道士・藍青玄(らんせいげん)は、皇帝の前で厳家の悪事を暴こうと試みますが、逆に厳世蕃(げんせいはん)の罠にはまり、無実の罪で投獄されてしまいます。友の危機を救うため、陸繹(りくえき)はそれぞれ奔走を開始。しかし、朝廷を牛耳る厳家の権力はあまりに強大で、正義の力も届きません。そんな中、陸繹は最大の屈辱を味わうことに。絶望的な状況で、彼はただ耐え忍びながら反撃の機会を窺います。
「花様衛士~ロイヤル・ミッション~」あらすじネタバレ53話
父・陸廷(りくてい)の死の知らせを受け、厳世蕃(げんせいはん)はほくそ笑んでいました。邪魔者が一人消え、次なる標的は息子の陸繹(りくえき) と、皇帝のお気に入りである道士・藍青玄(らんせいげん)です。自分になびかない藍青玄(らんせいげん)が、どうにも目障りで仕方ありません。
その頃、藍青玄は危険を顧みず、父を亡くした陸繹(りくえき) を慰めるために陸府を訪れていました。陸繹は、父が遺した一枚の図面を藍青玄に見せます。それは風水の堪輿図で、まさに厳世蕃(げんせいはん)が屋敷を建てた場所を示していました。しかし、今はまだ動く時ではない。陸繹は、厳家が皇帝からの信頼を失うのを待つしかないと、静かに反撃の機会を窺います。
数日後、完成した瞻星観で、藍青玄はついに動きます。仙人が乗り移ったかのように振る舞い、「国に奸臣がはびこり、賢臣が用いられないため天下が乱れている」と皇帝に告げ、おもむろに「厳」の一文字を書き記しました。皇帝が驚愕したのは言うまでもありません。
しかし、皇帝の周囲はすべて厳世蕃の間者。藍青玄の命がけの告発は、即座に厳世蕃の耳に入ります。藍青玄は「聖旨を盗み見た」という濡れ衣を着せられ、刑部の大牢へ投獄されてしまいました。
知らせを聞いた袁今夏(えんきんか)は、黙ってなどいられません。陸繹から事情を聞くと、藍青玄を陥れた宦官の行方を追うことを決意。陸繹は、表向きは突き放しながらも、部下の岑福(しんふく)に宦官の資料と似顔絵を今夏へ渡すよう命じます。
一方、大牢では藍青玄への非道な拷問が始まっていました。駆けつけた陸繹が「皇帝の命は尋問であり、拷問ではない」と制止しますが、厳世蕃はせせら笑い、さらに拷問を激化させるよう命じます。赤く焼けた炭が藍青玄に押し当てられようとしたその時…!
陸繹は牢内の藍青玄を訪ね、痛み止めを渡します。すでに満身創痍の藍青玄ですが、その瞳の光は消えていません。「もう一度、陛下に会う機会さえ作ってくれれば、この状況を打開できる」と陸繹に告げるのでした。
その後、徐大人(じょたいじん)らの働きかけで朝廷では厳世蕃への弾劾が起こり、皇帝はついに厳世蕃の審判を命じます。しかし、これもまた厳親子の描いた筋書き通り。父・厳嵩(げんすう)と共に雪の降る宮殿の前でひざまずき、涙ながらに許しを請う芝居を打つと、年老いた功臣に弱い皇帝はまたも心を軟化させ、陸繹に調査を命じるだけでお咎めなしとしてしまいます。
そして、最も屈辱的な光景が六扇門(りくせんもん)で繰り広げられます。厳世蕃が「入獄」してくるという名目で、署内では彼の到着を待って大掃除。やってきた厳世蕃は、牢に入るどころか豪華な宴会を始め、媚びへつらう大臣たちに囲まれてご満悦です。物陰からその様子を見ていた今夏は、怒りで唇を噛みしめます。
そこへ、陸繹が現れました。まるで罪人をもてなす宴のような光景を目の当たりにし、彼の表情からすっと血の気が引きます。しかし、陸繹は怒りを押し殺し、ただ耐えるしかありません。その姿を見ていた今夏の瞳からは、悔し涙がとめどなくあふれるのでした。愛する人が、悪の前にただ無力に耐え忍ぶ姿を見ていることしかできないなんて…。
『花様衛士~ロイヤル・ミッション~』第53話の感想
今回は、正義がいかに無力であるかを突きつけられる、非常に重苦しい回でした。特に、命を懸けて国を憂う藍青玄の覚悟と、彼を救おうと奔走しながらも巨大な権力の壁に阻まれる陸繹の苦悩が胸に迫ります。厳世蕃の悪役としての狡猾さと、それにやすやすと騙される皇帝の姿は、見ているこちらの心までかき乱されるようでした。
クライマックス、六扇門(りくせんもん)で繰り広げられる屈辱的な宴の場面は圧巻です。怒りを押し殺して耐える陸繹と、その姿を見て涙する今夏の心情が痛いほど伝わってきます。この絶望的な状況から、彼らがどうやって反撃の狼煙を上げるのか。ただの恋愛ドラマではない、重厚な人間ドラマとしての深みを感じさせる見事なエピソードだったと思います。
つづく