あらすじ
親友である左丞相を殺害した罪で、皇太子の韓燁(かんよう)が投獄されるという衝撃的な事件が発生。妹の安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)が面会に訪れるも、韓燁は固く口を閉ざし、真相は闇の中へと葬られようとしていました。一方、任安楽(じんあんらく)と洛銘西は、時を同じくして起きた韓燁の側近・溫朔 (おんさく)の失踪事件を手がかりに、事件の裏に潜む巨大な陰謀を察知します。偽造された令牌、北秦の影、そして次々と明らかになる衝撃の事実。果たして、彼らは絶体絶命の窮地に陥った韓燁を救い出し、真の黒幕を暴くことができるのでしょうか。
ネタバレ
親友であり朝廷の重臣でもある左丞相・姜瑜(きょう ゆ)を白昼堂々斬殺した罪で、皇太子の韓燁(かんよう)は投獄されてしまいました。妹の安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)が牢を訪れ、必死に理由を問いただしますが、韓燁(かんよう)は固く口を閉ざしたまま。「皇家に生まれたからには、どうにもならぬこともある」とだけ告げ、安寧(あんねい)をこれ以上巻き込むまいと突き放します。
その頃、故郷の靖南へ戻るはずだった任安楽(じんあんらく)は、韓燁(かんよう)の事件を受けて都に留まることを決意。配下の苑書(えんしょ)に左相(さしょう)府を調査させたところ、偽造された梅花内衛(皇帝直属の親衛隊)の令牌が見つかります。一方、刑部尚書の洛銘西(らくめいせい)は、韓燁の側近である溫朔(おんさく)が丸一日行方不明になっていることを知り、韓燁の事件と溫朔の失踪が繋がっていると確信。すべては任安楽(じんあんらく)をも巻き込む巨大な陰謀の一部ではないかと推理します。
そんな中、任安楽(じんあんらく)の侍女である苑琴(えん きん)が、安楽には内緒で洛銘西のもとを訪れます。彼女は、かつて五柳街で溫朔が韓燁を救ったという話は実は逆で、韓燁が身を挺して溫朔を救ったのだと衝撃の事実を告白。主である任安楽を都の騒動から遠ざけたい一心からの行動でした。洛銘西はその意を汲み、必ず安楽を靖南へ帰すと約束します。
時を同じくして、柴房に監禁されていた溫朔は、かつて韓燁から教わった「窮地にあっても活路を見出せ」という言葉を胸に、決死の脱出を試みていました。やがて琳琅(りんろう)の調査により、五柳街の件は韓燁が仕組んだものであり、溫朔が彼にとって非常に重要な存在であることが判明します。
事態は朝廷をも揺るがします。韓燁が帝家と結託して謀反を企てたという噂が広まり、弾劾を求める声が日増しに高まっていました。洛銘西は、任安楽に「お前は手を出すな。俺が解決する」と告げ、単身で真相究明に乗り出します。
洛銘西はまず、除夕の夜や化缘山での暗殺事件がすべて姜瑜(きょう ゆ)の計画だったという証拠を皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)に突きつけます。しかし、朝臣たちの意見は真っ二つに割れ、依然として韓燁への風当たりは強いままでした。次に洛銘西は、偽の帝家の娘である帝承恩(ていしょうおん)に接触し、彼女の本当の出自を教えることを交換条件に、知っている情報をすべて話すよう迫ります。
同じ頃、任安楽も独自の調査で、かつて姜瑜(きょう ゆ)が太子妃選びの際に北秦の公主を推薦していたことを突き止め、彼と北秦との繋がりを疑っていました。
その夜、ついに縄を断ち切り脱出した溫朔が、満身創痍で任安楽の屋敷に転がり込んできます。彼を誘拐した犯人たちの顔は見ていないものの、その装束が梅花内衛と瓜二つだったと証言。黒幕が左相(さしょう)府にいることは、もはや疑いようもありませんでした。
溫朔の証言を得た洛銘西は、すぐさま左相府を家宅捜索。そこで、姜瑜が北秦と通じ、大靖の情報を流していた決定的な証拠を発見します。驚くべきことに、姜瑜の生母は北秦人だったのです。すべての罪証が皇帝に提出され、事の真相が明らかになりました。姜瑜は北秦と結託して大靖を混乱に陥れようとした売国奴であり、韓燁の行動は国賊を討つための正義の行いだったのです。韓仲遠は即刻、韓燁の釈放を命じました。
事件の裏で、北秦の密偵である冷北(冷北 (れい ほく))は、計画が露見したことを本国に伝え、西北での軍事行動を早めるよう指示を出します。
無事に牢から出た韓燁の姿を見て、任安楽は心の底から安堵します。洛銘西は、聖旨一枚で帝家の孤女(任安楽)の命を救い、さらには死んだはずのその弟・帝烬言(ていじんげん)を溫朔と名乗らせてそばに置き続けた韓燁の胆力と深い愛情に、敬服の念を抱かずにはいられませんでした。
後日、溫朔は韓燁の出所祝いの宴を開きます。韓燁は、いずれ必ず帝烬言を姉である任安楽のもとへ返すと、心に誓うのでした。しかし、洛銘西は溫朔の正体をまだ任安楽に告げられずにいます。韓燁が彼女のためにこれほど尽くしていたと知れば、それが二人の関係の足枷になるかもしれない、という彼の密かな私心からでした。
一方、安寧公主(あんねいこうしゅ)は西北へ戻る準備を進めながら、自身の周囲に北秦の間者がいる可能性を警戒し、冷北に徹底調査を命じます。その冷北は、左相府の件で不安がる妹の莫霜(ばくそう)に対し、必ず守り抜くと約束するのでした。
『安楽伝』第30話の感想
今回は、張り巡らされた伏線が一気に回収される、見事な謎解き回でした。ただ心優しく誠実なだけだと思っていた韓燁が、実は誰よりも深く、遠くまで見据えていたことに驚かされます。彼が帝家のために、そして任安楽ただ一人のために、どれほど重い覚悟を背負い、緻密な策を巡らせていたのか。その深謀遠慮と一途な想いが明らかになり、胸が締め付けられるようでした。一方で、すべての真相に気づきながらも、安楽を想うがゆえに真実を告げられない洛銘西の苦悩もまた、物語に影を落としています。それぞれの正義と愛が複雑に絡み合い、登場人物たちの人間的な魅力が一層際立った回だったと感じます。
つづく