あらすじ
太子妃選びの宴で、任安楽(じんあんらく)は圧巻の剣舞を披露し、太子・韓燁(かんよう)の心を惹きつけます。しかし、その宴の場で、太子妃の座をめぐる大きな波乱が勃発。韓燁、安楽、そして帝梓元(ていしげん)の名を名乗る帝承恩(ていしょうおん)、三人の関係が大きく揺れ動きます。一方、安楽は一族の復讐と芽生え始めた恋心との間で葛藤を深めていました。そんな中、韓燁はあるきっかけから、長年信じてきた事実に疑問を抱き始め、物語は新たな局面へと動き出します。
ネタバレ
太子妃選びの宴は、華やかな雰囲気とは裏腹に、ヒリヒリするような緊張感に包まれていました。帝承恩(ていしょうおん)が奏でる琴の音に合わせ、任安楽(じんあんらく)が剣の舞を披露します。その自由で力強い姿に、太子・韓燁(かんよう)は幼い日の許嫁・帝梓元(ていしげん)の面影を重ね、心を奪われていました。
しかし、そんな韓燁(かんよう)の視線が気に入らない帝承恩(ていしょうおん)。嫉妬に駆られた彼女は、わざと琴の演奏を速め、安楽を陥れようとします。ところが、安楽はそんな小細工に動じるどころか、舞いながら帝承恩(ていしょうおん)の髪に挿されたかんざしを弾き飛ばすという大胆な反撃に出ます。突然の出来事にうろたえ、太子妃らしからぬ姿を晒した帝承恩を、安楽は容赦なく嘲笑しました。
慌てて駆け寄り帝承恩をかばう韓燁(かんよう)。彼は彼女の髪を自ら結い直し、鳳凰のかんざしを挿して「そなたを太子妃とする」と、皆の前で宣言します。これで一件落着かと思いきや、まさにその瞬間、太后が皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)を伴って登場!「私がいる限り、帝家の娘は決して太子府には入れぬ!」と叫び、帝承恩の髪からかんざしを乱暴に引き抜いてしまったのです。
宴の後、傷心の帝承恩を優しく慰める韓燁の姿に、安楽は静かにその場を去ります。宮殿の門で待っていたのは、刑部尚書の洛銘西(らくめいせい)。さっきまで韓燁が自分にかんざしをくれるかもしれない、なんて淡い期待を抱いていた自分を恥じ、帝家の無念を思い、韓家のものなど受け取れるはずがないと、安楽は心を痛めるのでした。
一方で、宮中に戻った太后の怒りは収まりません。しかし皇帝は、帝承恩を太子妃に迎えることは、先帝の遺訓を守るという韓燁の君子としての約束であり、帝家を完全に韓家に臣従させるための切り札なのだと冷静に説きます。それを聞き、太后も次第に落ち着きを取り戻していくのでした。
その頃、都では別の事件が。好色で知られる忠義侯の息子・古斉善(こせいぜん)が、太子妃候補だった名家の娘・鐘景を殺害し、その罪を隠すために鐘家一家を焼き殺すという凶行に及んでいました。
安楽は一人、今は寂れた靖安侯府を訪れ、無念の死を遂げた父と八万の将兵に祈りを捧げます。そこに偶然、安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)も現れました。安寧(あんねい)は、宴の後も得意げな帝承恩が、父である靖安侯の供養にさえ来ないことに失望を隠せません。韓燁にそのやるせなさを打ち明け、「もし姉上(帝梓元(ていしげん))が玳山に送られず、都にいたら、任安楽(じんあんらく)のように自由に生きていただろうか」と語るのでした。
そして、物語はついに大きく動き出します。
安楽は洛銘西に、韓燁に惹かれている自分の気持ちを正直に打ち明けます。しかし、帝家の八万の魂の無念を晴らすという使命の前では、個人の感情は二の次だと、改めて復讐への決意を固めるのでした。
時を同じくして、韓燁は帝承恩を見舞った際、ある重大な事実に気づいてしまいます。彼女の肩に、かつて自分がつけたはずの傷跡が、どこにもないのです。韓燁の心に、帝承恩の正体に対する決定的な疑念が芽生えた瞬間でした。そして、その綻びを、洛銘西もまた、とっくに見抜いていたのです。
『安楽伝』第17話の感想
今回は、物語の静かな水面下に大きな波紋が広がる、重要な転換点となる回でした。これまで韓燁の優しさと罪悪感の対象であった帝承恩の化けの皮が、ついに剥がれ始めましたね。彼が彼女の肩に傷がないことに気づいた瞬間の表情には、長年の思い込みが崩れる衝撃と、ある種の解放感すら感じられました。ようやく真実への扉が開いたという安堵と、これから彼がどう動くのかという期待で胸が高鳴ります。
一方で、任安楽(じんあんらく)の苦悩がより深く描かれたのも印象的でした。韓燁への恋心を自覚しながらも、一族の復讐という重い使命のためにそれを封じ込めようとする姿は、見ていて非常に切ないものがあります。彼女の強さの裏にある脆さや人間らしさが、物語に一層の深みを与えています。偽りの婚約者と本物の復讐者、それぞれの正体が暴かれる日は近いのか、目が離せない展開です。
つづく