鄭児(ていじ)の策略により、皇帝・高緯(こうい)に嫁がされそうになった雪舞(せつぶ)は、壇上で自決を覚悟します。その危機一髪のところへ、遠征に出ていたはずの蘭陵王(らんりょうおう)が帰還し、彼女を救い出します。折しも恵みの雨が降り、民衆は蘭陵王を新たな天子のように称賛しますが、その光景は皇帝・高緯の激しい嫉妬に火を注ぐ結果となりました。王府に戻った蘭陵王は、日に日に増していく皇帝からの憎悪と、愛する雪舞の身の危険を案じ、彼女を守るための、ある悲壮な決意を固めるのでした。

「蘭陵王」あらすじネタバレ35話

いやはや、どうにもこうにも息が詰まる展開が続きますね…。皇后・鄭児(ていじ)の悪辣な企みによって、雪舞(せつぶ)が皇帝・高緯(こうい)に嫁がされそうになるという、とんでもない事態から幕を開けた第35話。

真っ赤な婚礼衣装に身を包んだ雪舞(せつぶ)は、民衆が見守る壇上で、覚悟を決めた表情を浮かべていました。そう、彼女は高緯(こうい)の妻となるくらいなら、自ら命を絶つことを選んだのです。懐に忍ばせた火薬「火樹銀花」に手をかけ、すべてを道連れにしようとした、まさにその瞬間…!

「やめよ!」

ああ、この声!この声が聞こえるのをどれだけ待ちわびたことか!

そう、我らがヒーロー、蘭陵王(らんりょうおう)が帰ってきたのです!鄭児(ていじ)の策略で放水を強要されていた水役人たちを引き連れての、まさに劇的な帰還でした。

蘭陵王(らんりょうおう)が愛する雪舞を固く抱きしめた、その時です。まるで天がこの再会を祝福するかのように、乾ききった大地に恵みの雨が降り注ぎました。これには民衆も大興奮!「蘭陵王こそ天子だ!」という歓声が沸き起こり、その声は嫉妬に狂う高緯の心を、さらに深くえぐるのでした。

しかし、この奇跡的な出来事が、さらなる悲劇の引き金となってしまいます。

二人きりになった時、蘭陵王は高緯に「どうか民を愛する良き皇帝になってほしい」と心から懇願します。しかし、返ってきたのは、あまりにも残酷な言葉でした。

「お前がいる限り、朕は良き皇帝にはなれぬ。…死んでくれ、蘭陵王」

民からの信望、そして雪舞の愛、そのすべてを持つ蘭陵王への嫉妬と憎しみが、ついに高緯を完全に壊してしまったのです。

その夜、王府に戻った二人。雪舞は高緯と鄭児の異常な執着に不安を隠せません。そんな彼女を安心させるため、蘭陵王は「陛下もご自身の行いを後悔されていた」と優しい嘘をつきます。

しかし、雪舞が眠りについた後、蘭陵王は弟の安徳王(あんとくおう)を呼び出し、衝撃的な決意を告げます。それは、愛する雪舞を斉の国から安全な場所へ逃がし、自分はここに残って命を差し出すことで、国の安寧と民の暮らしを守る、というものでした。安徳王(あんとくおう)が涙ながらに説得しますが、蘭陵王の決意は石のように固いものでした。

翌日、蘭陵王はこれが雪舞と過ごす最後の一日になることを胸に秘め、彼女の一挙手一投足を目に焼き付けようとします。そんな彼の心中も知らず、雪舞は思い出の柳の木の下で、「これからは私があなたを守れるように、武術を習いたい」と健気に語ります。その言葉が、蘭陵王の胸をどれほど締め付けたことでしょう。

そして、王府での最後の晩餐。安徳王が雪舞の杯にそっと眠り薬を仕込みます。これから愛する人と永遠に引き裂かれる運命にあるとは夢にも思わず、楽しそうに食卓につく雪舞の姿は、あまりにも切なく、涙を誘うのでした…。

『蘭陵王』第35話の感想

今回のエピソードは、まさに光と影のコントラストが強烈に心に残る回でした。前半、絶体絶命の雪舞を蘭陵王が救い出し、天の恵みの雨と共に民衆から称賛を浴びる場面は、これ以上ないほどの高揚感がありました。しかし、その英雄的な輝きが、皮肉にも皇帝・高緯の心の闇を決定的に深くしてしまいます。蘭陵王の「死んでくれ」と告げられた時の表情は、彼の忠誠心と絶望が見事に表現されており、胸が痛みました。そして、すべてを覚悟した蘭陵王が、何も知らない雪舞と過ごす最後の一日。彼女の健気な愛情が、彼の悲壮な決意をより一層際立たせ、観ているこちらの感情を静かに、しかし強く揺さぶりました。英雄が自らの命と引き換えに愛と民を守ろうとする、その自己犠牲の精神が、物語の悲劇性を深め、忘れがたい印象を残しました。

つづく