科学者の連続自殺事件の謎を追う汪淼(ワン・ミャオ)は、ついに物語の核心人物である葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の重い口を開かせる。彼女が語り始めたのは、自らの過去と、地球外文明の存在を確信し、人類社会の変革を目指す組織「地球三体組織(ETO)」が誕生するまでの秘密だった。すべての発端は、彼女が若き日に出会った一人の理想家、エヴァンズ。人類への絶望という共通点から始まった二人の出会いが、いかにして世界を揺るがす計画へと繋がっていったのかが明かされる。

「三体」あらすじネタバレ27話

今回の第27話は、物語の根幹を揺るがす、とんでもない過去が明かされましたね。これまで謎に包まれていた地球三体組織(ETO)が、いったいどうやって生まれたのか。その中心には、やはりあの人、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)がいました。

今回は、彼女の口から直接語られる、あまりにも重い真実の告白。それでは早速、第27話の世界に深くダイブしていきましょう!

すべては一人の男との出会いから

物語は、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)が自らの過去を静かに語り始めるところから幕を開けます。彼女はなぜ、娘の楊冬(ヤン・ドン)を母である紹琳(シャオ・リン)に会わせようとしなかったのか。その背景には、人類文明そのものへの深い絶望が横たわっていました。

話は、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)が大学生だった頃に遡ります。ある研究プロジェクトの候補地選定のため、彼女は人里離れた西北の山村を訪れました。そこで出会ったのが、一人の風変わりな外国人、エヴァンズです。

彼は億万長者の息子でありながら、財産には目もくれず、ただひたすらに木を植え続けていました。村人からは「国境を越えてきた白求恩(ベチューン、カナダの有名な医師)」と呼ばれていましたが、彼が目指していたのは、単なる環境保護活動ではありませんでした。

「救世主になるためだ」

そう語るエヴァンズ。しかし、彼が救おうとしていたのは人類ではありません。彼の理想は「種の平等」。きっかけは12年前に遡ります。石油利権のために多くの海鳥を犠牲にした父の姿を見て以来、彼は人間という種そのものを憎むようになったのです。

葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)は、彼の過激な思想に全面的に賛同したわけではありません。しかし、文化大革命で父を失い、信じていた人々に裏切られ、人類に失望していた彼女は、その純粋で揺るぎない理想に、どこか羨望の眼差しを向けていたのかもしれません。

絶望が二人を結びつけた

北京に戻り、しばらく会うことのなかった二人。しかし数年後、エヴァンズからの絵葉書をきっかけに、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)は再びあの山村へ向かいます。父の莫大な遺産を相続したエヴァンズでしたが、彼を待っていたのは過酷な現実でした。彼が心血を注いで植えた木々が、地元の人々によってすべて伐採されてしまったのです。

資本の力で伐採を止めることはできても、人間の欲望を止めることはできない。中国なら「種の平等主義」が根付くかもしれないと信じてやってきたエヴァンズは、ここで完全に人類を見限りました。

その痛切な絶望に、葉文潔は自らの過去を重ね合わせます。そして、ついに彼女は、生涯誰にも明かさなかった秘密を打ち明ける決意をしました。

「人類以外の文明が存在するの」

紅岸(こうがん)基地での出来事、そして三体文明とのコンタクト。何十年経っても色褪せない記憶、太陽が肌を焼く温度まで、すべてを詳細に語りました。にわかには信じがたい話。しかし、エヴァンズには、その真偽を確かめるだけの財力と行動力がありました。

「第二紅岸基地」そしてETOの誕生

この日から、二人は「同志」となりました。エヴァンズは3年間姿を消します。そしてある日、北欧の大学から交流目的で招待を受けた葉文潔は、空港で待っていた男に導かれ、ヘリコプターである場所へと連れていかれます。

そこは、海上に浮かぶ巨大な船、「第二紅岸基地」。

エヴァンズは、葉文潔の話が真実であることを突き止め、地球三体組織(ETO)を設立していたのです。そして彼は、葉文潔にこう告げます。

「あなたが、我々の最高司令官だ」

これが、葉文潔が知るETO誕生の全てでした。彼女は、この組織がやがて危険な方向へ進むことを予感しながらも、内部から変えられるかもしれないという一縷の望みをかけて加入します。しかし、彼女一人の力はあまりにも無力でした。

エヴァンズは、葉文潔の「外部の力で人類社会をより良くする」という初志とは全く違う道を選びます。彼は三体文明との交流を独占し、地球文明を滅ぼすことを自らの理想としてしまったのです。

「火をつけたのは私。でも、それを消すことはできなかった」

降臨派が三体からの情報を人質に取り、暴走を続ける今、葉文潔はただ静かに、自らが犯した罪の重さと向き合うしかないのでした。

『三体』第27話の感想

今回のエピソードは、物語の核心に静かに、しかし深く触れる重厚な回でした。葉文潔とエヴァンズ、人類に絶望した二人が出会い、同じ理想を見つめながらも、なぜ決定的に違う道を歩むことになったのか。その過程が丁寧に描かれており、非常に見応えがありました。葉文潔の善意から始まった行動が、エヴァンズという純粋で過激な思想を持つ触媒を得て、全く予期せぬ、そして取り返しのつかない結果を生んでしまう。このやるせない悲劇性に、人間の理想と現実の残酷な乖離を見せつけられた気がします。壮大なSFでありながら、人間の業という普遍的なテーマを鋭く突いてくる、本作の奥深さを改めて感じさせられました。

つづく