あらすじ
絶体絶命の馮膺(ふうよう)を救うため、荀ク(じゅんく)は危険な脱出計画を実行に移す。鍵を握るのは、謎多き楽伎・柳瑩(りゅうえい)と、敵か味方か分からない高堂秉(どうへい)。一方、五仙道に潜入する陳恭(ちんきょう)は、蜀の軍事機密を狙う計画の全貌を知り、危機感を募らせる。その頃、都・成都では、李厳(りげん)と楊儀(ようぎ)による権力闘争が激化。南鄭から放たれた馮膺という一本の矢は、やがて蜀の諜報機関、そして国全体の運命をも揺るがす大きな波乱を巻き起こすことになる。
ネタバレ
馮膺(ふうよう)、決死の脱出劇!
前回、完全に追い詰められた馮膺(ふうよう)。彼を救うため、荀ク(じゅんく)が動きます。彼が頼ったのは、なんとあの食えない男、高堂秉(どうへい)でした。実は高堂秉、陰輯(いんしゅう)のスパイとして荀ク(じゅんく)の動向を探っていたのですが、ここで驚きの決断をします。彼は荀ク(じゅんく)の頼みを聞き入れ、馮膺の脱出に協力することに!勝ち馬を見極める嗅覚が、とんでもなく鋭い男ですね。
計画の鍵を握るのは、紫煙閣の歌姫・柳瑩(りゅうえい)。彼女が軍への慰問で城外へ出る機会を利用し、その馬車に馮膺を隠すという大胆な作戦です。荀ク(じゅんく)は柳瑩(りゅうえい)から贈られた竹笛を高堂秉に託し、協力を取り付けます。
城門では陰輯が自ら厳しい検問を行っていましたが、慰問に向かう歌姫の一行ということで警戒が緩みます。柳瑩(りゅうえい)の冷静沈着な振る舞いと、遠くから見守る荀ク(じゅんく)の微笑み。このシーン、しびれましたね!こうして馮膺は、見事南鄭から脱出することに成功します。
逆襲の舞台は成都へ!李厳(りげん)との密会
しかし、馮膺はただ逃げたわけではありませんでした。彼が向かった先は、なんと成都。そして深夜、あの李厳(りげん)の屋敷の門を叩くのです!これには驚きました。
馮膺は懐から、自身の無実を証明する馬盛(ばせい)の遺書を取り出します。しかし、彼はこれを自分の保身のためだけには使いません。「この証拠がもし楊儀(ようぎ)の手に渡れば、長年あなたが築き上げてきたものが水泡に帰すでしょう」と李厳(りげん)に揺さぶりをかけます。
さらに、楊儀が五仙道の報告を意図的に握りつぶしていたという決定的な証拠を「手土産」として差し出し、李厳の派閥に協力すると申し出るのです。有能な人材を求めていた李厳は、この馮膺の申し出を大いに歓迎。ここに、恐るべきタッグが誕生してしまいました。
吹き荒れる権力の嵐
馮膺が投じた一石は、朝廷に大きな波紋を広げます。李厳派は、馮膺から得た証拠を元に楊儀を猛烈に弾劾。楊儀は、李厳派に利用されることを恐れて報告を遅らせたと弁明しますが、主君である諸葛亮(しょかつりょう)からは「器が小さすぎる」と一蹴され、あえなく庶民に落とされてしまいます。諸葛亮も内心は辛かったでしょうが、国を揺るがす事態に私情は挟めなかったのですね…。
一方で、この機に乗じて楊儀を陥れようとした李バク(りばく)も、結局は李厳に利用されただけでした。彼は五仙道討伐という名誉ある任務を与えられますが、その裏では馮膺が「討伐に向かう道中で始末するように」と高堂秉に冷酷な命令を下していました。一度権力の座に返り咲いた馮膺の、非情なまでの策略家ぶりにはゾッとさせられます。
それぞれの戦場
その頃、五仙道に潜入中の陳恭(ちんきょう)は、蜀の軍事設計図を盗み出す計画が着々と進んでいることを知ります。そんな中、協力者である翟悅(たくえつ)と接触。彼女から、黄預(こうよ)の部屋で見つけたという「燭龍(しょくりゅう)」からの密書を託されます。この情報が、今後の鍵を握ることになりそうです。
そして、物語の序盤で陳恭の親友であり好敵手だった郭剛(かくごう)は、陳恭の正体を知ったことで官職を剥奪され、長安へ護送されることに。去り際に、かつて陳恭と鞠(まり)を蹴り合った日々を思い返すシーンは、あまりにも切なかったですね…。
『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第10話の感想
今回は、一度は地に落ちたかに見えた馮膺が見事な策略で返り咲く過程が圧巻でした。しかし、その裏で切り捨てられる者たちの姿も描かれ、権力闘争の厳しさと非情さを改めて感じさせられます。正義とは何か、誰が味方で誰が敵なのか、一瞬たりとも目が離せない展開でした。それぞれのキャラクターが持つ思惑が複雑に絡み合い、物語に深い奥行きを与えています。特に、馮膺と李厳が腹を探り合いながら手を組むシーンは、言葉の裏にある緊張感にしびれましたね。ただのスパイアクションではなく、重厚な人間ドラマとしての魅力が凝縮された一話だったと思います。
つづく