あらすじ

同僚殺害と機密漏洩の容疑で捕らえられた上司・馮膺(ふうよう)。その逮捕に疑問を抱いた荀ク(じゅんく)は、独自の捜査で事件の裏に潜む大きな陰謀に気づき始めます。一方、敵の懐深くに潜入した陳恭(ちんきょう)は、同じく間諜として活動する妻・翟悅(たくえつ)と危険な再会を果たし、謎のスパイ「燭龍(しょくりゅう)」の正体に迫るための協力を誓います。蜀漢の諜報機関内部で繰り広げられる捜査と、五仙道での緊迫した潜入任務。二つの場所で進む物語が交錯し、ついに馮膺が大胆な行動に出ます。

ネタバレ

絡み合う陰謀、暴かれる真相

前回、司聞曹(しぶんそう)の曹掾(そうえん)・馮膺(ふうよう)が、同僚殺害と機密の木版盗難の容疑で捕らえられるという衝撃の展開で幕を閉じました。第9話では、この事件の裏に隠された、さらに大きな陰謀の存在が明らかになっていきます。

荀ク(じゅんく)の執念、殺害事件の真相に迫る

馮膺(ふうよう)逮捕に納得がいかない荀ク(じゅんく)は、独自の捜査を開始します。被害者の廖会(りょうかい)が一撃で殺されていることから、顔見知りの犯行だと推理。そんな中、事件当日に起きた土砂崩れで道が寸断されていたという情報を掴みます。これにより、休暇で故郷に帰っていたはずの同僚・馬盛(ばせい)のアリバイが崩れました。

荀クが馬盛の家へ踏み込むと、そこにはすでに息絶えた彼の姿が。しかし、馬盛は死の間際に、事件の真相を記した木箱を遺していました。それによると、一連の事件はすべて、馮膺を失脚させたい李バク(りばく)が仕組んだ罠だったのです。李バク(りばく)は荀クを利用して木版を外に持ち出させ、馬盛にそれを盗ませて廖会(りょうかい)を殺害し、すべての罪を馮膺になすりつけようとしていたのでした。スパイを探すはずの事件が、いつの間にか蜀漢内部の醜い権力闘争へと姿を変えていたのです。

陳恭(ちんきょう)と翟悅(たくえつ)、危険な再会と夫婦の絆

一方、五仙道(ごせんどう)に潜入中の陳恭(ちんきょう)は、そこで聖女となっていた妻・翟悅(たくえつ)とつかの間の再会を果たします。先日の宴が、自分を試すための罠であったこと、そしてそれを救ってくれたのが翟悅(たくえつ)の機転であったことを知る陳恭。二人は、敵地の中枢で、夫婦でありながら素性を隠し、視線だけで心を通わせます。

陳恭は、自分が蜀漢のスパイ「白帝(はくてい)」であること、そして司聞曹内部に潜む魏のスパイ「燭龍(しょくりゅう)」を捕らえるために、荀クと二人だけの危険な任務についていることを打ち明けます。翟悅は夫の覚悟を受け止め、燭龍に関する情報を手に入れることを約束。陳恭が肌身離さず持っていたお守りを翟悅に見せると、彼女は静かに微笑むのでした。長く離れていても、二人の絆が色褪せることはありません。

敵か味方か?馮膺、脱獄す

荀クは獄中の馮膺に面会し、馬盛が遺した証拠を突きつけ、事件の真相を伝えます。そして、白帝の汚名をそそぐため、馮膺に協力を要請。最初は荀クを警戒していた馮膺ですが、彼の目的がただ真実の解明にあると知り、手を組むことを決意します。

荀クは馮膺を成都へ逃がし、李厳(りげん)将軍に直訴させる計画を立てますが、馮膺はそれを拒否。二人は、さらに大胆な計画を練り始めます。

その頃、陳恭は、燭龍からの情報が記された竹簡を探すよう翟悅に合図。翟悅は危険を冒して黄預(こうよ)の部屋に忍び込み、燃え残った竹簡の欠片を手に入れることに成功します。

そして物語の最後、李バク(りばく)のもとに衝撃的な知らせが舞い込みます。なんと、馮膺が牢から脱獄したというのです。激怒し、慌てふためく李バク(りばく)。荀クはとぼけて追及をかわしますが、この脱獄劇が、すべての登場人物の運命を大きく揺るがしていくことになります。

『風起隴西-SPY of Three Kingdoms-』第9話の感想

今回は、南鄭(なんてい)で進む荀クの捜査、五仙道での陳恭の潜入、そして朝廷での権力争いという三つの物語が、見事に絡み合いながら進んでいく構成が秀逸でした。特に、単なる同僚殺しの犯人捜しが、李バク(りばく)による巧妙な罠だったと判明するくだりは、物語の深さを感じさせます。

また、これまで敵対関係にあると思われた荀クと馮膺が、共通の目的のために手を組む展開は、今後の予測をますます難しくさせます。誰が本当の敵で、誰が味方なのか。その境界線が曖昧になっていくスリルがたまりません。陳恭と翟悅の、言葉を交わさずとも通じ合う夫婦の絆には、切なさと同時に強い意志が感じられ、胸を打たれました。それぞれの場所で進む点と点が、やがて一本の線として繋がっていくであろうことを予感させる、見事な一話だったと思います。

つづく