視するのでした。
時を同じくして、ホ夫人は無事に女の子を出産。その子こそ、アリが守ろうとした月、ホ・ヨヌです。
そして、物語は13年後へ――。
13歳になったホ・ヨヌは、聡明で美しい少女に成長していました。この日、彼女は母と共に、兄ホ・ヨムの科挙首席合格(状元及第)を祝う儀式のため、王宮を訪れます。ちなみに、ヨムの親友ウン(ウン)も武科で首席合格という、とんでもない秀才コンビです。
一方、宮殿では若き世子(セジャ)イ・フォンが、堅苦しい宮殿での生活にうんざりしていました。兄である陽明君(ヤンミョングン)に会うため、内官の目を盗んで宮殿を抜け出そうと画策します。
その頃、ヨヌは一羽の美しい蝶に誘われるように、宮殿の奥深くにある隠月閣(ウノルガク)へと迷い込んでしまいます。そこで彼女が見たのは、なんと塀を乗り越えようとしている一人の少年。そう、世子フォンです。
ヨヌはフォンを宮殿に忍び込んだ泥棒と勘違いし、フォンはヨヌを不法侵入者だと決めつけ、二人の出会いはまさに最悪!
なぜ塀を乗り越えるのです?君こそ、なぜこんな場所にいる?
売り言葉に買い言葉の応酬が始まりますが、お互いの言葉の端々から、相手がただ者ではない聡明さを持っていることに気づき始めます。フォンはとっさに自分は武科状元(ウン(ウン))の弟だと嘘をつきますが、ヨヌは鋭い観察眼でその嘘をあっさりと見破ってしまいました。
口論しながらも、二人の間には不思議な心の交流が生まれます。別れ際、フォンは自分の正体(世子であること)を記した手巾をヨヌに渡すよう、宮女に託すのでした。
自分の部屋に戻ったヨヌは、昼間の出来事を思い返し、あの少年こそが世子様だったのだと気づきます。
時を同じくして、諸国を放浪していたもう一人の太陽、陽明君(ヤンミョングン)も都に戻っていました。彼は塀の向こうから、偶然にもヨヌの姿を見つめ、その姿に何かを感じるのでした。
少年少女の淡い出会いの裏では、大妃とユン・デヒョンが世子を自分たちの意のままに操ろうと、新たな陰謀を企てています。
悲劇的な予言から始まった運命の歯車が、13年の時を経て、今、静かに回り始めました。
『太陽を抱く月』第1話の感想
壮大なファンタジーの世界観と、生々しい宮廷の権力争いが初回から見事に融合しており、一気に物語に引き込まれました。物語の冒頭、巫女アリが背負う過酷な運命と、彼女が遺した予言は非常に衝撃的で、これから始まる物語が単なる恋愛史劇ではないことを強く印象付けます。
その重厚なプロローグから一転、13年後のパートでは子役たちの瑞々しい演技が光ります。特に、世子フォンとヨヌの初対面のシーンは秀逸です。お互いを泥棒や不法侵入者と勘違いしながらも、丁々発止のやり取りの中で相手の知性に惹かれていく様子が、とても微笑ましく描かれていました。この出会いが、今後の彼らの運命を大きく左右するのだと思うと、感慨深いものがあります。悲劇と希望、陰謀と純粋な心が巧みに織り交ぜられた、見事な第1話でした。
つづく