あらすじ
蜀の諜報機関・司聞曹に戻った荀ク(じゅんく)は、新任の上官・李バク(りばく)から、組織内部に潜む魏のスパイ「燭龍(しょくりゅう)」を秘密裏に調査せよとの特命を受ける。一方、蜀の国境では、裏切り者「白帝(はくてい)」の追跡劇が衝撃的な結末を迎える。白帝事件の幕引きを図りたい馮膺(ふうよう)と、それを政争に利用しようとする李バク(りばく)の思惑が交錯し、荀ク(じゅんく)は板挟みとなる。時を同じくして、死んだはずの男が新たな身分を得て、危険な潜入任務を開始する。蜀漢内部の権力闘争と、魏が仕掛けるもう一つの計画「青萍計画」の影が、物語をさらに複雑にしていく。
ネタバレ
第6話は、陳恭(ちんきょう)と、彼を執拗に疑う魏の間軍司・糜冲(びちゅう)が蜀の国境・陽平関にたどり着くところから始まります。もう逃げ場はないかと思われたその瞬間、陳恭が動きました。
なんと、糜冲に向かって「陳主簿!」と大声で呼びかけ、白帝(はくてい)の証である玉環を投げ渡したのです!糜冲が「白帝」だと蜀兵に誤認させ、その隙に自分は逃亡するという、まさに捨て身の策。哀れなのは糜冲です。彼は陳恭こそが白帝だと気づきますが時すでに遅く、蜀兵に囲まれ、抵抗むなしく命を落としてしまいました。これにより、公式には「白帝は死んだ」ことになり、陳恭は「金蝉脱殻」の計を成功させたのです。
一方、舞台は蜀の諜報機関・司聞曹へ。
南鄭に戻った荀ク(じゅんく)は、上司の馮膺(ふうよう)を飛び越え、新任の西曹掾・李バク(りばく)に直接報告をします。司聞曹内部に「燭龍(しょくりゅう)」という魏のスパイが潜んでおり、偽の密偵「赤帝(せきてい)」の名を使って情報を流していた、と。荀ク(じゅんく)の報告を受けた李バク(りばく)は、彼を靖安司の司尉に昇進させ、極秘に「燭龍」の調査を進めるよう命じます。
しかし、この荀ク(じゅんく)の行動が、新たな波紋を広げます。
馮膺は北伐失敗の責任問題を早く終わらせるため、「白帝」の件を早急に幕引きしたいと考えていました。ところが、会議の場で李バク(りばく)が「燭龍」と「赤帝」の存在を暴露。これは、馮膺を疑う荀ク(じゅんく)が彼には伏せていた情報でした。自分の知らないところで話が進んでいたことに、馮膺は平静を装いつつも内心穏やかではありません。そして、政敵である李厳(りげん)派の李バク(りばく)に利用された形となった荀ク(じゅんく)は、苦しい立場に追い込まれます。
疑心暗鬼が渦巻く中、荀ク(じゅんく)は義兄弟である陳恭の計画を信じ、独自に調査を進めます。陳恭が死を偽装して魏のスパイ組織「五仙道」に潜入し、そこから「燭龍」を追うという壮大な計画。もし陳恭が無実なら、「燭龍」は司聞曹の内部、それも機密の印版に触れられる人物…馮膺の義弟である孫令(そん れい)が最も怪しいと荀ク(じゅんく)は睨みます。
その頃、見事に逃げ延びた陳恭は、農民に変装して五仙道との接触に成功。泥を洗い流し、殺された糜冲になりすました彼は、五仙道の幹部である黄預(こうよ)との面会を要求します。
蜀漢内部では権力闘争が激化し、陳恭は敵地で新たな任務を開始する。二つの戦場で、物語はますます複雑に絡み合っていきます。ラスト、李バク(りばく)が司聞曹の陰輯(いんしゅう)の家を訪れるシーンは、次なる謀略を予感させて不気味でしたね。
『風起隴西-SPY of Three Kingdoms-』第6話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの置かれた状況と心理描写が非常に巧みで、見応えがありました。陳恭が自らの死を演出し、糜冲を身代わりにする場面は、スパイの非情さと彼の覚悟が伝わってきて胸が痛みました。一方で、蜀漢に戻った荀ク(じゅんく)が、知らず知らずのうちに政争の駒とされていく様子は、見ているこちらも歯がゆい気持ちになります。誰が本当の味方で、誰が敵なのか。馮膺の腹の底も読めず、李バク(りばく)の狙いも不明瞭な中、荀ク(じゅんく)の孤立感が際立っていました。物語の主軸である「燭龍」探しに加え、弩の設計図を狙う「青萍計画」という新たな謎も提示され、サスペンスがより一層深まったように感じます。陳恭の潜入捜査も始まり、物語が新たなステージに進んだことを実感させられる、非常に密度の濃い一話でした。
つづく