いやあ、今回の『蘭陵王(らんりょうおう)』第19話は、甘くて幸せなシーンと、背筋が凍るような恐ろしいシーンが同居していて、感情がぐちゃぐちゃになりました!幸せの絶頂にいる蘭陵王(らんりょうおう)と雪舞(せつぶ)、そして地獄から舞い戻った鄭児(ていじ)。それぞれの想いが交錯する、まさに神回でしたね。
さっそく、あらすじとネタバレを見ていきましょう!
婚礼前夜、つかの間の逃避行
いよいよ蘭陵王との結婚を明日に控え、雪舞(せつぶ)はマリッジブルーに。妃となるための厳しい宮廷のしきたりや作法に、すっかり気が滅入ってしまいます。「こんな窮屈な暮らし、私には無理…」と弱音を吐く雪舞を見て、我らがヒーロー蘭陵王が黙っているはずがありません!
「少しだけ、ここから逃げよう」
そう言って、蘭陵王は雪舞を連れて庶民の服に着替え、街へ繰り出します。そしてなんと、カゴいっぱいの卵を売り始めるのです!慣れない手つきで卵を落としそうになる雪舞と、お世辞にも上手とは言えない呼び込みをする蘭陵王。その姿は微笑ましく、見ているこちらも思わず笑顔になってしまいます。
汗水たらして働くことの尊さと、ささやかな日常の幸せ。この市場での体験は、雪舞の心をじんわりと温め、妃になる覚悟を決めさせてくれました。「帰りましょう。あなたの妻になる準備はできました」と微笑む雪舞の顔は、もう迷いに満ちた少女ではなく、愛する人を支える女性の顔でしたね。
地獄からの生還、執念の女・鄭児(ていじ)
その頃、蘭陵王と雪舞の幸せとは裏腹に、地獄の底を這いずり回っていたのが鄭児です。奴隷として鉱山で働かされていた彼女は、蘭陵王への想いだけを支えに、命がけの脱走を計画します。
その方法が、あまりにも壮絶…。腐った肉の汁を全身に塗りたくり、疫病にかかったフリをして、死体の山に捨てさせるのです。悪臭を放ち、高熱で痙攣するフリをする彼女の演技は迫真そのもの。恐れをなした看守は、まんまと彼女を死体捨て場へと放り出しました。
豪雨の夜、死体の山から這い出した鄭児は、野草を食べ、雨水をすすり、たった一人で半月もかけて都・鄴(ぎょう)を目指します。ボロボロの衣服をまとい、足は血まみれ。しかし、その瞳だけは「長恭(蘭陵王)、待っていて…」という狂気にも似た執念の炎で燃え盛っていました。
雨の夜の訪問者、招かれざる客
蘭陵王府が祝言の準備で華やぐ中、門の外で一人の女が倒れているとの知らせが。駆けつけた蘭陵王がその顔を見て絶句します。泥まみれで息も絶え絶えのその女は、変わり果てた姿の鄭児だったのです。
すぐに屋敷に運び込まれ、雪舞の懸命な看病で意識を取り戻した鄭児。目覚めるなり、床にひれ伏して泣きじゃくります。「私が愚かでした!嫉妬に目がくらみ、お二人を陥れてしまいました!どうか、このまま牛や馬としてお使いください!」と、額から血がにじむほど頭を打ち付けて謝罪するのです。
そのあまりにも痛ましい姿に、心の優しい雪舞は彼女を許し、屋敷に置くことを決めてしまいます。しかし、許しを得てうつむいた鄭児の目に宿っていたのは、感謝ではなく、冷たい光だったのでした…。
華燭の典に潜む影
そして迎えた結婚式当日。親族のいない雪舞のために、皇太后が後見人となり、温かい雰囲気の中で式は執り行われます。これまでの数々の苦難を思い出し、幸せを噛みしめて涙を流す雪舞。その手を固く握る蘭陵王。誰もが二人を祝福する中、ただ一人、鄭児だけが暗い瞳でその光景を見つめていました。
幸せそうな二人を、まるで獲物を見るかのような目で見つめる鄭児。その胸の中では、雪舞から蘭陵王を奪い取るという、新たな復讐の誓いが立てられていたのです。
『蘭陵王』第19話の感想
今回のエピソードは、甘美な幸福と底知れぬ恐怖が巧みに織り交ぜられており、物語の深みを一層感じさせる回でした。蘭陵王と雪舞が市場で卵を売るシーンは、二人の身分を超えた純粋な愛情を象徴しており、心温まる名場面だと思います。このささやかな幸せの描写があったからこそ、後半に訪れる不穏な空気がより一層際立ちました。
一方で、鄭児の生還劇は圧巻の一言です。彼女の蘭陵王への執着心は、もはや恋心というよりも狂気に近いものへと変貌を遂げています。しかし、彼女をそこまで駆り立てたのもまた「愛」なのだと思うと、単純な悪役として切り捨てられない悲しさを感じずにはいられません。雪舞の優しさが、結果的に最も危険な存在を懐に入れてしまうという皮肉な展開は、物語に緊張感を与えています。幸せの絶頂で結ばれた二人の未来に、これほど明確な暗い影が落とされたことで、今後の波乱を予感させ、目が離せない展開となりました。
つづく