あらすじ

燭龍(しょくりゅう)が捕らえられ、事件は終結したかに見えた蜀漢。しかし、情報機関・司聞曹(しぶんそう)では責任問題が浮上し、朝廷では諸葛亮(しょかつりょう)の北伐計画を巡って李厳(りげん)との対立が激化していた。そんな中、李厳(りげん)の推挙で司聞曹に復帰した陳恭(ちんきょう)は、水面下で新たな動きを見せる。一方、敵国である魏では、捕まったスパイが計画の序章に過ぎなかったことが明かされる。真の恐るべき陰謀が、静かに蜀漢に迫っていた。

ネタバレ

いやはや、前回のラストで「燭龍(しょくりゅう)」の正体が高堂秉(どうへい)だと判明した時は、椅子から転げ落ちるかと思いましたよ!荀ク(じゅんく)の親友が、まさか蜀漢を揺るがす大物スパイだったなんて…。しかし皆さん、驚くのはまだ早かった。第16話は、その衝撃を軽々と飛び越えていく、とんでもない展開が待っていました。捕まったはずの燭龍、しかし本当の計画は、まだ始まったばかりだったのです…!

燭龍逮捕後の蜀漢、それぞれの思惑

燭龍こと高堂秉を捕らえたものの、司聞曹(しぶんそう)のトップである馮膺(ふうよう)の立場は危ういものに。部下から大物スパイを出してしまった責任は重く、李厳(りげん)将軍にどう取り入るか、必死の画策を続けています。

その一方で、丞相・諸葛亮(しょかつりょう)は再び北伐を計画しますが、李厳(りげん)を中心とする反対派の抵抗は根強く、議論は紛糾。蜀漢の国力が疲弊している今、北伐は無謀だという声が上がる中、諸葛亮は「今やらねば蜀は滅びる」と強い意志を見せます。この国のトップ2の権力闘争が、水面下でバチバチに火花を散らしているのが伝わってきますね。

そんな中、李厳(りげん)が白羽の矢を立てたのが、我らが主人公・陳恭(ちんきょう)です。師である李厳に呼び出された陳恭は、その才覚を高く評価され、なんと馮膺(ふうよう)に代わる司聞曹の次期トップ候補として推薦されることに。出世コースに乗ったかに見えますが、彼の瞳の奥には、誰も知らない色が宿っていました。

友との決別、そして新たな謎

足を引きずりながら牢獄の旧友を訪ねる荀ク(じゅんく)の姿は、見ていて胸が締め付けられました。高堂秉は「お前を巻き込むつもりはなかった」と語りますが、彼のせいで恋人の翟悅(たくえつ)は死に、荀ク(じゅんく)自身も重傷を負ったのです。友情が憎しみに変わる瞬間、二人の間には決定的な亀裂が入ってしまいました。

高堂秉は、荀ク(じゅんく)に対して情報の伝達方法などは素直に白状します。しかし、ある重要人物「谷正(こくせい)」の存在をどうやって知ったのかと問われると、ピシャリと口を閉ざしてしまうのです。「命の保証がなければ話さない」と。彼がまだ何かを隠しているのは明らか。この男、底が知れません。

明かされる「青萍計画」の真実と、もう一人のスパイ

そして、物語は魏の国へ。失脚したと思われていた郭剛(かくごう)が、叔父の郭淮(かくわい)の元へ。そこで告げられたのは、衝撃の事実でした。

「青萍計画」の真の目的は、蜀の設計図を盗むことではなかった。本当の狙いは、「燭龍」という名のスパイを、蜀の情報機関・司聞曹のトップに送り込むことだったのです。

つまり、捕まった高堂秉は、本物の「燭龍」を頂点に立たせるための、ただの捨て駒。彼が捕まることすら、計画の一部だったというわけです。恐ろしい…恐ろしすぎます、この計画!

では、その本物の「燭龍」とは一体誰なのか?

その答えは、ラストシーンで明かされます。司聞曹での地位を固めた陳恭が向かったのは、酒場「紫煙閣」。そこで彼が待っていたのは、芸妓の柳瑩(りゅうえい)。二人が交わす、竹の笛と飾りを使った合言葉…。

そう、陳恭こそが、柳瑩(りゅうえい)が待ち続けていた魏のスパイ。彼こそが、高堂秉に代わる、あるいはそれ以上の存在である新たな「燭龍」だったのです!いやあ、まさかの展開に、思わず声が出てしまいましたよ。

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第16話の感想

今回は、スパイものの真骨頂とも言える「何が真実で、誰が味方なのか」という疑心暗鬼が渦巻く回でした。特に印象的だったのは、蜀漢内部の権力闘争と、魏が仕掛けた「青萍計画」の底知れぬ恐ろしさです。個人の忠誠心や友情が、国家という巨大な歯車によっていとも簡単に踏み潰されていく様に、三国時代の非情さを改めて感じさせられました。高堂秉でさえも大きな計画の駒の一つに過ぎなかったという事実は、物語にさらなる深みを与えています。登場人物たちの心理描写が実に巧みで、重厚な人間ドラマとしても見ごたえがありました。陳恭が本性を現した今、彼の次の一手がどう蜀漢を揺るがすのか、目が離せません。

つづく