あらすじ
魏の将軍・郭剛(かくごう)の信頼を得た陳恭(ちんきょう)は、監視役の糜冲(びちゅう)と共に蜀へと出発する。水路での暗殺計画を立てる陳恭だが、用心深い糜冲によって阻まれ、危険な二人旅が続く。一方、天水から南鄭へ戻る荀ク(じゅんく)は、道中で山賊に襲われる謎めいた女性・柳瑩(りゅうえい)を救い、束の間の交流を持つ。その頃、蜀の諜報機関・司聞曹では新たな人事が下され、内部に不穏な空気が流れ始めていた。それぞれの場所で、新たな駆け引きの幕が上がる。
ネタバレ
陳恭、絶体絶命のピンチと計画の頓挫
さあ、蜀への潜入任務がいよいよスタート。陳恭(ちんきょう)と、彼のお目付け役である糜冲(びちゅう)の送別会が郭剛(かくごう)によって開かれます。和やかな雰囲気も束の間、いきなり「白帝(はくてい)について自白しそうな蜀兵を捕らえた」との報告が!出発直前にとんでもないトラブル発生です。
ここで陳恭を試すかのように、郭剛(かくごう)は兵士との対面を促します。内心ヒヤヒヤだったでしょうが、陳恭は動揺を見せずに承諾。しかし、引きずり出されてきた血まみれの兵士は、何も語らずに郭剛(かくごう)へ斬りかかり、あっけなく殺されてしまいます。
実はこれ、糜冲(びちゅう)が陳恭を試すために仕組んだ罠。ですが、この一件で逆に陳恭への信頼を深めてしまう郭剛。なんという皮肉!糜冲(びちゅう)の策は、結果的に陳恭の疑いを晴らす手助けとなったのでした。
翌日、商人になりすました陳恭と糜冲は、いよいよ蜀へ向けて出発。陳恭は、泳げない糜冲を船に乗せ、水難事故に見せかけて暗殺する計画を立てていました。羊皮の浮き袋まで用意し、準備は万端。しかし、超がつくほど用心深い糜冲は「水路は好かん」と、あっさり陸路を選択!陳恭の計画は、開始早々に見事なまでに頓挫してしまいます。この二人の腹の探り合い、見ているこっちの胃が痛くなりますね(笑)。
荀ク(じゅんく)、美しき楽師との出会い
一方、親友の陳恭を救うために奔走していた荀ク(じゅんく)は、天水からの帰り道で山賊に遭遇。そこで、山賊に襲われていた美しき楽師・柳瑩(りゅうえい)を救出します。
家族も仲間も失い、南鄭にいる師匠を頼るしかないという彼女。荀ク(じゅんく)はそんな柳瑩(りゅうえい)を放っておけず、南鄭まで同行することに。音楽という共通の趣味を持つ二人は、道中で静かに心を通わせていきます。夜、並んで楽器を奏でるシーンは、この殺伐とした物語の中のオアシスのようでした。
しかし、南鄭に着けば別れの時が来ます。柳瑩(りゅうえい)は荀ク(じゅんく)がただの商人ではないと察しながらも、深くは詮索しません。感謝のしるしとして、自身の竹笛を荀ク(じゅんく)に贈るのでした。名残惜しさを隠せない荀ク(じゅんく)ですが、一杯の茶を酌み交わし、二人はそれぞれの道へ。この出会いは、彼の心に何を残したのでしょうか。
蜀の内部で燻る新たな火種
その頃、蜀の諜報機関「司聞曹(しぶんそう)」では、新たな動きが。馮膺(ふうよう)の旧知である李バク(りばく)が、西曹掾として新たに着任します。一見、謙虚な人物に見えますが、彼が担当するのは五仙道(ごせんどう)という厄介な組織の問題。この五仙道、なんと曹魏と繋がりがあるらしく、今後の大きな脅威となりそうな不穏な空気が漂います。
そして、司聞曹に戻った荀ク(じゅんく)は、上司の馮膺(ふうよう)に衝撃の報告をします。「陳恭と糜冲は、馬車の事故で死んだ」と。もちろん、これは陳恭を逃がすための真っ赤な嘘。馮膺(ふうよう)は荀ク(じゅんく)の報告を深く追及することなく、労いの言葉をかけるだけ。この腹の中が読めない上司、相変わらず不気味です…。
旅を続ける陳恭と糜冲。宿屋で陳恭が小僧に何かを頼む姿を見て、糜冲はすかさず探りを入れます。陳恭が天水の酒楼に手紙を送ろうとしていると知った糜冲は、彼を「下賤なやつだ」と罵るのでした。これもまた、陳恭が仕掛けた罠なのでしょうか。二人の息詰まる心理戦は、まだまだ続きます。
『風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-』第5話の感想
陳恭と糜冲の、一瞬たりとも気が抜けない緊張感に満ちた道中には、見ているこちらも固唾を呑みました。水上での暗殺計画が頓挫し、陸路での探り合いが続く展開は、静かながらも心理的な駆け引きの密度が非常に高いです。一方で、荀ク(じゅんく)と柳瑩の出会いの場面は、この重厚な物語における一服の清涼剤のように感じられました。しかし、この束の間のロマンスでさえ、今後の大きな策略に絡んでくるのではないかと予感させ、切なさを増幅させます。蜀の内部でも新たな権力争いの火種が燻り始め、敵は外だけでなく内にもいるという構図がより鮮明になりました。派手なアクションはなくとも、物語が大きく動くための土台が着々と築かれていく、そんな重厚な一話でした。
つづく