あらすじ

諸葛亮(しょかつりょう)による第二次北伐が開始される中、蜀漢の内部では不穏な動きが加速する。重臣・李厳(りげん)は、司聞曹の馮膺(ふうよう)が献上した北伐を妨害する計略を採用し、政敵である諸葛亮の失脚を狙っていた。一方、靖安司の荀ク(じゅんく)は、獄中死した高堂秉(どうへい)の事件の裏に馮膺がいると確信し、独自の調査を進める。魏に潜入した陳恭(ちんきょう)は、義兄弟である荀ク(じゅんく)を自らの手で殺害せよという、魏からの非情な密命に追い詰められていた。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語は新たな局面を迎える。

ネタバレ

いやはや、とんでもない展開になってきましたね! 蜀漢と曹魏、二つの国の諜報戦はますます激化。誰が味方で誰が敵なのか、もはや登場人物たちだけでなく、見ているこっちまで疑心暗鬼に陥ってしまいます。今回の第19話は、それぞれのキャラクターが抱える秘密と苦悩が爆発し、物語が大きく動いた回でした。

毒をもって毒を制す、馮膺(ふうよう)の恐るべき策略

物語は、あの食えない男・馮膺(ふうよう)が、蜀の重臣・李厳(りげん)に恐るべき計略を授ける場面から始まります。それは、諸葛亮(しょかつりょう)が進める第二次北伐の生命線である兵糧を断つという、まさに国を揺るがす謀反の計画でした。李厳(りげん)はこの毒のような策を採用するものの、あまりのえげつなさに馮膺(ふうよう)に対しては警戒心を隠せません。そりゃそうですよね、昨日まで諸葛亮の部下だった男が、平然と古巣を滅ぼす策を献上するのですから、その底知れぬ野心には誰だって恐怖を覚えるでしょう。

一方、その計画を隣で聞いていた我らが主人公・陳恭(ちんきょう)は、表向きは馮膺を「稀代の奇才」と褒めそやしますが、その胸中は複雑です。彼は一体、何を考えているのでしょうか。

荀ク(じゅんく)の執念、ついに掴んだ黒幕の尻尾

その頃、もう一人の主人公・荀ク(じゅんく)は、「燭龍(しょくりゅう)」事件の真相を諦めていませんでした。特に、獄中で不審な死を遂げた高堂秉(どうへい)の一件が、彼の心に引っかかっていたのです。荀ク(じゅんく)は、高堂秉を殺したのは馮膺ではないかと直感していました。そんな中、部下の裴緒(はいしょ)が、馮膺の服から牢獄の机のものと思われる木片を発見!これで決まりだ!とまではいかないものの、馮膺が黒である可能性は一気に高まりました。

荀ク(じゅんく)は義兄弟である陳恭にこの事実を打ち明け、共に馮膺を追い詰めようとしますが、この行動がさらなる悲劇を呼び込むことになるとは、まだ誰も知りませんでした。

非情なる密命、義兄弟に突きつけられた刃

舞台は変わって魏。郭淮(かくわい)は、蜀に送り込んだ切り札・陳恭の忠誠を確固たるものにするため、とんでもなく非情な命令を下します。それは、陳恭の義兄弟であり、燭龍事件を執拗に追う荀ク(じゅんく)を、陳恭自身の手で殺害せよというものでした。妻を殺し、今度は兄弟を殺せと。郭淮は陳恭を逃げ場のない状況に追い込み、完全に魏の駒として支配しようと企んでいたのです。

陳恭の元には、魏の間諜・黄預(こうよ)が現れ、荀ク(じゅんく)を暗殺するための毒矢を手渡します。故郷を裏切り、妻を失い、そして今、唯一無二の兄弟にまで刃を向けなければならない陳恭の苦悩は、察するに余りあります。

暴かれる間諜の正体、柳瑩(りゅうえい)の涙

荀ク(じゅんく)の疑いの目は、馮膺だけでなく、もう一人の人物にも向けられていました。それは、かつて自分を救い、今は李厳(りげん)の側近くに仕える謎の女性・柳瑩(りゅうえい)です。彼女が現れたタイミング、そして馮膺の逃亡を手助けした際の動きなど、どれもが訓練された間諜のものだと荀ク(じゅんく)は看破していました。

ついに荀ク(じゅんく)は柳瑩(りゅうえい)を呼び出し、彼女が魏の間諜であると突きつけます。観念した柳瑩は、あっさりとその事実を認めました。しかし、荀ク(じゅんく)への想いだけは本物だったと涙ながらに語り、捕縛される覚悟を示すのでした。

味方だと思っていた人物が次々と裏の顔を見せ、信じていた絆さえも引き裂かれようとする。まさに息もつけない展開の連続でしたね!

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第19話の感想

今回のエピソードは、登場人物それぞれの立場がより複雑に絡み合い、物語の緊張感を一気に高める回でした。特に印象的だったのは、陳恭と荀ク(じゅんく)という二人の主人公が、それぞれ異なる形で絶体絶命の窮地に立たされた点です。陳恭は「義兄弟の殺害」という非情な命令を受け、荀ク(じゅんく)は「信じていた女性の裏切り」に直面します。彼らが抱える任務と個人の感情との狭間での葛藤が、非常に巧みに描かれていました。

また、馮膺の底知れぬ策略や、柳瑩の正体判明など、複数の伏線が一気に動き出したことで、物語の奥行きが一層深まったように感じます。誰が本当の敵で、誰が本当の味方なのか。その境界線が曖昧になっていく中で、視聴者もまた登場人物たちと同じように疑心暗鬼にさせられます。派手なアクションシーンはなくとも、緻密な心理戦と先の読めない展開だけで、これほどまでに引き込まれる脚本は見事としか言いようがありません。人間ドラマとしての深みが増し、今後の展開から目が離せなくなりました。

つづく