民のために死を決意した蘭陵王(らんりょうおう)は、愛する妻・雪舞(せつぶ)に真実を告げぬまま、最後の時間を過ごします。そして、彼女の未来を思い、眠らせた雪舞を忠臣・暁冬(きょうとう)に託して都から逃がしました。ついに皇帝・高緯(こうい)と皇后・鄭児(ていじ)が王府に現れ、蘭陵王に最大の危機が訪れます。一方、逃がされた雪舞は道中で目を覚まし、夫の身を案じて都へ戻ろうとしますが、追っ手に追われ絶体絶命の窮地に。英雄と彼を愛する者たちの運命が、悲劇の渦に飲み込まれていきます。

「蘭陵王」あらすじネタバレ36話

ついに、この時が来てしまいました…。北斉の英雄、蘭陵王(らんりょうおう)に最大の悲劇が訪れる第36話。もう、ティッシュ箱を隣に置いてから読み進めてくださいね。

民を救うため、そして愛する雪舞(せつぶ)を守るため、蘭陵王は自らの死を覚悟します。しかし、その悲しい決意を雪舞に打ち明けることなど、彼にできるはずもありません。彼はただ、最期のひとときを、何も知らない雪舞と穏やかに過ごすことを選びます。

そして、別れの夜。蘭陵王は、心で泣きながら雪舞に眠り薬入りの酒を飲ませます。腕の中で意識を失っていく雪舞に「許してくれ」と涙を流す蘭陵王の姿は、まさに断腸の思い…。彼は忠実な腹心・暁冬(きょうとう)に、雪舞を周の宇文ヨウ(うぶんよう)の元へ送り届けるよう命じます。今、彼女を守れるのは宇文ヨウしかいないと信じて。

雪舞が連れ出された後、蘭陵王は弟の安徳王(あんとくおう)に後事を託し、屋敷の使用人たちを全員解き放ちます。そして、静まり返った王府に、皇帝・高緯(こうい)と皇后・鄭児(ていじ)がやってきます。蘭陵王は少しも恐れることなく、毅然とした態度で彼らを迎え入れ、差し出された毒酒を潔く飲み干しました。息絶える直前、彼が高緯に求めたのはただ一つ、「斉の民を頼む」ということだけ。民を愛し、国に尽くした英雄は、こうして静かにこの世を去ったのです。

しかし、高緯は兄の死を信じられず、あろうことかその亡骸に刀を突き立てて、ようやく彼の死を実感するのでした。なんという愚かで、悲しい行為なのでしょうか。

一方、逃げる道中で目を覚ました雪舞は、すべてを悟って泣き叫びます。「殿下の元へ帰して!」と懇願する彼女に、暁冬も心を動かされます。二人は馬車を崖から突き落として死を偽装し、別々に逃げることに。しかし、祖テイ(そてい)の追っ手は執拗で、雪舞は逃げるうちに崖から転落してしまいます。

万事休すかと思われたその時、彼女を救ったのは、かつて雪舞が助けたことのある貧しい母子でした。命は繋ぎ止められたものの、蘭陵王の死を知った雪舞の悲しみは計り知れません。

その頃、宮廷では鄭児が新たな罠を仕掛けていました。蘭陵王の死を悼む重臣たちの声を利用し、わざと立派な墓を築かせ、悲しみにくれる雪舞が必ずや墓前に現れるだろうと、彼女をおびき寄せる計画を立てていたのです。

英雄の死、残された妻の逃避行、そして迫りくる非情な罠。物語は、息もつかせぬ悲劇の連鎖へと突入していきます。

『蘭陵王』第36話の感想

英雄の最期というのは、どうしてこうも気高く、そして痛ましいのでしょうか。民のために自らの命を差し出す蘭陵王の姿には、ただただ胸を打たれました。愛する雪舞を断腸の思いで手放し、毒杯を仰ぐ彼の潔さ。これぞまさに、人々が愛した戦神の姿そのものだったと思います。

対照的に、兄を手にかけた高緯の空虚な表情や、その死を確かめるために亡骸を傷つけるという常軌を逸した行動は、彼の心の闇の深さを物語っていました。そして、蘭陵王への執着から冷酷な策を弄する鄭児の姿は、物語の悲劇性を一層際立たせています。

雪舞が奇跡的に助かったことには安堵しましたが、蘭陵王の墓を利用した次なる罠が待っているとは…。忠臣・暁冬と共に、彼女がこの先生きのびていけるのか、その過酷な運命から目が離せません。

つづく