逃亡した韓詠南(かん えいなん)を追い、砂漠地帯へと足を踏み入れた狄仁傑(てき じんけつ)と馬栄(ば・えい)。謎多き男・刁小官(ちょうしょうかん)に導かれ、辺境の砦「鎮西堡」にたどり着く。そこで一行は、韓詠南がすでに死亡したという衝撃の事実を知らされる。しかし、死体の状況や砦の責任者である霍懐礼(かく かいれい)の話には不審な点が多く、狄仁傑は事件の裏に隠された大きな嘘と秘密の匂いを嗅ぎ取る。砦の兵士たちが抱える闇とは一体何なのか。
「大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る」あらすじネタバレ20話
謎の案内人・刁小官(ちょうしょうかん)と砂漠の砦
前回のラスト、馬賊に襲われた狄仁傑(てき じんけつ)たち。絶体絶命かと思いきや、馬栄(ば・えい)が身を挺して守ろうとしたその瞬間、どこからともなく放たれた矢が馬賊を射抜く! 矢を放ったのは、あのミステリアスな男、刁小官(ちょうしょうかん)だ。彼の弓の腕前、尋常じゃないぜ…。官兵の助けもあってなんとか切り抜けた一行だけど、この刁小官(ちょうしょうかん)、どうにも食えない男だ。
彼はまるで何かを知っているかのように、狄仁傑(てき じんけつ)と馬栄(ば・えい)を西域の活気あふれる市場へと導くんだ。 西域の言葉を巧みに操る彼に、狄仁傑(てき じんけつ)は悲しみに暮れる老人への通訳を頼むんだけど、これがまた怪しい。刁小官は「娘を韓詠南(かん えいなん)に殺されたそうだ」なんて言うけど、どう見ても口からでまかせ。 明らかに狄仁傑たちを特定の場所へ誘導しようとしてるのが見え見えなんだよね。
そして一行は、砂漠のど真ん中にある「鎮西堡(ちんせいほう)」っていう砦にたどり着く。 ここで彼らを待っていたのは、衝撃の知らせだった。「追っていた韓詠南は、すでに死んでいる」と。
偽りの死体と兵士たちの傷
砦の責任者だという霍懐礼(かく かいれい)によると、韓詠南は疫病にかかっており、馬を盗んで逃げようとした挙句、兵士の一人・周長義(しゅう ちょうぎ)を殺害したという。 でも、狄仁傑の鋭い観察眼はごまかせない。死体は顔がひどく損傷していて、本人確認ができない状態。 しかも、霍懐礼が語る韓詠南の口調は、長安育ちの彼とは全く違う「蘭坊なまり」だった。 この時点で、狄仁傑の頭の中には「?」が飛び交っていたはずだ。
一方、頼れる姐御・馬栄(ば・えい)も砦の様子に違和感を覚えていた。兵士たちが落とした武具を拾うのを手伝った際、彼女は見てしまうんだ。兵士たちの手首に生々しく残る、無数の鞭の傷をね…。
この二つの違和感。もうお分かりだろう。そう、死んだのは韓詠南じゃない! 狄仁傑と馬栄は、この砦に渦巻く嘘と闇の匂いを嗅ぎつけるんだ。
明かされる衝撃の真相!上官殺しの反乱
二人が調査を進めると、ある小屋で本物の霍懐礼が使っていたという「連珠三節鞭」と、なんと殺されたはずの兵士・周長義の死体を発見する! いったいどういうことだ!?
その時、兵士を率いて現れたのは、今まで霍懐礼を名乗っていた男だった。狄仁傑は、静かに、しかし確信を持って言い放つ。「お前が、本物の周長義だな」と。
そう、すべては仕組まれた反乱だったんだ。本物の霍懐礼は、兵士たちを日常的に虐待し、あまつさえ周長義の弟までをも手にかけるような、まさに鬼畜上官だった。 訴え出る場所もなく、地獄のような日々を強いられた兵士たちは、ついに結託して霍懐礼を殺害。その死体を、ちょうど追われていた逃亡犯・韓詠南に偽装したってわけだ。
周長義は、涙ながらに霍懐礼の非道を訴える。彼の言葉は、法や秩序だけでは救われない者たちの悲痛な叫びだった。馬栄も「私だって、同じ立場なら奴を斬っていた」と兵士たちに深く同情する。
法か、情か…三者三様の正義がぶつかる時
ここで、このドラマの真骨頂が描かれる。
狄仁傑は、兵士たちの境遇に理解を示しつつも、唐の律法を重んじる立場から「いかなる理由があろうと上官殺しは反乱であり、国の安定を揺るがす大罪だ」と断じる。 彼の言うことは、国の役人としてはあまりに正論だ。
しかし、そのやり取りを窓の外で聞いていた刁小官は、冷ややかに言い放つ。
「あんたら役人の言う律法なんて知ったこっちゃない。人間なんて皮を一枚めくれば、みんな獣だ。ここは食うか食われるかの闘獣場。生きるために殺すか、さもなくば殺されるだけだ」と。
うわー、痺れるね!彼の言葉は、法の手が届かない辺境で生きてきた者の、あまりにリアルな哲学だ。
狄仁傑の「秩序の正義」、馬栄の「感情の正義」、そして刁小官の「生存の正義」。三者三様の正義がぶつかり合う、まさに名シーンだったよ。
悲劇のクライマックス、そして…
彼らの議論を切り裂くように、けたたましい角笛の音が鳴り響く。馬賊の大群が鎮西堡に攻め込んできたんだ!
多勢に無勢。兵士たちは次々と倒れていく。その時、周長義は狄仁傑と馬栄を解放し、こう告げるんだ。
「霍懐礼殺しは、すべて俺一人の罪だ。他の兵士たちは、国境を守り続けた忠義の者たちだ。どうか、そのことだけは軍府に伝えてほしい」と。
そう言い残し、彼は雄叫びをあげて馬賊の群れに突っ込んでいく。兵士たちも、最後の力を振り絞って戦う。血肉が飛び散り、断末魔が響き渡る地獄絵図。刁小官が必死に狄仁傑を守る中、狄仁傑はただ、目の前で繰り広げられる壮絶な光景に立ち尽くすしかなかった。 最後の兵士が倒れるまで戦い抜いた彼らの姿は、狄仁傑の心に、そして我々視聴者の心に、深い衝撃と悲しみを刻み付けたんだ…。
いやはや、今回は本当に重い回だったね。単純な悪を裁くのではなく、法では割り切れない人間の悲哀を描いてきた。この鎮西堡での悲劇は、狄仁傑の「正義」にどんな影響を与えるのか。そして、ますます謎が深まる刁小官の目的とは?
『大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る』第20話の感想
第20話は蘭坊を離れ、舞台を灼熱の砂漠へと移しました。辺境の砦で描かれたのは、法と情理の激しい衝突です。上官の非道な虐待に耐えかねた兵士たちの反乱は、同情を禁じ得ません。しかし、狄仁傑が説く「国の律法」もまた、組織を維持するためには不可欠な正義です。法で割り切れない人間の悲哀と、刁小官が語る弱肉強食の生存哲学が、物語に深い奥行きを与えていました。兵士たちの壮絶な最期は、何が真の正義なのかという重い問いを投げかけ、非常に考えさせられる内容でした。
つづく