大部隊とはぐれた蘭陵王(らんりょうおう)と雪舞(せつぶ)は、蘭陵王の思い出の場所で二人きりの夜を過ごし、互いへの想いを深める。しかし、雪舞は蘭陵王の悲劇的な未来を予知夢で見てしまい、彼を避けるようになる。一方、都では蘭陵王の凱旋を祝う宴が開かれるが、民衆の熱狂的な支持はすべて蘭陵王に向けられた。その光景を目の当たりにした皇太子・高緯(こうい)は、屈辱と激しい嫉妬から、蘭陵王に対して危険な敵意を抱き始める。
「蘭陵王」あらすじネタバレ10話
いやはや、今回の『蘭陵王(らんりょうおう)』第10話は、前半の甘いムードからの急転直下! 心が温まったかと思えば、背筋が凍るような展開で、見ているこちらの感情がぐちゃぐちゃになりましたね。それでは早速、波乱の第10話の世界に飛び込んでいきましょう!
束の間の安らぎと、逃れられない悪夢
大部隊からはぐれてしまった蘭陵王(らんりょうおう)と雪舞。夜の闇の中、蘭陵王が雪舞を連れて行ったのは、なんと彼が幼い頃に暮らしたという古い家でした。二人きりで焚き火を囲むなんて、これ以上ないくらいロマンチックなシチュエーションですよね!
普段は国の英雄として鎧をまとっている蘭陵王が、この時ばかりは一人の男性として穏やかな表情を見せるんです。「君といると、長年の戦いの疲れも忘れる」なんて、優しい瞳でささやかれて…。雪舞でなくても、これはドキッとしてしまいます。二人の間には、確かに特別な感情が芽生えていました。
しかし、幸せな時間は長くは続きません。その夜、雪舞は恐ろしい悪夢にうなされます。それは、白山(はくさん)村の祖母が見た予言そのもの。蘭陵王が血まみれで自分の腕の中で息絶える、あの衝撃的な光景でした。悲鳴をあげて飛び起きた雪舞は、冷や汗でびっしょり。駆けつけた蘭陵王の心配そうな顔を見ても、真実を告げることはできません。
「私が彼のそばにいることが、この悲劇を招くんだ…」
そう悟った雪舞の心は、絶望でいっぱいになってしまいました。夜が明けると、彼女の態度は一変。これ以上あなたの足手まといにはなれないと、一方的に別れを告げて去ろうとします。突然のことに戸惑う蘭陵王ですが、軍務が迫っており、彼女を引き留めることもできません。二人の間に、早くも悲しい壁ができてしまいました。
英雄への熱狂と、皇太子の黒い嫉妬
一方、都では蘭陵王と皇太子・高緯(こうい)の凱旋を祝う、盛大な祝賀会が開かれていました。馬に乗って都大路を進む二人。しかし、道端を埋め尽くした民衆から上がる歓声は、ただ一人に向けられていました。
「蘭陵王様!」「我らが軍神、蘭陵王!」
地響きのような喝采はすべて蘭陵王に送られ、隣にいるはずの皇太子・高緯(こうい)のことなど、まるで誰も見ていないかのよう。高緯のプライドはズタズタです。
祝宴の席でも、その状況は変わりません。群臣たちはこぞって蘭陵王に酒を注ぎ、その功績を称えます。そして、儀式の進行役が「我らが軍神、蘭陵王に敬意を!」と叫んだ瞬間、会場にいた兵士や民衆が一斉にひざまずいたのです。
この異常な光景に、蘭陵王自身が慌てて皆を制し、「この勝利は兵士たちの命と、民の支えあってこそ」と謙虚に語ります。この言葉がさらに民衆の心を掴み、熱狂は最高潮に!
その様子を、主座から冷ややかに見つめる高緯。彼は、手にした杯を怒りのあまり握りつぶしてしまいます。ガラスの破片が手のひらに食い込んでも、その痛みさえ感じないほど、彼の心は嫉妬と屈辱で燃え上がっていました。もはやそれは単なる嫉妬ではありません。明確な「殺意」へと変わっていたのです。
宴の帰り際、民衆がなおも蘭陵王の馬車を取り囲み、ひざまずいて拝む光景を城壁から目にした高緯。側近が「今日、殿下の人気を奪う者は、いずれ国を奪いますぞ」と囁くと、彼の怒りは爆発。近くの灯篭を蹴り倒し、燃え盛る炎の向こうにいる蘭陵王の姿を睨みつけ、こう命じます。
「蘭陵王府を徹底的に見張れ。…それから、楊雪舞(せつぶ) という女のことも洗いざらい調べ上げろ」
蘭陵王の輝かしい功績が、皮肉にも最も身近な人物の暗い感情を呼び覚ましてしまいました。穏やかだったはずの日常に、確実に暗殺の影が忍び寄ってきています。
『蘭陵王』第10話の感想
今回は、光と影の対比が非常に鮮烈な回でした。前半で描かれた蘭陵王と雪舞の心温まる交流は、この物語における数少ない安らぎの瞬間だったのかもしれません。蘭陵王が初めて見せる弱さや素顔に、彼の人間的な魅力が凝縮されていました。しかし、その直後に雪舞が見る悪夢が、二人の未来に暗い影を落とします。幸せの絶頂から突き落とす構成が見事でした。
後半の祝賀会は、英雄であるがゆえの悲劇を象徴する場面です。民衆からの熱狂的な支持が、結果的に皇太子・高緯の激しい嫉妬と殺意を呼び覚ましてしまう皮肉な展開には、権力の世界の恐ろしさを感じずにはいられません。高緯の歪んだ表情と、何も知らずに謙虚に振る舞う蘭陵王の姿が対照的で、見ているこちらの胸が痛みました。物語が新たな緊張感をもって動き出したことを強く印象づける、重要な一話だったと思います。
つづく