あらすじ

蜀漢のスパイ「白帝(はくてい)」こと陳恭(ちんきょう)は、味方からも裏切りを疑われ、絶体絶命の窮地に立たされます。全ての証拠を失い、進退窮まった彼は、誰もが不可能と考える大胆な計画を立案。それは、敵将である郭剛(かくごう)を利用して活路を見出すという危険な賭けでした。一方、蜀の諜報機関・司聞曹では内部の権力闘争が激化し、陳恭の味方もまた苦しい立場に追いやられます。敵味方の思惑が渦巻く中、陳恭の起死回生を懸けた作戦が、静かに幕を開けようとしていました。

ネタバレ

絶体絶命!追い詰められる陳恭と馮膺(ふうよう)

蜀漢の諜報機関・司聞曹(しぶんそう)では、李厳(りげん)派の狐忠(こちゅう)による厳しい尋問が続いていました。荀ク(じゅんく)の親友である高堂秉(どうへい)も呼び出され、ピリピリしたムード。もちろん、司聞曹のトップである馮膺(ふうよう)も例外ではありません。しかし、そこは百戦錬磨の古狸。荀ク(じゅんく)を天水に送った理由を完璧に粉飾し、狐忠の誘導尋問を巧みにかわします。さすがの手腕ですね。

一方、魏の天水では、糜冲(びちゅう)が蜀のスパイ「游梟(ゆうきょう)」の捜索に血眼になっていました。彼は、陳恭(ちんきょう)が怪しいと確信を深めています。

そんな中、陳恭は荀ク(じゅんく)から衝撃の事実を知らされます。死んだ連絡係の谷正(こくせい)には、「赤帝(せきてい)」という別の部下がいたというのです。しかし、「赤帝」なんてコードネームは司聞曹の記録には存在しない…。これは、司聞曹内部にいる魏のスパイ「燭龍(しょくりゅう)」が、自らの権限で捏造した架空の存在だと二人は結論付けます。しかし、谷正は死亡し、証拠は何もない。街亭での敗戦の責任を負わされ、裏切り者の汚名を着せられた陳恭は、完全に手詰まり状態。まさに絶体絶命です。

驚天動地の逆転策「郭剛(かくごう)、拉致っちゃう?」

蜀では、李厳(りげん)が馮膺(ふうよう)を留任させる代わりに、自分の息のかかった李バク(りばく)を副官として送り込むことを決定。司聞曹内の権力争いは、ますますきな臭くなっていきます。

このままでは無実の罪で殺される…。追い詰められた陳恭が思いついたのは、誰もが耳を疑うようなとんでもない計画でした。

「燭龍の情報を知る郭剛(かくごう)を、蜀に拉致する!」

これには親友の荀ク(じゅんく)も「正気か!?」と猛反対。敵地のど真ん中から、敵将をどうやって連れ去るというのか。無謀にもほどがあります。

しかし、陳恭は本気でした。彼には切り札があったのです。それは、郭剛(かくごう)に頼まれて復元していた古代の飛行装置「竹雀(ちくじゃく)」。鳥の翼のように体に装着し、高所から滑空できるという代物です。これを使えば、魏軍の追跡を振り切れるかもしれない。死を待つくらいなら、一か八かの賭けに出るしかないのです。

敵の計画が、まさかの追い風に!

ところが、話はさらに予想外の方向へ転がります。陳恭が「竹雀」の完成を報告すると、なんと郭剛も同じ「竹雀」を使って蜀に潜入し、最新兵器である連弩(れんど)「元戎(げんじゅう)」の設計図を盗む「青萍(せいへい)計画」を企てていたのです!なんという偶然…いや、必然でしょうか。

郭剛は、陳恭と、彼を疑う糜冲(びちゅう)にこの任務を命じます。そして、二人が任務で不在であることを蜀のスパイに悟られないよう、馬車の事故で死んだように見せかける偽装工作まで計画してくれました。

この敵の計画は、陳恭と荀ク(じゅんく)にとってまさに渡りに船でした。死んだことにすれば、陳恭は「白帝(はくてい)」としての身分から解放される。さらに、任務の途中で邪魔な糜冲(びちゅう)を始末し、自分が彼に成り代わることもできる。絶望的だった盤面が、一気に活路を見出した瞬間でした。二人で祝杯をあげるシーンは、見ているこちらも胸が熱くなりましたね。

さらに、陳恭にとって嬉しい知らせが。蜀での手引き役は、妻・翟悅(たくえつ)が潜入している五仙道(ごせんどう)の幹部・黄預(こうよ)。これは、愛する妻との再会の可能性を意味していました。

妻との再会を胸に秘める陳恭と、彼の正体を暴こうと目を光らせる糜冲。二人の思惑が交錯する中、危険な任務の幕が上がろうとしていました。

『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第4話の感想

絶体絶命の窮地から、まさかの大逆転への道筋が見えた、非常に見応えのある回でした。本作の真骨頂は、敵と味方の策略が複雑に絡み合い、偶然が必然に変わっていく脚本の巧みさにあると感じます。陳恭が考えた「郭剛拉致」という無謀な計画が、敵である郭剛自身の潜入計画と奇跡的にリンクする展開は、まさに圧巻の一言。死んだはずの駒が生き返り、盤面が一気にひっくり返る様は、上質なミステリーを読んでいるかのようでした。

また、郭剛が陳恭に寄せる意外なほどの信頼と、それに対して陳恭の心が揺れ動く描写も、物語に深みを与えています。スパイとしての冷徹な任務の裏で交錯する、人間同士の複雑な感情。ただのスパイアクションに終わらない、重厚な人間ドラマとしての魅力が光るエピソードだったと思います。

つづく