蘭陵王(らんりょうおう)の力を恐れる皇帝・高緯(こうい)は、彼の腹心である重臣たちを都から遠ざけます。さらに、皇后・小憐のために巨大な庭園「仙都苑」の建設を強行し、民を疲弊させるのでした。蘭陵王はこれに強く反対しますが、高緯は彼の精鋭部隊を建設作業に投入するよう命令。部下たちの命を人質に取られた蘭陵王は、国への忠誠と部下への想いの間で、苦渋の決断を迫られます。一方、宮中では皇后による恐ろしい宴が始まろうとしていました。
「蘭陵王」あらすじネタバレ33話
いやはや、今回の『蘭陵王(らんりょうおう)』第33話は、息つく暇もないほどに心が揺さぶられる展開でしたね…。蘭陵王のまっすぐな忠誠心が、愚かな君主によって無残にも踏みにじられていく様は、見ていて本当に胸が苦しくなりました。
物語は、皇帝・高緯(こうい)がとんでもない人事を断行するところから始まります。蘭陵王の強力な味方である段韶(だんしょう)将軍と斛律光(こくりつこう)将軍を、「突厥への備え」というもっともらしい名目で、都から遠く離れた晋陽へと追いやったのです。もちろん、これは蘭陵王を孤立させるための、皇后となった鄭児(今は馮小憐(ふうしょうれん)と名乗っています)の入れ知恵。いきなり両翼をもがれた蘭陵王は、高緯の真意を測りかね、深い不安に襲われます。
そんな中、高緯は小憐の歓心を買うため、巨大な庭園「仙都苑」の建設を始めます。民を苦しめる無謀な工事に、雪舞(せつぶ)は夫が黙っているはずがないと心配しますが、案の定、事態は最悪の方向へ。
工事の遅れにいら立つ高緯に、鄭児(ていじ)は「蘭陵王の軍隊を使えば早い」と囁きます。早速、蘭陵王を呼びつけた高緯は、国の守りであるはずの兵士たちを、庭園建設の労働力として差し出すよう命令。蘭陵王は「兵士の務めは国の防衛です」と必死に訴えますが、高緯の耳には届きません。それどころか、兵士たちが蘭陵王に絶対の忠誠を誓う姿を目の当たりにし、ますます彼への嫉妬と恐怖を募らせる始末。
ついに高緯は、数万の兵士の命を盾に、蘭陵王に兵権の返上を迫ります。愛する部下たちを守るため、蘭陵王は屈辱に耐え、兵符を差し出すしかありませんでした。降りしきる雨の中、去っていく兵士たちに向かって土下座し、ひたすら跪き続ける蘭陵王。その背中を、駆けつけた雪舞が傘をさして見守るシーンは、彼の無念さが痛いほど伝わってきて、涙なしには見られませんでした。
しかし、悲劇はまだ終わりません。息つく間もなく、宮中から皇后の呼び出しが。恐る恐る向かった二人を待っていたのは、この世の地獄でした。なんと皇后(鄭児)は、庭で囚人たちに殺し合いをさせ、その惨状を笑いながら鑑賞していたのです。血の海と、狂ったように笑う鄭児の姿を前に、蘭陵王と雪舞は凍りつくのでした。
『蘭陵王』第33話の感想
蘭陵王の揺るぎない忠誠心と、それを私怨で踏みにじる高緯の暗愚さが鮮烈な対比をなす回でした。国を守るべき軍隊を私的な庭園造りに使い、忠臣を追い詰めていく姿は、この国の末期的な状況を象徴しているようです。雨の中で兵士たちに跪く蘭陵王の姿は、彼の責任感の強さと、忠義と部下への想いの間で引き裂かれる無念さを痛切に描き出していました。そして、人の心すら失ったかのような鄭児の残虐非道な振る舞いは、復讐心がもたらす狂気の恐ろしさをまざまざと見せつけ、物語全体に一層不穏で暗い影を落としています。
つづく