亡き夫・蘭陵王(らんりょうおう)の墓を訪れ、悲しみを新たにしていた楊雪舞(せつぶ) 。しかしその帰り道、彼女は命を狙われ絶体絶命の窮地に陥ります。そこへ駆けつけた意外な人物によって救出されますが、その代償として、かけがえのない仲間を失うという大きな悲劇に見舞われてしまいました。
一方、斉の宮廷では、皇帝のあずかり知らぬところで、雪舞に対する新たな陰謀が進行していました。救われた雪舞もまた、安息の地で思いもよらない運命の選択を迫られることになり、物語は新たな局面を迎えます。
「蘭陵王」あらすじネタバレ38話
愛する蘭陵王(らんりょうおう)を失い、悲しみの淵に沈む雪舞(せつぶ)。しかし、彼女に安息の時は訪れません。第38話は、息もつかせぬ悲劇と、新たな運命の渦が雪舞(せつぶ)を飲み込んでいく、まさに激動の回でした。
夫である蘭陵王(らんりょうおう)の墓前にたどり着いた雪舞。見張りの兵士たちの目を、得意の知識で欺き、ついに愛する人の墓碑と対面します。「殿下、やっと会いに来られたわ…」と、冷たい墓碑に触れながら溢れ出す想いを伝える雪舞。あの日、彼が差し出した手を離さなければ…そんな後悔が彼女の胸を締め付けます。
しかし、感傷に浸る時間は長くは続きませんでした。彼女の前に現れたのは、憎しみに燃える鄭児(ていじ)とその手下たち。蘭陵王の亡骸はすでに焼いたと嘲笑い、雪舞のお腹の子ごと葬り去ろうと短剣を振り上げます。
まさに絶体絶命!その瞬間、雪舞を救ったのは、なんと周の皇帝・宇文ヨウ(うぶんよう)でした。彼は危険を顧みず、自ら兵を率いて雪舞を救出に来たのです。しかし、この救出劇はあまりにも大きな代償を伴いました。
雪舞を逃がすため、たった一人で追っ手の前に立ちはだかったのは、これまでずっと彼女を支え続けてきた韓暁冬(きょうとう) でした。彼は文字通り、自らの体を盾にして雪舞を守り、無数の矢を浴びて壮絶な最期を遂げます。「君に尊厳と誇りをもらえた」…そんな彼の想いが、あまりにも悲しく胸に突き刺さります。
瀕死の重傷を負った雪舞は、宇文ヨウに連れられて周の国へ。そこで、彼女が蘭陵王の子供を身ごもっていることが発覚します。意識が朦朧とする中でも「子供を助けて…」と懇願する雪舞。宇文ヨウは複雑な表情を浮かべながらも、侍医に「母子ともに助けろ!」と厳命を下すのでした。
一方、斉の国では、蘭陵王を死に追いやった皇帝・高緯(こうい)が後悔の念に苛まれ始めていました。しかし、彼の隣にいる鄭児(ていじ)の復讐心は消えるどころか、さらに燃え盛ります。高緯(こうい)を薬で眠らせては、裏で祖テイ(そてい)に雪舞殺害を命じるという二枚舌。彼女の底知れぬ悪意には、ただただ戦慄するばかりです。
周で意識を取り戻した雪舞は、暁冬の死を知り、初めて「人を憎い」という感情を覚えます。しかし、悲しみにくれる彼女に、宇文ヨウはあまりにも衝撃的な言葉を告げます。
「そなたを朕の妃とする!」
これは、これ以上刺客に狙われないようにと、彼女を守るための宇文ヨウなりの苦渋の決断でした。しかし、夫を亡くし、友を失ったばかりの雪舞にとって、それは到底受け入れられるものではありません。彼の強引な愛は、雪舞を救うどころか、新たな苦しみの渦へと突き落としていくのでした。
『蘭陵王』第38話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの想いが激しく交錯し、胸が締め付けられる展開でした。特に、韓暁冬(きょうとう) の最期は涙なくしては見られません。ただただ雪舞の幸せを願い、最後まで忠義を尽くした彼の姿は、この物語の中でも特に印象的な散り際だったと言えるでしょう。彼の死によって、天真爛漫だった雪舞の中に初めて憎悪という感情が芽生えたのも、物語の大きな転換点です。
一方で、宇文ヨウの行動もまた、深く考えさせられるものでした。雪舞を愛するがゆえに、彼女を守りたい一心で皇妃に封じるという強硬手段に出ましたが、それは彼の愛情の押し付けであり、雪舞の心を無視した行為です。彼の孤独と苦悩も理解できますが、そのやり方では真に彼女の心を得ることはできないだろうというもどかしさを感じます。
そして、鄭児(ていじ)の恐ろしさは回を追うごとに増していきます。高緯(こうい)の弱さにつけ込み、国を内側から腐らせていく様は、斉の国の暗い未来を予感させずにはいられません。それぞれの正義と愛情が、悲劇的なすれ違いを生んでいく様に、ただただ引き込まれるエピソードでした。
つづく