高緯(こうい)に助けられた鄭児(ていじ)は、ある宮女になりすまし、新たな身分で再び宮廷に姿を現す。 新しい妃の誕生に沸く宮中で、体調を崩した妃を診るため雪舞(せつぶ)が呼ばれるが、そこで彼女を待ち受けていたのは思いもよらない人物だった。 一方、弟・高緯の行動を危ぶんだ蘭陵王(らんりょうおう)は、彼を止めようと進言するが、その行動が逆に事態を悪化させてしまう。 宮廷内に渦巻く新たな陰謀が、蘭陵王と雪舞に静かに、しかし確実に迫っていた。

「蘭陵王」あらすじネタバレ32話

いやあ、今回の『蘭陵王』はとんでもない回でしたね…。一度は奈落の底に落ちたはずのあの女が、まさかの形で舞い戻ってきました。そう、鄭児(ていじ)です!しかも、これまでで最も恐ろしいやり方で宮廷に返り咲くんですから、もう鳥肌ものですよ。

悪女、新たな身分を手に入れる

物語は、高緯(こうい)に助けられ、宮廷の片隅で息を潜めていた鄭児(ていじ)の不満が爆発するところから始まります。罪人である彼女は、表立って生きることはできません。そこで彼女が目をつけたのが、心優しい親友の宮女・馮小憐(ふうしょうれん)でした。鄭児(ていじ)はなんと、その馮小憐を呼び出して毒殺!そして彼女になりすまし、「馮小憐」として高緯(こうい)の妃「淑妃(しゅくひ)」の座に収まるという、恐るべき計画を実行に移します。

宮中では新しい淑妃の誕生に祝賀ムードが広がりますが、その裏でこんな残忍な事件が起きていたなんて、誰も知る由もありません。

雪舞との再会、そして罠

場面は変わり、高緯(こうい)は「淑妃が体調不良だ」という口実で、天女の腕を持つ雪舞(せつぶ)を宮廷に呼び出します。 呼ばれた雪舞が淑妃の寝所へ行くと、そこには帳(とばり)が下ろされ、妃の顔ははっきりと見えません。 雪舞が脈を診ても、体に異常は見当たらず、おそらく心の問題だろうと診断します。

しかし、これはすべて鄭児が仕組んだ罠でした。突然、淑妃付きの侍女が「金の腕輪がなくなった!」と騒ぎ出し、雪舞と一緒に来ていた侍女の小翠(しょうすい)に盗みの疑いをかけます。 もちろん身に覚えのない小翠は潔白を証明するため身体検査を受けますが、なんと懐から問題の腕輪が出てくるのです! 完全に仕組まれた濡れ衣ですが、淑妃(鄭児)は「今回は許してあげましょう」と慈悲深いふりをして、雪舞に恩を売ります。

そして雪舞がお礼を述べたその時、淑妃はゆっくりと帳を上げ、その顔を現します。そこにいたのは、紛れもなく、あの鄭児でした。 勝ち誇ったような笑みを浮かべる鄭児を前に、雪舞と小翠は言葉を失い、凍りつきます。 彼女が最も恐れていた悪夢が、現実となってしまった瞬間でした。

蘭陵王の進言、裏目に出る

王府に戻った雪舞は、震えながら事の顛末を蘭陵王(らんりょうおう)に報告します。 鄭児が淑妃として宮廷に入り込んだことを知り、蘭陵王は宮廷の未来に深い憂いを抱きます。

翌日、蘭陵王はすぐさま高緯の元へ向かい、「馮小憐を妃にする儀式を取りやめてほしい」と強く進言します。 高緯はその場では兄の言葉を素直に聞き入れたかのように見えました。

しかし、朝議の場で高緯が下した命令は、蘭陵王の想像を絶するものでした。なんと、「淑妃・馮小怜を、本日ただちに皇后とする!」と宣言したのです! さらには、皇后のために「仙都苑(せんとえん)」という豪華な庭園を造ることも発表。 蘭陵王の進言は、完全に裏目に出てしまいました。弟の暴走と、その裏で糸を引く鄭児の存在に、蘭陵王はただならぬ危機感を覚えます。

そして物語の最後、皇后となった鄭児は、高緯の蘭陵王に対する劣等感を巧みに突き、「兄上の人気と権力は、いずれ陛下を脅かします」と囁き、蘭陵王の力を少しずつ削いでいくよう進言するのでした。 これから始まる本当の地獄を予感させ、第32話は幕を閉じます。

『蘭陵王』第32話の感想

今回のエピソードは、鄭児というキャラクターの執念深さと、それがもたらす破滅的な影響力をまざまざと見せつけられた回でした。彼女の行動は単なる復讐心からではなく、歪んだ愛情と自己顕示欲が複雑に絡み合った結果であり、その狂気が物語全体を不穏な空気で満たしていきます。特に、親友を手にかけ、その身分を奪うという非情さには戦慄を覚えました。

一方で、高緯の蘭陵王に対するコンプレックスが、鄭児によっていとも簡単に利用されてしまう様子は、見ていて非常にもどかしいものがありました。蘭陵王の忠言がことごとく裏目に出てしまう展開は、彼の孤立と苦悩を浮き彫りにし、物語に深い奥行きを与えています。雪舞と蘭陵王の前に、これまでとは比較にならないほどの巨大な壁が立ちはだかったことを痛感させられ、今後の宮廷での権力闘争がどれほど熾烈を極めるのか、緊張感を持って見守りたいと思います。

つづく