あらすじ
帝家軍の慰霊を終え、長年の悲願を果たした任安楽(じんあんらく)は、故郷の靖南へ帰ることを決意します。韓燁(かんよう)は彼女を引き留めようとしますが、二人の間には依然として深い溝が横たわっていました。そんな中、都では不穏な動きが活発化。任安楽を狙う刺客が現れ、その背後には新たな陰謀の影がちらつきます。平和な日々が戻るかと思われた矢先、皇太子・韓燁が街中で衝撃的な事件を起こし、物語は誰もが予想しなかった方向へと急展開していきます。
ネタバレ
帝家の名誉がようやく回復され、安堵したのも束の間、物語は息つく暇もなく新たな悲劇へと突き進みます。今回は、平和な未来を誓ったはずの皇太子・韓燁(かんよう)が、衝撃的な行動に至るまでの緊迫した展開が描かれました。
静かな誓いと忍び寄る影
青南山の上で、帝家軍の英霊を前に、韓燁(かんよう)は民が平和に暮らせる世を築くと固く誓います。祭祀を終えた夜、溫朔(おんさく)と苑琴(えん きん)は星空を見上げながら、あの星々は国を守った将兵たちの魂だと語り合いました。
溫朔は、任安楽(じんあんらく)が以前よりもどこか冷たく、距離を置いているのを感じ取っていました。彼は安楽と韓燁(かんよう)が元の関係に戻ることを願っていましたが、苑琴(えん きん)は冷静に二人を見ています。彼女の目には、今の淡々とした姿こそが本来の任安楽(じんあんらく)であり、韓燁と出会って初めて見せた快活さは、心を許した相手にだけ見せる特別な一面だったと映っていました。二人の間に横たわる身分と立場の違いは、決して越えられない壁となっているのです。
梅花内衛の罠
そんな感傷的な雰囲気は、突然現れた仮面の刺客たちによって打ち破られます。溫朔が任安楽(じんあんらく)に彼女の弟・帝燼言について尋ねていた矢先の襲撃でした。幸い、韓燁と洛銘西(らくめいせい)が駆けつけ、刺客は撤退。しかし、現場には皇帝直属の暗部「梅花内衛」の令牌が残されていました。
これを見た任安楽(じんあんらく)は皇帝への怒りを募らせますが、韓燁は「父上が君を殺すなら、もっと正当な理由で処刑できたはずだ」と、これが罠である可能性を強く主張します。洛銘西も、刺客の武術が以前の宮中での襲撃犯と似ていることから、北秦が都に潜ませた勢力の仕業であり、黒幕が別にいると推測しました。
別れの決意と衝撃の結末
帝家の汚名がそそがれた今、任安楽は官職を辞して故郷の靖南へ帰る決意を固めます。韓燁は共に理想の国を創ろうと引き留めますが、彼女の決意は揺らぎません。洛銘西もまた、帝家の天下を取り戻すべきだと彼女を説得しますが、任安楽は「韓燁なら太平の世を築いてくれる」と彼を信じ、一緒に靖南へ帰ろうと誘うのでした。
その頃、任安楽の屋敷を訪れていた溫朔が、帰り道で何者かに誘拐されてしまいます。
一方、洛銘西は一連の刺殺未遂事件が、帝家旧部を扇動するための左相(さしょう)・姜瑜(きょう ゆ)の策略だと見抜きます。姜瑜(きょう ゆ)は、皇帝と任安楽を対立させることに失敗し、次なる手として帝家旧部の力を利用しようとしていたのです。洛銘西が帝家軍の再編を決意した矢先、衝撃的な知らせが舞い込みます。
「皇太子殿下が、街中で左相(さしょう)を斬り殺しました!」
韓燁は剣を手に左相・姜瑜(きょう ゆ)と対峙していました。姜瑜は少しも臆することなく、「帝家の者どもを道連れにしてくれる」と挑発します。その言葉が引き金となり、怒りに燃えた韓燁の剣が閃光を放ち、姜瑜は血しぶきを上げて絶命。洛銘西が駆けつけた時には、すべてが終わっていました。
実は、姜瑜は誘拐した溫朔の命を盾に韓燁を脅迫していたのです。そして溫朔こそが、行方不明だった任安楽の弟・帝燼言本人でした。しかし韓燁は、その重大な事実を誰にも明かすことなく、殺人者として投獄されてしまいます。
都を去る準備をしていた任安楽は、韓燁投獄の報せに言葉を失い、安寧(あんねい)公主と共に刑部へと駆けつけるのでした。
『安楽伝』第29話の感想
帝家軍の名誉回復という長年の悲願が達成された安堵感から一転、物語は凄まじい速度で新たな悲劇へと転落していきました。穏やかな誓いの場面から、血なまぐさい結末まで、感情の振り幅が非常に大きい回でした。特に印象的だったのは、韓燁の決断です。彼はただ正義感が強いだけでなく、愛する者の弟(と知らずとも大切な存在)を守るため、自らが罪人となる道を選びました。その苦悩と覚悟を思うと、胸が締め付けられます。一方で、ようやく故郷へ帰れるはずだった任安楽が、再び都の渦中に引き戻される運命の皮肉さ。彼女が韓燁のために何を選択するのか、そして洛銘西がどう動くのか、今後の展開から目が離せません。
つづく