帝家の名誉回復が公に認められ、ついに洛銘西が釈放! しかし、喜びも束の間、安楽、韓燁(かんよう)、そして洛銘西、三人の関係はこれまで以上に複雑で、切ない局面を迎えることになりました。今回は、それぞれの正義と想いが交錯する、胸が締め付けられる第28話の展開を、ネタバレありで詳しく見ていきましょう。
韓燁(かんよう)の覚悟と、安楽の決別
民衆の声に後押しされ、ついに任安楽(じんあんらく)は皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)に、帝家八万の英霊を都に迎えるよう直訴します。さすがに皇帝自ら辺境へ赴くわけにはいかず、ここで名乗りを上げたのが韓燁でした。父帝に代わり、自分が西北の地へ赴き、帝家軍の魂を迎えることで民の怒りを鎮めたいと申し出たのです。
皇帝は、韓燁の申し出と洛銘西の釈放を許可する代わりに、一つの問いを投げかけます。「帝梓元(ていしげん)を娶る気はあるか」と。韓燁の答えは「生涯をかけ、陛下を輔佐し国を治めるのみ」。その答えに満足した皇帝は、帝家の英霊が都に戻る日に、自らの過ちを認める「罪己詔」を出すことを約束しました。
こうして、韓燁と安楽は揃って洛銘西を迎えに行きます。しかし、安楽の態度はあまりにも冷たいものでした。「帝梓元(ていしげん)に戻った以上、昔のようには戻れない」と、韓燁との間に明確な線を引きます。無事に釈放された洛銘西と安楽が同じ馬車で去っていく姿を、韓燁はただ寂しく見送ることしかできませんでした。その背中を見つめる琳琅(りんろう)の瞳には涙が…。
洛銘西の苛烈な正義と、安楽の葛藤
三日後、洛銘西は安楽を呼び出し、改めて彼女の考えを問いただします。民心を得た帝梓元は、皇帝にとって邪魔な存在でしかない。韓氏を牽制する力を手に入れなければ、帝家の悲劇は繰り返されると、彼は厳しい現実を突きつけます。しかし安楽は、韓燁や安寧(あんねい)を思うと、その話から耳を塞ぎたくなってしまうのでした。
いよいよ西北へ出発する日。韓燁が安楽のために用意した馬車を、彼女はあっさりと断り、後から駆けつけた洛銘西の馬車に乗り込みます。道中、洛銘西は安楽の甘さを指摘します。「帝家の後継者として、天下を覆すほどの気概を持つべきだ」と。
旅の途中で雨に見舞われ、三人は同じ小屋で雨宿りをすることに。この好機を逃さず、洛銘西は韓燁に揺さぶりをかけます。「帝家が手にした天下の半分を、韓家は返す時が来た」「帝家軍の兵士たちも誰かの息子であり、夫であり、父だった。彼らは戦場ではなく、奸臣と昏君のせいで死んだのだ」と。その言葉は、韓燁の胸に深く突き刺さるのでした。
一方、馬車の中で安楽は洛銘西に反論します。天下を奪うことは新たな戦乱を生み、罪のない民を苦しめるだけだと。そして、「韓燁ならば、民を思う賢君となり、平和な世を築ける」と信じる気持ちを伝えます。しかし洛銘西は、「腐敗しきった大靖を、韓燁一人の力で変えることなど不可能だ」と一蹴するのでした。
それぞれの場所で動く想い
- 安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)の決意:兄・韓燁の苦悩を誰よりも理解する安寧。彼女は、帝家の生き残った旧臣たちを保護するよう、皇帝に願い出ることを決意します。彼女は長年、密かに彼らの行方を捜していたのです。
- 帝承恩(ていしょうおん)の凋落:偽りの帝梓元である帝承恩(ていしょうおん)は、その正体が噂として広まり、宮女たちから侮辱される日々を送っていました。そんな彼女を唯一支えるのが慕青(ぼせい)。彼の優しさに、帝承恩は心を動かされます。
- 韓燁の悲痛な本音:溫朔に、安楽との関係を問われた韓燁は、悲しい本音を漏らします。「いっそこの世に帝梓元などおらず、ただの任安楽(じんあんらく)だけがいてくれたら」。しかし、それが叶わぬ夢であることも、彼自身が一番よく分かっているのでした。
『安楽伝』第28話の感想
帝家の名誉回復という大きな山を越えた先に待っていたのは、より複雑で深刻な人間関係の亀裂でした。同じ目的を共有するはずの安楽と洛銘西ですが、その手段を巡る考え方の違いが、これほどまで明確に対立するとは。天下の平和と民の安寧を最優先し、韓燁の善性を信じようとする安楽。対して、韓家の支配そのものを覆し、帝家の天下を取り戻すことこそが真の正義だと信じる洛銘西。彼の主張は過激ではありますが、その根底には帝家と安楽への絶対的な忠誠心と愛情があるため、一概に非難できないのが苦しいところです。
そして、その二人の間で板挟みになる韓燁の姿は、見ていて胸が痛みました。彼の誠実さや優しさが、皮肉にも事態をより複雑にしています。三者三様の正義がぶつかり合い、誰もが大切な誰かを守ろうと必死になっている。その姿が、この物語に深い奥行きを与えていると感じました。
つづく