天才数学者・魏成(ウェイ・チョン)の知られざる過去と、彼が申玉菲(シェン・ユーフェイ)と出会った経緯が明らかになります。画期的な計算モデルを構築した魏成ですが、そのために何者かから命を狙われることに。彼は自身の研究成果を汪淼(ワン・ミャオ)に託し、危険から遠ざけようとします。託されたデータを検証するため、汪淼は申玉菲と共に再びVRゲーム「三体」の世界へ。そこで彼らが目の当たりにするのは、三体文明の存亡を揺るがす衝撃的な真実でした。一方、現実世界では、彼らを巡る脅威が刻一刻と迫ります。

「三体」あらすじネタバレ20話

今回の第20話は、物語の核心にグッと迫る、息をのむような展開でしたね。特に、これまで謎に包まれていた魏成(ウェイ・チョン)と申玉菲(シェン・ユーフェイ)の過去と、VRゲーム「三体」が示す絶望的な未来には、ただただ圧倒されました。

魏成と申玉菲(シェン・ユーフェイ)、歪んだ愛と三体問題

物語は、天才数学者・魏成の過去から始まります。彼がまだ何者でもなく、お寺にこもり、帳面だけを頼りに一心不乱に「三体問題」を計算していた日々。そこに現れたのが、申玉菲(シェン・ユーフェイ)でした。

彼女は魏成の計算を一目見てその才能に驚き、彼を山から連れ出します。魏成にとって、彼女は女性というより、同じく三体問題に魅せられた「同志」。彼女が提供する衣食住に困らない環境とコンピューターは、まさに夢のようでした。やがて二人は結婚しますが、その関係は奇妙なもの。会話は三体問題のことばかりで、夫婦らしい時間はほとんどありません。

しかし、魏成の計算が画期的な突破口を開いたことで、事態は急変します。環境保護を掲げる過激な思想家、潘寒(パン・ハン)が「計算をやめろ。さもなくば殺す」と脅迫してきたのです。かと思えば、妻である申玉菲までもが刃物を手に「計算を止めるなら殺す。それ以外にあなたに生きる価値はない」と迫る始末。まさに八方塞がりですよね。

追い詰められた魏成は、自身の計算モデルを収めたディスクを汪淼(ワン・ミャオ)に託します。「あなたは善人だから、これ以上関わらないでほしい」と忠告を残して。彼も、申玉菲と共に過ごす中で、この問題の底知れぬ闇に気づいていたのです。

VRゲームが示す「解なし」の絶望

魏成からデータを受け取った汪淼(ワン・ミャオ)は、申玉菲と共にその検証のため、再びVRゲーム「三体」にログインします。そこで彼らが目の当たりにしたのは、想像を絶する光景でした。

「三日凌空」によって文明が滅び、空には巨大な月が浮かび上がる。ゲーム内にいたアインシュタインは「大撕裂(大引き裂き)」という言葉を口走り、世界の終焉を語ります。これは、三体文明における最大の凶兆「飛星不動」が示す、惑星そのものが引き裂かれる現象でした。

かつて12個あった惑星も、今や最後のひとつ。彼らは最後の希望をかけ「振り子の儀式」を始めますが、そこで突きつけられたのは「三体問題は解けない」という無慈悲な結論でした。

三体文明に残された唯一の道、それは故郷の星系を捨て、広大な宇宙へ新たな家園を求めて飛び立つこと。192回目の文明はここに滅び、ゲームの目標は「宇宙への移住」へと更新されたのです。

拯救派の終焉、そして彼女の死

この「解なし」という結論は、三体文明を救うことを目的としていた「拯救派(救済派)」のリーダー格である申玉菲にとって、死刑宣告にも等しいものでした。彼女のこれまでの努力、信仰、そのすべてが無意味だと証明されてしまったのですから。

絶望に打ちひしがれる彼女の前に、宿敵である潘寒が現れます。彼は人類の滅亡を望む「降臨派」。申玉菲をあざ笑い、彼女の理想がいかに無力であったかを突きつけます。

そして、潘寒は銃を取り出し、ためらうことなく申玉菲に向け引き金を引きました。

しばらくして、汪淼(ワン・ミャオ)の元に史強(シー・チアン)刑事から電話が入ります。「申玉菲が死んだ」と。現場の監視カメラには、潘寒が出入りする姿だけが記録されていました。

『三体』第20話の感想

今回のエピソードは、物語のスケールが一気に宇宙規模へと拡大し、同時に登場人物たちの人間ドラマが深く、そして悲しく描かれた回でした。特に印象的だったのは、申玉菲と魏成の歪んだ関係性です。純粋に数学的真理を求める魏成と、それを「主」を救うための手段と信じる申玉菲。二人の間にある決定的な断絶が、やがて訪れる悲劇を予感させました。

そして、VRゲームで明かされた「三体問題は解なし」という結論。これは科学的な絶望であると同時に、申玉菲の信仰が崩壊する瞬間でもありました。彼女の死は、単なる殺人事件ではありません。地球三体協会(ETO)内部に存在する「拯救派」と「降臨派」の思想対立が、ついに血を見る形で表面化したことを意味しています。これまでミステリーとして進んできた物語が、ここに来て文明と文明の存亡をかけた壮大なSF叙事詩としての側面をはっきりと見せ始め、物語の深みに改めて引き込まれました。

つづく