あらすじ

長らく蜀漢を脅かしてきた魏のスパイ「燭龍(しょくりゅう)」を捕らえるため、陳恭(ちんきょう)と荀ク(じゅんく)は危険な罠を仕掛ける。見事、計画は成功し燭龍を追い詰めるが、その代償はあまりにも大きかった。多くの犠牲を払いながらも、ようやく帰還を果たした陳恭。しかし、彼を待ち受けていたのは悲しい知らせと、蜀漢内部の新たな権力争いの渦だった。一つの事件が解決したかに見えたが、すぐに次なる謎と、味方の中に潜むかもしれない巨大な陰謀の影が浮かび上がる。

ネタバレ

ついに、蜀漢を内部から蝕んでいたスパイ「燭龍(しょくりゅう)」を捕らえる時が来ました! 第15話は、息もつかせぬ罠の応酬と、悲しい別れ、そして新たな疑惑が渦巻く、まさに物語の転換点となる回でした。

燭龍、捕わる!しかし払った代償はあまりに大きい

食糧の検分を装い、まんまと軍技司の重要拠点に潜入した高堂秉(どうへい)。彼こそが、長らく司聞曹を欺いてきた魏のスパイ「燭龍」でした。約束の場所で連弩(れんど)の設計図を手に入れようとしたその瞬間、木の上から躍り出たのは、死んだはずの陳恭(ちんきょう)!激しい格闘の末、ついに燭龍は捕らえられます。

しかし、この作戦の裏では、陳恭の義兄弟である荀ク(じゅんく)が、とてつもない犠牲を払っていました。彼はおとりとしてわざと捕まり、設計図窃盗の容疑者として激しい拷問を受けていたのです。馮膺(ふうよう)と孫令(そん れい)が駆けつけ、陳恭が生きて燭龍を捕らえたことを説明し、ようやく荀ク(じゅんく)は解放されますが、その体は血まみれで、虫の息でした。瀕死の荀ク(じゅんく)を担架で運び出す陳恭の心中は、いかばかりだったでしょうか。

悲しみの再会と、復讐の誓い

荀ク(じゅんく)は名医の治療でかろうじて一命をとりとめます。しかし、彼を待っていたのは、親友・陳恭がもたらした、あまりにも残酷な知らせでした。それは、最愛の妻であり、荀ク(じゅんく)の従妹でもある翟悅(たくえつ)の死。荀ク(じゅんく)が翟悅(たくえつ)に会いに行ったことが、彼女の潜入任務を危うくし、死に追いやった遠因となってしまったのです。自分のせいだと泣き崩れ、自らを責める荀ク(じゅんく)。陳恭は、そんな友を「君のせいじゃない」と静かに慰めるのでした。

その後、陳恭は荀ク(じゅんく)と共に翟悅(たくえつ)の亡骸を埋葬します。妻の位牌の前で、陳恭は彼女から贈られた宝剣を抜き、自らの小指を切り落とすという壮絶な覚悟を見せます。そして誓うのです。「黄預(こうよ)は必ずこの剣で殺す」と。友を失い、妻を失った二人の男の絆が、悲しみと復讐の誓いによって、より固く結ばれた瞬間でした。

本当の敵は誰だ?荀ク(じゅんく)がたどり着いた驚愕の推理

一件落着かと思いきや、このドラマがそんな単純な勧善懲悪で終わるはずがありません。寝たきりの荀ク(じゅんく)は、高堂秉が残した竹簡の暗号を解読。それは、馮膺(ふうよう)が作成し軍謀司に下達した巡回口令の変更リストでした。

この発見から、荀ク(じゅんく)は恐るべき結論に達します。彼は陳恭に、燭龍事件の真の黒幕は、自分たちの上司である馮膺(ふうよう)ではないか、という疑いを打ち明けるのです。

荀ク(じゅんく)の推理はこうです。一介の軍謀司司尉である高堂秉が、外部の連絡係である谷正(こくせい)の存在を知るはずがない。さらに、五仙道から押収した黄預(こうよ)への委任状の筆跡が、馮膺の机で見たものと酷似している、と。馮膺は、蜀漢内部の権力闘争に勝つため、そして手柄を独占するために、あえて燭龍の存在を利用し、裏では魏と取引をしていたのではないか…。

味方だと思っていた人物が、実は最も恐ろしい敵かもしれない。この衝撃的な疑惑に、陳恭は「証拠がない」と友を諌め、この話を他言しないよう固く口止めするのでした。

一方で、蜀漢の重鎮・李厳(りげん)は、陳恭の帰還を誰よりも喜んでいました。かつて陳恭の父・陳黼(ちんほ)は、李厳(りげん)の身代わりとなって戦死したという過去があり、李厳(りげん)は陳恭を自分の派閥に引き入れようと画策します。諸葛亮(しょかつりょう)派と李厳派の対立も、物語にさらなる深みを与えていきます。

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第15話の感想

燭龍が捕まり、これで一安心…なんて甘い考えは、このドラマではまったく通用しませんでした。一つの大きな謎が解明されたかと思えば、それが即座に、より根深く、恐ろしい次なるミステリーの扉を開けるのですから、その構成の見事さには舌を巻きます。

特に心に残ったのは、陳恭と荀ク(じゅんく)の絆です。拷問に耐えた荀ク(じゅんく)、そして妻の死を伝えねばならなかった陳恭。二人が流す涙と、復讐を誓う姿は、この非情な諜報戦の中で唯一の光のようにも、そしてさらなる悲劇への序章のようにも見えました。

そして、荀ク(じゅんく)が突き立てた馮膺への疑惑。これまで頼れる上司に見えていた人物が、全てを裏で操る黒幕かもしれないという可能性は、物語の土台を根底から揺るがします。誰が味方で誰が敵なのか、信じてきた正義とは何だったのか。登場人物たちと同じように、視聴者もまた疑心暗鬼の渦に突き落とされます。権力闘争の闇も絡み合い、物語はさらに複雑な様相を呈してきました。

つづく