心労が重なる皇帝や周囲の勧めもあり、蘭陵王(らんりょうおう)は雪舞(せつぶ)と共に一時都を離れ、穏やかな隠居生活を始める。しかし、英雄が不在となった宮廷では、皇太子・高緯(こうい)が牢から出した奸臣・祖テイ(そてい)が暗躍を開始。皇帝は宮中で次々と起こる不気味な現象に悩まされ、心身ともに追い詰められていく。蘭陵王が知らない間に、斉の国を揺るがす大きな陰謀の歯車が、静かに回り始めていた。

「蘭陵王」あらすじネタバレ29話

いやあ、第29話、来ましたね…。英雄がいない宮廷って、こんなにもあっけなく崩れてしまうものなのかと、ある意味感心し、そしてゾッとさせられる回でした。蘭陵王(らんりょうおう)と雪舞(せつぶ)の穏やかなシーンに癒されればされるほど、その裏で進むドス黒い陰謀が際立って、もう目が離せませんでした!

さて、早速ですが、蘭陵王(らんりょうおう)不在の宮廷で一体何が起こったのか、詳しく見ていきましょう。

静かな田舎と騒がしい宮廷、あまりにも残酷な対比

段韶(だんしょう)や安徳王(あんとくおう)からの「今は少し休んでくれ」という心からの願いもあり、我らが蘭陵王は、愛する雪舞(せつぶ)と共に都を離れ、母の生家で静かに過ごすことを決めます。ボロボロの家を二人で直し、畑を耕し、穏やかな時間を過ごす二人。戦の英雄でも妃でもなく、ただの夫婦として笑いあう姿は、見ているこちらもホッとしますよね。「ああ、このまま二人をそっとしておいてあげて…」と願わずにはいられません。

しかし、そんな願いもむなしく、彼らが都を離れた宮廷では、とんでもない計画が動き出していました。

奸臣・祖テイ、悪魔のシナリオを始動

主役は、皇太子・高緯(こうい)の計らいで牢から出されたあの男、祖テイ(そてい)です。彼は、皇帝・高湛(こうたん)が夜な夜な聞こえる物音や怪現象に悩まされ、不眠に陥っていることを知ります。これぞチャンスとばかりに、祖テイは高緯(こうい)をそそのかし、皇帝を精神的に追い詰めて退位させるという、恐ろしい陰謀を企てるのです。

その手口がまた、えげつない!まず、宮中の子供を薬で眠らせてさらい、その子の手に動物の血を塗りたくります。そして深夜、皇帝の寝室の扉や窓に、その血の手形をベタベタと押し付けさせるのです。連日続く「血の手形の怪」に、皇帝はすっかり錯乱状態。「亡霊が命を奪いに来た!」と完全にパニックに陥ってしまいます。

まんまとハマる皇帝、そして皇位継承へ

心身ともに限界に達した皇帝に、祖テイはここぞとばかりに進言します。「陛下がこれまでに行ってきた殺戮のせいで、天が怒っておられるのです。この災いを避けるには、皇位を退き、太上皇となるしか道はございません」と。

恐怖に支配された皇帝は、この言葉を鵜呑みにし、あっさりと皇太子・高緯への譲位を決定してしまいます。こうして、祖テイのシナリオ通り、まんまと高緯が新たな皇帝の座についたのでした。

しかし、これはまだ序章に過ぎません。新帝となった高緯は、祖テイの入れ知恵で早速「売官」を始め、金を集めて国庫に入れます。何も知らない高湛(こうたん)は、国庫が潤っているのを見て「祖テイはなんと優秀な補佐役か!」と褒め称える始末…。もう、誰か止めてくれー!と叫びたくなります。

蘭陵王が土を耕しているその裏で、国は静かに、しかし確実に蝕まれ始めていました。安徳王(あんとくおう)がこの凶報を伝えようと馬を走らせますが、果たして間に合うのでしょうか…。

『蘭陵王』第29話の感想

今回のエピソードは、英雄の不在がもたらす権力の空白がいかに危険かを、まざまざと見せつけられた回でした。蘭陵王と雪舞が過ごす田舎の穏やかな風景と、祖テイが暗躍する宮廷の不気味でドロドロした陰謀の対比が鮮やかで、その落差に鳥肌が立ちました。特に、高緯が父である皇帝に疎まれ、蘭陵王と比較されることで抱く劣等感が、祖テイのような奸臣に付け入る隙を与えてしまう流れは、非常に人間的でリアルな恐ろしさを感じさせます。善意で身を引いた蘭陵王の行動が、結果的に最悪の事態を招く引き金になってしまうという皮肉な展開には、思わず天を仰ぎたくなりました。平和なシーンがあるからこそ、これから訪れるであろう嵐の激しさが予感され、物語の深みが増したように思います。

つづく