あらすじ

魏の五仙道に潜入する陳恭(ちんきょう)は、蜀の軍事機密である弩機の図面を盗み出す危険な任務に就く。一方、親友の陳恭を救出するため、司聞曹の荀ク(じゅんく)もまた大きなリスクを冒して単独行動を開始する。それぞれの思惑が交錯する中、二人は定軍山の要塞で、互いの存在を信じながら困難な作戦に挑む。緊迫した潜入劇の裏では、上司の馮膺(ふうよう)が李厳(りげん)将軍に取り入るため、別の策略を進めていた。一つの任務が、彼らの運命を大きく左右していく。

ネタバレ

裏切りと信頼の狭間で

五仙道(ごせんどう)に潜入中の陳恭(ちんきょう)。しかし、リーダーの黄預(こうよ)の疑いは晴れていません。「白帝(はくてい)」である陳恭(ちんきょう)の監視役として、関長老(かんちょうろう)がぴったりとマークします。隙あらば殺せ、という非情な命令を受けている関長老は、さっそく蜀の伝達手段である「竹雀(ちくじゃく)」について探りを入れてきますが、陳恭は「自分は実行役で仕組みは知らない」と巧みにかわします。このヒリヒリするようなやり取り、たまりませんね!

一方、親友を救うため、荀ク(じゅんく)は危険な賭けに出ます。同僚の裴緒(はいしょ)に自分の身代わりを頼み、偽の軍令書を手に、弩機(どき)の図面が保管されている定軍山(ていぐんさん)の要塞「総成部」へと単身潜入するのです。「もし俺に何かあったら、靖安司(せいあんし)を頼む」。そう言い残す荀ク(じゅんく)の覚悟に、胸が締め付けられます。

交錯する二つの潜入作戦

作戦は夜。黄預(こうよ)が手筈通りに陽動の火事を起こし、その隙に陳恭は五仙道の教徒たちと総成部へ忍び込みます。時を同じくして、荀ク(じゅんく)もまた崖をよじ登り、裏口から主記室へ。陳恭が脱出できるよう、あらかじめ鍵を開けておくためです。

陳恭は見事に図面を盗み出すことに成功!しかし、蜀軍がすぐさま反撃に転じ、事態は一変します。五仙道の仲間たちが命を懸けて時間を稼ぐ中、陳恭は監視役の関長老と共に脱出ルートへ。そして、約束の場所である崖で、ついに背後から関長老を刺殺!

これで自由の身かと思いきや、関長老は最後の力を振り絞り、崖から身を投げることで黄預に「裏切り者がいる」という警告を残したのでした。執念がすごい…。

それでも、陳恭は荀ク(じゅんく)が待つはずの合流地点へ向かいます。ドアノブに手をかけると、鍵は開いている…。友の仕事ぶりに、陳恭の胸に熱いものがこみ上げたことでしょう。

分かれた運命

しかし、その友・荀ク(じゅんく)は絶体絶命の窮地に陥っていました。図面盗難で総成部は完全封鎖。荀ク(じゅんく)は脱出できず、譙峻(チャオジュン)校尉に捕らえられてしまいます。馮膺(ふうよう)の命令で来たと嘘をつきますが、合言葉を知らないため、あっけなく見破られてしまうのです。時を同じくして、靖安司でも荀ク(じゅんく)の身代わりがバレてしまい、万事休す。

責任を問われることを恐れた譙峻は、荀ク(じゅんく)に非情な拷問を命じます。すべては国のため、友のため。荀ク(じゅんく)は真実を話すわけにはいかず、ただ耐えるしかありません。

その頃、二人の上司である馮膺(ふうよう)は何をしていたかというと…なんと、李厳(りげん)将軍に取り入るため、柳瑩(りゅうえい)を屋敷に送り込んでいました。柳瑩(りゅうえい)が奏でる琴の音に、李厳(りげん)は亡き先帝を思い出し感涙。馮膺はすかさず柳瑩を李厳に献上し、自らの権力基盤を固めるのでした。この男、本当に食えません。

そして物語のラスト。拷問を受ける荀ク(じゅんく)とは対照的に、陳恭は盗み出した図面を指定の場所に置き、蜀漢に潜む魏のスパイのトップ「燭龍(しょくりゅう)」が現れるのを静かに待っているのでした。

『風起隴西-SPY of Three Kingdoms-』第14話の感想

今回のエピソードは、陳恭と荀ク(じゅんく)という二人の親友が辿る、あまりにも対照的な道筋が心に深く刻まれました。一方は危険な任務を成し遂げ光の中へ、もう一方は友を助けたがために捕らえられ闇の中へ。この非情なコントラストこそが、スパイという存在の過酷さを浮き彫りにしています。特に、荀ク(じゅんく)が捕らえられ、真実を語れずに拷問を受ける場面は、彼の忠誠心と友情の深さを痛感させられました。一方で、馮膺が自身の目的のために冷静に駒を進める姿は、この物語の複雑さを象徴しています。誰が正義で誰が悪か、単純には割り切れない人間ドラマの深みがあり、見応えのある回でした。それぞれのキャラクターが背負うものの重さが、ひしひしと伝わってきます。

つづく