あらすじ
荀ク(じゅんく)は、これ以上争いに巻き込むまいと柳瑩(りゅうえい)との別れを決意する。一方、陳恭(ちんきょう)は長年追い続けてきた父の死の真相を突き止めるべく、ついに上司の馮膺(ふうよう)と直接対決に臨む。そこで明かされたのは、蜀漢の歴史を揺るがすほどの、驚くべき戦略の全貌だった。その裏では、李厳(りげん)が諸葛亮(しょかつりょう)の北伐への不満から新たな陰謀を企て、馬岱(ばたい)を味方に引き入れようと画策する。蜀漢内部で様々な思惑が渦巻く中、荀ク(じゅんく)は執念の捜査の末、ついに内通者と目される大物を追い詰めるが…。
ネタバレ
今回の『風起隴西』第20話、とんでもない情報量が詰め込まれていましたね…。物語が大きく、そして静かに、しかし確実に動き出した回でした。これまで散りばめられてきた謎と伏線が、一気に繋がり始めたような感覚。早速、手に汗握る展開を振り返っていきましょう!
荀ク(じゅんく)の決別と、陳恭の問い
物語は、荀ク(じゅんく)が柳瑩(りゅうえい)に都を出るための令牌を渡す、切ないシーンから始まります。危険な争いから彼女を遠ざけたい…荀ク(じゅんく)の優しさが胸に沁みますね。柳瑩(りゅうえい)はそんな彼を強く抱きしめ、無言で去っていくのでした。もう彼女を追うな、と部下に命じる荀ク(じゅんく)の背中が、なんとも寂しげでした。
その頃、陳恭(ちんきょう)は、上司である馮膺(ふうよう)と対峙していました。テーマは、10年前に父が命を落とした戦の真相。陳恭の鋭い追及に、馮膺(ふうよう)はついに重い口を開きます。
なんと、あの戦で蜀軍の兵糧道を魏軍にわざと漏洩させ、父の部隊を見殺しにしたのは、蜀軍自身の大戦略だったというのです!当時、劉備軍は陽平関で夏侯淵とにらみ合っていました。馮膺(ふうよう)が偽の情報を流して魏軍を誘い出したことで、蜀軍は夏侯淵の首を取るという大金星を挙げ、漢中平定を成し遂げた…。つまり、陳恭の父の死は、大義のための「犠牲」だった、と。
「国家の利益と個人の生死、私は前者を選ぶ」と言い放つ馮膺。あまりにも非情な真実に、陳恭は何を思うのか…。馮膺はさらに、高堂秉(どうへい)の死も自分が仕組んだことだと認め、荀ク(じゅんく)が自分を追っていることすらお見通し。不敵な笑みを浮かべる彼からは、底知れない覚悟が感じられます。
李厳(りげん)の謀略と、馬岱の腹の内
一方、蜀漢の権力闘争も激化。李厳(りげん)は、諸葛亮(しょかつりょう)の北伐に不満たらたら。猛将・馬岱(ばたい)を宴に招き、味方に引き込もうと画策します。兄・馬超の死まで持ち出して揺さぶりをかけますが、馬岱は巧みにかわし続けます。
業を煮やした李厳(りげん)が、ついに馬岱を殺害しようと杯を投げつけようとした、その瞬間!側近の狐忠(こちゅう)が皇帝からの密詔を見せます。これを見た馬岱は一転、李厳への協力を快諾。連判状にさらさらと名を連ねるのでした。しかし、彼の目には明らかに別の光が宿っていました。この男、ただ者ではありません。李厳の誘いに乗ったフリをして、一体何を企んでいるのでしょうか。
仕掛けられた罠
荀ク(じゅんく)は、陳恭から「馮膺が占いに行く」という怪しすぎる情報を得ます。もちろん、荀ク(じゅんく)がこれを信じるはずもありません。部下からの報告で、馮膺の屋敷にスパイ(游梟)の合図があったことも判明。荀ク(じゅんく)は、これが馮膺の尻尾を掴む絶好の機会だと確信し、部隊を率いて待ち伏せします。
一方の馮膺は、まるで全てを悟っているかのよう。古い鎧を眺め、竹簡に何かを書き残し、身辺を整理しているかのような動きを見せます。そして翌朝、彼は一人、赤岩峰へと向かうのでした。
山から下りてきた馮膺の前に、ついに荀ク(じゅんく)が立ちはだかります。「馮膺、貴様を曹魏との内通容疑で逮捕する!」
執念の捜査の末、ついに黒幕を追い詰めた荀ク(じゅんく)。しかし、あまりにも馮膺の動きが「捕まるため」のもののようで、不気味な予感が拭えません。これは本当に荀ク(じゅんく)の勝利なのでしょうか?それとも、これもまた馮膺の描いた巨大な謀略の一端に過ぎないのでしょうか…?
『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第20話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの「覚悟」が際立つ、非常に重厚な回でした。特に馮膺というキャラクターの深みには、改めて感嘆させられます。彼は単なる私利私欲に走る悪役ではなく、「蜀漢」という国家を守るためなら、いかなる非情な手段も厭わないという強固な信念を持っています。陳恭の父の死の真相が、個人の悲劇であると同時に、国家を勝利に導いた戦略の一部であったという事実は、この物語の持つ複雑さと奥行きを象徴しているようでした。個人の情と国家の大義、どちらが優先されるべきかという、普遍的で重い問いを突きつけられた気分です。また、李厳と馬岱の腹の探り合いも、息をのむような緊張感がありました。百戦錬磨の将軍たちの、言葉の裏に隠された心理戦は見応え抜群です。物語の縦軸である諜報戦と、横軸である権力闘争が巧みに絡み合い、いよいよ最終局面に向けて物語が大きく動き出したことを感じさせます。
つづく